「あゆ」「ガガ」らを撮影 世界的写真家レスリー・キーの逮捕は恨みと嫉妬が遠因?

lesphoto0205.jpg※イメージ画像:LESLIE KEE Twitterより

 男性器が写った写真集を展示会で販売したとして、シンガポール国籍でゲイをカミングアウトしている写真家のレスリー・キー氏(41)が4日、わいせつ文書頒布の疑いで逮捕された。警視庁保安課によると、写真集は約50ページの大半に男性器が写っており、わいせつ性が高いと判断したという。レスリー氏は今までにも同様の写真集を販売しており、警視庁に通報が数回寄せられていた。

 レスリー氏は男性をモチーフにした作品だけでなく、浜崎あゆみ、倖田來未、松任谷由実ら日本の女性アーティストの写真集やCDジャケットを数多く手掛け、レディー・ガガやビヨンセといった海外セレブたちも被写体になった。今、世界で最も活躍しているアジア系フォトグラファーの一人であり、昨年にはAPA(日本広告写真家協会)アワードで経済産業大臣賞を受賞している。

 エロスを前面に押し出した作風を評価するファンや著名人は多く、今回の逮捕を受けてネット上では「また警察はアートとポルノを混同しているのでは」「表現の自由の侵害だ」などとレスリー氏を擁護する声が高まっているようだ。しかし、その一方で「逮捕は仕方ない」という冷めた見方もある。

「レスリー氏の作品は、男性器はもちろん、射精や放尿、女性のオールヌード、果ては男性同士の性交やフェラチオまで無修正で掲載しています。レスリー氏本人も作品の過激さは認識しており、写真集を日本で売る際は逮捕の危険性を考慮し、出版流通を通さずに自身の作品展で手渡し販売していた。今まではそれで問題にはならなかったのですが、昨年から警視庁に何度も『無修正のポルノが売られている』と匿名で通報が入っていたようです。タレコミで警察が動いてしまえば、彼の写真集に言い逃れのできない部分があるのは確かでしょう」(出版関係者)

 レスリー氏は世界的に高い評価を得ている一方で、実はモデルになった男性たちから批判が噴出しているという一面もある。モデルの無修正の性器の写った写真を、無許可で写真集に掲載したり作品展に展示しているというのだ。展示を知ったモデルのA氏は自身のTwitterで「最悪だ。。俺の大事な物が俺だけの物じゃなくなってしまった…」と嘆いており、別のモデルE氏は「メール見ましたか?いくらレスリーでもいい事悪いことありますよ!親や彼女に胸はって見せられないですよ!」とレスリー氏のアカウント宛てに抗議している。

 海外でも同じような“被害”は起きており、香港の人気歌手アンディ・ホイはチャリティーイベントのためにレスリー氏の撮影に参加したが、途中から全裸での撮影を要求されて渋々承諾したのだという。2~3枚を撮影した後、アンディは「この写真は出さないでほしい」と要請したが、写真集で展示されてしまった。香港の俳優アーロン・クオックも、同じくチャリティーイベント用に撮影した全裸写真を無許可で掲載されているという。

 こういったトラブルが続出していることと、今回の逮捕は関係があるのだろうか。

「無関係とは言えないでしょう。無許可掲載されたモデルからの批判だけでなく、彼はヤリ手で強引な面があるため、一部の業界人から恨みを買っている。匿名の通報ということでしたが、作品は写真展の中でだけ販売していたのですから一般の目には触れないはず。業界の誰かが彼を陥れるために通報した可能性が高い。警察としては『アートかポルノ』かの判断が難しく、手渡し販売ということもあって目をつぶってきたが、何度も通報されて動かないわけにはいかなくなった」(前同)

 今回と似たような騒動としては、現在、六本木・森美術館で開催されている「会田誠展 天才でごめんなさい」の一部展示が児童ポルノや女性蔑視、障害者差別を容認するものだとして市民団体から抗議を受けたことも話題になった。「芸術かポルノか」という線引き問題は、作家・澁澤龍彦の「サド裁判」や先日他界した大島渚監督の「愛のコリーダ裁判」の頃から今も変わらずに続いているテーマといえる。だが、今回のレスリー氏の逮捕はそれだけではなく、彼の強引な手法や業界関係者のやっかみという問題にも起因しているようだ。

 いずれにせよ、逮捕という事態に発展してしまった以上、行き過ぎた表現弾圧であれば断固として闘うべきであり、これまで多くの芸術家がそうして表現の自由を勝ち取ってきたという歴史もある。今回、逮捕という実例が出てしまったことでアート業界が委縮してしまわないことを願いたい。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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