『はねトび』が『めちゃイケ』になれなかったワケ

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※イメージ画像:『はねるのトびら III [DVD]』ポニーキャニオン

 キングコング、ロバート、ドランクドラゴン、北陽、インパルスら若手芸人5組によるバラエティ番組『はねるのトびら』(フジテレビ系)が、今秋の番組改編により姿を消す。2000年4月から2001年3月まで放送された『新しい波8』(フジテレビ系)という深夜の若手芸人発掘バラエティから選ばれた5組によって、2001年4月から満を持して始まった『はねトび』。当初、深夜帯での放送スタート時には、『めちゃ×2イケてるッ!』(以下、『めちゃイケ』/フジテレビ系)の前進番組『とぶくすり』(フジテレビ系)をほうふつとさせるコントの嵐で、若い世代の人気を獲得。一時期、放送を休止した期間もあったが、発売したDVDがヒットするなどし、待望論が再燃。ついに2005年からゴールデンタイムには進出し、同局の看板バラエティにまで成長した。

 しかし、案の定というか、まるで規定路線のようにゴールデンタイムに進出した同番組は、コントを大幅に削減。「ほぼ100円ショップ」や「回転SUSHI」などの番宣ありきのバラエティ企画が番組の大半を占めるようになったが、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の「食わず嫌い王決定戦」や『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の「ゴチになります」ほどの名物企画は誕生せず。昨年の震災以降は視聴率的にも苦戦し、ゴールデンタイムのバラエティの最低ラインといわれる10%を下回ることもまれではなくなっていた。秋の番組改編で槍玉に上がるのは致し方ないといえる。

 11年半という期間に渡って放送された『はねトび』は、確かにバラエティの歴史にその名を残す。しかし、これほどまで長きに渡ってゴールデンタイムで番組を放送しながら、誰一人として、頭角を現さなかったというのも珍しい。もちろん、出演する5組の芸人はそれぞれに全国区のメジャータレントとはなったが、それ以上でもそれ以下でもない。『めちゃイケ』には、ナインティナインがいたし、同局のそれ以前のゴールデンバラエティを見れば、『オレたちひょうきん族』には、明石家さんまがおり、ダウンタウンやウッチャンナンチャンの番組には、当然彼らがいた。しかし、『はねトび』には、そうしたスターがいない。キングコングが、その役を担っていたようだが、彼らにはその荷が重すぎた様子だし、かといって、他のメンバーにスター候補がいるかというと、そんなことはなかった。

 1人の才能が番組を引っ張り、それに釣られる形で他のメンバーが奮闘するといった従来のバラエティではなかった『はねトび』。休日は揃ってサバイバルゲームに興じ、釣りやバーベーキューで遊ぶという、プライベートでも仲の良い『はねトび』メンバーだけに、誰かが抜き出てしまうことを、知らぬ間に拒否していたのかもしれない。しかし、そんな考えで続けられるほど、テレビバラエティは生易しくはない。次から次へと才能は出てくるし、また、埋もれている才能がどこから発掘されるかわからない。『めちゃイケ』を超えるべくして集められたメンバーに、そもそもその気概がなければ、番組終了は当然だろう。むしろ長く続いたというべきだ。

 ネットユーザーたちの呼びかけによるデモなどが起こった昨年の夏以降、2004年以来続いていた視聴率三冠の座を明け渡すなど、数字的に苦戦を強いられているフジテレビ。生活保護騒動などや女性問題などで、ネットユーザーたちから嫌われているキングコングらの出演する番組の打ち切りは、ネットユーザーらに配慮した結果なのかもしれない。真意はともかく、今夏、フジテレビは大規模な人事異動を敢行するなど、「新しいフジテレビ」の構築に躍起になっているのは事実。そこで下された長年続いた『はねトび』打ち切りというのは、まさに英断といえるだろう。出演タレントたちには気の毒な話だろうが、そもそも、仲良しこよしのナアナア番組では仕方がない。後釜となる番組には、ぜひ「オレたちが天下を獲ってやる」といった気合の入った姿を見せてもらいたい。バラエティのフジ復活を心より願う。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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