エロは、それ自体は悪いことではないのです

エロマンガについて真剣に語ってみた! 大ヒット同人誌『淫漫姫』に込められた想い

inmanhime.jpg『淫漫姫』サークル/たまご酔拳

 セックスなどの性的な描写を含む18禁コミック、通称”エロマンガ”。現実には到底実現が難しいエロティックな欲望を叶えてくれるこのエロマンガに、並々ならぬ情熱を注いだ同人誌が話題を呼んでいる。

 タイトルは『淫漫姫』。エロマンガを愛する3人の雄・ペンネーム”たまごまご”、”だんげろうず”、”ゴルゴ31″によるこの同人誌は、全132ページという同人誌にしては破格のボリュームでありながら、その中身も40人以上に達する斯界の著名人・作家を幅広く招き、対談あり座談会ありの盛りだくさんな内容。マンガも収録されているが、全体のほとんどが文字情報で埋め尽くされている。

 たとえば目玉の特集として、ロリコンマンガ界の金字塔・町田ひらく先生への11ページにも及ぶロングインタビューを掲載。他にも「このアナルがすごい!」など様々なジャンルに焦点を当てておススメのエロマンガを紹介したり、「エロ漫画の擬音表現を考える」といったコラムも充実。とにかく制作者たちの熱く”白濁した”思いがほとばしる、エネルギッシュな仕上がりなのだ。

 その情熱はエロマンガを愛する同志たちの心をがっちり捉えたようで、今年8月16日に開催されたコミックマーケット76にて初売りされて以降、「書評本」というジャンルにしては大ヒットと呼べるほど好調な売り上げを見せているという。制作者の1人であるだんげろうず氏に話を聞いた。

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ご覧の通り、文字情報がぎっしり。

――なぜ、”エロマンガ”そのものでなく、それを評論する同人誌を作ろうとしたのでしょうか?

だんげろうず(以下、だ) 単純に 「エロマンガってこんなに面白いんだぜ!!」ということを伝えたかったんです。なので賛否の両面を伝える「評論」ではなく、基本的には良いと思うことだけを書くというスタンスの、単なる「エロマンガ大好きムック」と呼ぶ方がしっくり来るかなと思います。

――エロマンガの魅力とは?

 エロの要素が入っていればどんな内容でも許されるというか、マンガの表現の幅が物凄く広いところ、ですね。多種多様な新しい表現が楽しくて仕方ないんです。例えばグロテスクな作風で人気の駕籠真太郎先生が描く「人体をロケットに改造して飛ばす」といった、グロいながらもサブカルっぽさのある表現や、四肢切断などの暴力的な表現が特徴的な氏賀Y太先生の「少女を監禁して人体破壊する」といった猟奇的な描写も、エロマンガというジャンルは受け入れてしまうんです。それに少年漫画などとは違い、18禁だから「いくらエロくしても良いところ」も長所ですね。飽くなき探究心で「マンガによるエロ」を追求し続けているところに惹かれます。

――制作された3人はそれぞれアクセス数の高い個人サイトをお持ちです。何故ウェブ上ではなく同人誌での形での発表になったのでしょうか?

  「紙の力」にこだわりたかったからです。確かに、ウェブメディアの方が多くの人に読んでもらうことが可能でしょうが、その場合、無料で見られるということもあって読者が興味のある一記事しか読んでもらえない可能性が高い。それに対し「本」という形であれば、全ての記事をセットで購入するわけですから、全ての記事に一通り目を通してもらえるんじゃないかなと。

――だとしても30人近いライターや漫画家に仕事を発注、編集し本の形にまとめる、という作業は、個人サイトの更新の手間と比べれば相当大変ですよね?

  労力と利益の額を考えて時給換算すれば、そんな時給ないってくらい低くなりますからね(笑)。でもやっぱりそれ以上に「本」が好きなんですよ。3人ともエロ、非エロ問わずマンガは3000冊以上所有しているほどです。

――今最もお勧めするエロ漫画家は誰でしょう?

  町田ひらく先生ですね。最近『COMIC LO』(茜新社)で連載されていた「たんぽぽの卵」というシリーズが先日終わりまして、それをまとめた新刊が出るのが楽しみでなりません。町田先生はロリコンものを専門に描かれているのですが、幼女が犯されていく過程のリアリティや、「自分はこれを読んでいていいのか?」という背徳感を味わえるところがたまりません。作品でヌいた後の虚無感も込みで、大好きです。実際、ロリコン属性がない人でも「タブー的なものに触れている」という感覚は伝わるはずですよ。

――エロマンガは「読んでいることが恥ずかしい」という認識が世間的には根強いように思いますが。

  確かに同居している両親からは「いい加減(エロマンガから)卒業しなさいよ」という苦言を呈されてはいますね。でも個人的にはもはや「恥ずかしい」なんてレベルは超越してますから! エロマンガへの熱い情念をパワフルに描いたゴージャス宝田先生の『キャノン先生トばしすぎ』(オークス)の中で、「エロいことは悪いことじゃないんだよ」というような台詞があるんです。あの台詞が気持ちの上で、同人誌を作る後押しになりました。僕自身、本の中で顔をさらしていますが、それはもうバカだって思って笑ってもらえれば幸せです(笑)。

――では最後に、エロマンガを一言でいうと?

  「ドリーム」ですね。夢です。荒唐無稽だったり犯罪的だったりしても、それはあくまでファンタジーであって、叶わなくていいものなんです。来年もそんなドリーム=エロマンガへの愛を注いだ続刊を出すつもりなので、よろしくお願いします!

 
(岡島紳士/アイドルゴシップクリッピング

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