電波系ほのぼのクリエイター「愛の妖精ぷりんてぃん」直撃インタビュー

「愛の妖精ぷりんてぃん」公式HPより

 「愛の妖精ぷりんてぃん」をアナタはご存じだろうか? 公式ホームページにアクセスすると、大音量のボイスが再生され、そこには独特の世界観に満ち満ちたイラストやストーリーが飛び出してくる。「電波系ほのぼのサイト」としてネットユーザーの間で「祭り」となったこともあるこのサイト、祭りから6年の時が経った今も、多くのファンを擁している。

 そんな「ぷりんてぃん」の原画展が、渋谷の雑貨店「galaxxxy hi-fi」にて開催されている。今回の企画に携わる「露骨キット」氏の計らいにより、我がメンズサイゾー・ネットウォッチ班も、「ぷりんてぃん」の創始者・未女子日女(みめこひめ)に接触させていただけることとなった。

 スピーカーからは、未女子日女がかつてニコニコ動画に投稿していた「週刊ぷりんてぃん」の音声が、エンドレスリピートで流れる。

「ぷりん、ぷりん、ぷりんてぃ~~ん」「リスナーの皆様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 という、ラウドなシャウトが響く雑貨店の一角は、もはやそれだけでシュール。60代後半にしてこの声が出せるのは、凄いことだとは思うが……。

 かくして、「どんなスッゲエヤツが出てくんのかな!! オラ、ワクワクすっぞ!!」というような気概で臨んだ、「伝説の人物」未女子日女へのインタビュー。初めて生で見る未女子日女は、体調があまりよくないようで、マスクをしていたこともあってか、ホームページの写真よりずいぶん若く見えた。しかし、ホームページで大声を張り上げるあの元気は健在で、早くも記者のスカウターは爆発寸前であった。

 
●「ぷりんてぃん」誕生秘話

──6年くらい前、ネット上で「ぷりんてぃん」のホームページが話題になりましたね。

未女子日女 それはね、なんとなく私が描いたものを、息子が、たまに載せてたんですね。(サイトの)運営をしているのは、息子たちですので。ぷりんてぃんというのは、寝物語にしていた、「口から出まかせ」のようなものです(笑)。それで、子どもが大きくなったらそんなこと忘れてしまいますけど、何十年もして、お風呂あがりで一杯飲んでほろ酔いのときに、急に思い出したりして……。

──今回の個展で展示されているイラストはどういったものなんでしょう。

未女子日女 1年前くらいから描き始めたものです。描き始めたら不思議なもので、もう勝手にできていく感じで、なんとなくという感じでここまで完成したんです。だから、生まれて初めて、勉強もせずに描いたのがコレなんですよ。だから、デタラメなんです。

未女子日女の描く少女たち。あんぐりと大きく開いた口が特徴的である。

──未女子日女さんの絵には、暗い内容のもの、というのが、まったくといっていいほどないですよね。

未女子日女 私、あんまり悩みを引きずったことがないんです。それに、暗い感じにしようとして黒とか青を中心に描いても、暗くならないの(笑)。

 
●「宗教だろう」と大量のメッセージが届くも……

──「愛の妖精ぷりんてぃん」のクリエイターとして活動されている未女子日女さんだけに、ある種スピリチュアルな印象をもっているのですが……。

未女子日女 最初の頃、宗教だろう、宗教だろうって、皆さんおっしゃっていて(笑)。

──(大爆笑)失礼ですが、私も最初見たとき、コレ宗教だろ、って思いました。

未女子日女 ここまできてやっと皆さん、宗教とは違うんだなあって、見てもらえるようになったみたいですよ(笑)。

──そうですね(笑)。

未女子日女 それで最初は、「ネットで叩くとすぐ消えちゃう」とおっしゃるでしょう。でも別に、ぼーっとしてますので、何を言われても、別段感じないんですよ。

──ちなみに、ライバルとかお手本と考えてらっしゃるイラストレーターさんは誰ですか?

