警察庁の発表によると、昨年1年間で被害者からの相談や事件となったストーカー被害は、前年比36.3%増の1万9,920件だったそうだ。ストーカー規制法が施行された2000年以降で過去最多の数字だ。ただ、これは急にストーカーが増えたということではなく、警察が本気で取り締まりを始めた結果、統計的に増えたということのようである。
ストーカー規正法は文字通り「ストーカー行為」を規制する法律だ。ストーカー行為は、「つきまとい行為」を反復して行うことを指す。この法律の規制対象となる「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する」ことを目的にする行為に限られる。
と、法律解釈を言葉にするとやたら難しくなるのだが、この警察庁の発表から見えてくるものは何か。
ストーカー事件などに詳しいライターは「本来、男女間のことは本人同士が話し合って解決すべきだが、成熟していない大人が増えたのでは」と分析する。女性との付き合いが下手になった男が増えたということかもしれない。さらに言えば、草食男子の増加も無関係ではないだろう。「草食化など情けない、積極的にアプローチせよ」と焚き付けられた結果、ストーカー行為に走ってしまうという可能性もなきにしもあらずだ。
「何でもかんでも草食化のせいにするな」と反発する声もあるだろうし、「積極的になれって言われるけど、どこまで積極的になればいいの?」と思う人も少なくないだろう。確かに、どこから先が「ストーカー」で、どこまでが「積極的」なのか、明確に線引きするのはなかなか難しい。
たとえば、90年代の初め、トレンディー・ドラマの代表作として『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)というドラマがあった。お見合いに99回失敗して振られ続けた男・武田鉄矢が、100回目に出会った美人チェロ奏者・浅野温子に猛烈なアタックをして、ついに結ばれる…とそんなストーリーだが、その積極性は今ならストーカーと呼ばれても不思議ではないものだった。時代の流れを感じさせられる。
女性との交流に消極的だった人はとくに悩むだろう。積極的になりすぎて相手から怖がられたり、引き際がつかめなくてストーカーのレッテルを貼られてしまうケースもある。積極性を通り越して“執着モード”になってしまう人は、まじめで一直線な人が多いのかもしれない。
積極的でも相手に圧迫感を与えない人の共通点として、「アプローチに余裕がある」というのもあるだろう。それは、「その交際を自分も楽しもう」という余裕である。よく、「既婚男性はガツガツしていないから良い」と言われモテたりするケースがあるが、それに通じるものがある。真面目すぎる人は、夜遊び、スポーツ、グルメなど何でもよいが、人生そのものを奔放に楽しんでみてはどうだろうか。そして、異性を誘うときも重くないノリで誘いだすのである。
連絡先を交換しただけでまだ交際が始まっていないのに、「なんで連絡してくれないの?」「連絡くれるって言ったよね?」と相手を責める人は「ストーカー予備軍」だ。相手の社交マナー的心遣いの言葉やしぐさを「好意のサイン」と勘違いしてしまう人も気をつけた方がいいだろう。
「異性として見ることができない」あるいは「好きな人がいる」とハッキリ断られてもなお、積極的にアプローチしている人はすでに初期のストーカー状態に陥っていると言って過言ではない。
彼女に重さを感じさせない一番簡単な方法は、「またみんなで遊ぼうよ」のように「みんな」という言葉を使うことである。「今度●●に一緒に行かない?」と目的地をはっきりさせ、あくまでその目的のために誘うという「ついで感」を醸し出すのも有効だ。そういう誘い方をしながら相手の反応を見極められれば、少なくともストーカーのレッテルを貼られることはないはずである。
(文=上条泡介)