セックスフレンドとの気ままな関係も悪くはないが、本命の恋人との真剣な付き合いも良いものである。セックスフレンドに「○○が欲しい」「△△に行きたい」とねだられても「自分で買え!」「一人で行け!」としか思えない人でも、愛するカノジョを悦ばせるためなら、なんとか叶えてやりたいと思うものだろう。
しかし、いかに愛するカノジョのおねだりでも、どうにもこうにもご勘弁というリクエストはある。物品の場合は、あまりにも高額なプレゼントを、誕生日や記念日でもないのに買い与えるのは、いささか気乗りがしないものだ。いや、高額でなくとも納得できない買い物もある。カノジョ宅に泊まる際に立ち寄ったコンビニにて、これから2人で食べる菓子類や缶チューハイだけならまだしも、ティッシュやコスメなど当たり前のようにカゴに入れられ、腑に落ちない気分にさせられたと証言する男性も。「△△に行きたい」というおねだりも、旅行やレジャーなら一緒に楽しめるが、男性アイドルの追っかけやパワースポット巡りなど、カノジョの趣味一色のお出かけは遠慮したいというのが本音である。
遠慮したいおねだりは、セックスシーンにも存在する。セックス中のリクエストというと、男性が女性に求めるケースが多いイメージだが、付き合いが長くなると女性側から「実はこういう嗜好があるの」とカミングアウトされることもあるようだ。自分の嗜好とベストマッチすれば何の問題もないのだが、どうにもこうにも受け入れがたい性嗜好の場合は厄介である。
A氏(30代後半)は、数年前に交際していたカノジョに「セックスに尿道カテーテルを取り入れたい」と提案され、面くらったと語る。尿道カテーテルとは、医療現場で用いられる導尿器具のこと。手術前や排尿に困難を伴う患者の導尿目的で使用する。要するに医療行為であるが、A氏のカノジョは看護師ではない。ハプニングバーでウェイトレスのアルバイトをしている女性だったとのことだが、バイト先のカップル客からSM雑誌を見せられて興味を持ってしまったようだ。
尿道に異物を挿入すると、排尿のコントロールが出来なくなり、強制排尿することになる。SM要素の強いプレイだ。カノジョは、自身に挿入してほしいという希望と、またA氏の尿道にも施したいと求めてきたが、両方断ったとのこと。
尿道カテーテルは、挿入時に痛みや異物感を伴い、またデリケートな部位であるため雑菌が入るなどの危険性もある。SMにおいても、相当熟練したマスター(S男性)やミストレス(女王様)でないと手を出せない難易度の高いプレイなのだ。断って正解である。そのぶん、スパンキングなど難易度の低いプレイを提案し、カノジョをなだめたとのこと。
B氏(30代前半)は、元カノに聖水プレイを求められた経験を持つ。聖水とは……上記と似た話で恐縮だが、尿のこと。排尿を見せる程度ならB氏自身も興味津々だったが、元カノが求めてきたのは飲尿だった。「元カノにはSM趣味があったのか?」という問いに対しては、「SM云々ではなく、愛情の証しとしての飲尿」だという。愛があれば互いの尿を飲むことが出来るはずだ、という理屈だ。しかも、歴代の彼氏は皆応じてくれたという。元カレはやってくれた、と言われると、男としての闘争本能に火がつくのか、結局B氏は飲尿を承諾した。「健康法にもあると思えば耐えられた」というからあっぱれだ。
尿以外のエピソードもご紹介させて頂こう。C氏(40代前半)は、恋人のアオカン願望に悩まされている。「誰かに見られているかもしれないと興奮する」という願望を持つ人は少なくないだろうが、C氏の場合は「誰かに見られていると思うと集中できない」という理由でペニスも萎え気味になってしまうということ。自宅でのセックスでも、「窓を開けたい」と言われると、慎重なC氏は隣近所への騒音を気にしてしまう。慎重といえば、ドライブデートも然り。運転中に股間に手が伸びてきたり、ましてやフェラチオしたいと言われても、全く興奮できないという。当然だろう。
こういった話を聞いて、「積極的なカノジョで羨ましい!」と思う人もいるかもしれないが、求められる側としては困惑するものなのだろう。「俺のカノジョはノーマルで物足りないくらいだ」という人も、性嗜好はある日突然開花することもあるのだから、有事に備えて心の準備だけはしておくべきである。A氏のように別のプレイに切り替えるか、B氏のように受け入れるか、C氏のように体や心に拒否反応が出るかは、人それぞれといったところか。
(文=菊池 美佳子)