未女子日女 まさか(笑)。ライバルも何も、いるわけないですよ、そんな人。ただ、子どもが小さい頃は、よく美術館なんかも連れていきましたから。パウル・クレーの画集とかシャガールなんかは好きでしたよ。

──では、ライバルはシャガールということで(笑)。

未女子日女 じゃあ、ライバルは、パウル・クレーとシャガールということにしますかね(爆笑)。それ、面白いですね(笑)。

 
●未女子日女の「ネット論」

──インターネットには、良い面と悪い面があると思うのですが。インターネットについての未女子日女さんのお考えは?

未女子日女 何についてでもそうですけど、初期は、まだ混乱したところがいろいろございますでしょう。だから一部は悪用したりもしますけど、だんだん、成熟して整ってくれば、(インターネットは)素晴らしいツールであり、社会を動かすものになっていくんじゃないですか。そろそろ、そういう成熟期、収斂の時期に入ってきたのだと思います。これからどのように変化していくかは、分かりませんけど。
 これからのことは、お若い方々にかかってるんですから。今の人たちはみんな、頭が良いです。昔は情報を得るにも、本か新聞しかなかったけれど、今の方々は、地球儀まるごとを自分の教養にしてしまっている。だから今のお若い方々は、昔に比べて、数段素晴らしい。社会に対するあらゆる見識が優れていると思います。

ぷりんてぃんクッションも「思いつきで、なんとなく」制作したそうだ。

 
●偶然を味方につける未女子日女

──今回個展を開くにあたっての経緯を、お聞かせください。

未女子日女 本当に偶然なんです。絵がもう100枚も描けた、というところで、息子も私も、ネット以外に「ぷりんてぃん」の発表の場があれば、と思い立ちまして。ポストカードを作って雑貨屋さんなどのお店に置いていただいて、お客さんにプレゼントしてもらおうと思って。ポストカードを作ったんですよ。それで息子がお店を探しに行ったんだけど、1軒だけで「疲れた」って帰ってきちゃって。そのお店がたまたま「galaxxxy(ギャラクシー)」さんで、お店の露骨キットさんが、「ぷりんてぃん」のことをご存知でらして、今回の個展になりました。だから、本当に本当に、偶然なんですよ。

──どんどん人の輪が拡がりますね。偶然もそうですが、未女子日女さんのおおらかな性格によるところも大きいと思いますが(笑)。

未女子日女 だから、不安になったことって一度もないんですよ。落ち込むことがあっても、そのままズルズルと不安でい続けるようなことはないんです。ショックなときでも、逆に考えれば、「ありがたい」と思えるんですよね。そうすれば、あなたもどんどん光りだして、どんどん出世しますよ。

──最後に、「メンズサイゾー」を通じて、世の中に伝えたいことがありましたら。

未女子日女 今、目の前のことを皆さん、一生懸命なさって。いい加減でも真剣にやってれば、「偶然」という形で、ちゃんと道しるべを天が授けてくれますよ。

子育てが終わり、書道を習い始めたという未女子日女の達筆。

 今回の取材を通して、ホームページや動画の印象とはまた違う、卓越した見識をもつ未女子日女の姿、そして母性に満ち満ちた姿が垣間見えた。本人の言う通り、「偶然」連鎖で、彼女が今のような有名人になったのも事実に違いない。だが、彼女の最大の武器はやはり、 批判や「叩き」を受けても動じない、天才的な「受け流しスキル」なのだろう。
(取材・文=タコ野パウル/写真=ゆくエ・F・明)

※ 「愛の妖精 ぷりんてぃん原画展」は、渋谷「galaxxxy hi-fi」で開催中。
2月27日までの予定を急遽延長して、3月6日(日)まで作品を展示する。
公式サイトはこちら。

『愛しみの妖精たち―川津英夫・川津悦子写真集』

 
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