女教師あてに手当たり次第に春画を送りつけたエロ校長 (明治44年)

shungaart.jpg※イメージ画像:『日本の図像―春画』ピエ・ブックス

 教師が関係したワイセツ事件というのは、調べてみるとこれが非常に多い。未成年者との淫行や売春行為、同僚や保護者との不倫、強姦や盗撮、ストーカー行為など、あらゆる事例がヒットする。実際に現役の先生たちに聞いてみても、いわゆる「M教師」(問題教師の略)の件は深刻で、「表沙汰になっているのは氷山の一角」(都内の公立学校教諭)とのことだ。

 しかも、そうした問題を起こす先生は、ヒラの教師ばかりとは限らない。教頭や校長といった、それなりの地位にある教育関係者も少なくない。

 たとえば2003年12月、岡山県の中学校の校長(55)が、かつて同じ中学に勤務していた女性教師(34)の自宅周辺に、女性教師の顔写真と無修正ヌードとを合成した写真をばらまいた事件が起きている。その校長は女性教師とはたいして親密だった事実はなく、単なるかつての同僚に過ぎなかった。ところが、逮捕後の取り調べに校長は、「彼女に好意を持ってやった」と供述した。だが、ばらまいた写真はパソコンで精巧に作られていたうえに、女性教師の実名や住所、それに「わたしは淫乱な女」などといった文言まで書き込まれていたというから、かなり悪質だ。

 さて、こうした犯行は最近始まったわけではない。明治44年4月10日頃のこと、岐阜県内の5カ所以上の小学校に、不審な郵便物が届いた。差出人の表記はなく、いずれもその学校に在籍する女性教師宛だった。

 その怪しい封書を開封してみると、なかから春画すなわち男女のセックスシーンを描いた絵に、「この絵を買え。買わないと後でどうなっても知らないぞ」といった意味の、脅迫めいた手紙が添えられていた。そして、「もし買いたくないのであれば、岐阜市内にある岐阜市御園郵便局留めで日本育児院の志水に転送しろ」との旨が記されていた。

20120604mcyzo.jpg「東京朝日新聞」明治44年6月2日より

 この事件では当初は差出人が分からないため進展がなかったが、警察が内偵を進めていくうちに御園郵便局に「日本育児院の志水」を名乗る者が現れたとの情報を得た。そして、これがきっかけとなり、ついに犯人が判明した。日本育児院の志水とはまったくのウソで、実は県内の小学校の校長であることか明らかとなった。

 戦前の公立の学校長といえば、現在とは比べ物にならないほどの威厳とステイタスがあったとも聞く。しかし、その犯行のバカさ加減では、現在とさほど変わらない。当時の記事も、「学校長ともあろう者が、何の目的にてかかる馬鹿げたる事を行いしか」と記している。とりあえず、「校長センセイ様がとんでもないことをしでかした」と、県の担当行政は大騒ぎになったとのことである。
(文=橋本玉泉)

 

「画聖 北斎・春画」

 
「買わないとどうなっても知らないぞ」

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