昭和の大スター・山口百恵の楽曲は大長編恋愛ドラマのごとく|架乃ゆら昭和コラム「美徳のゆらめき」

昭和大好きAV女優・架乃ゆら連載コラム第5弾

 当コラムを読んでくださったライターの成松哲さんが架乃ゆらちゃんに昭和歌謡を語ってもらうイベント「架乃ゆらと聴く昭和歌謡&シティポップの夕べ」を開催してくださり、ますます注目度がアップ! 「昭和」が大好きなゆらちゃんの筆は進むばかりだ。

 今回のテーマは昭和の大スター「山口百恵」ちゃん。このテーマに興奮したのか原稿量がいつもの倍以上となり、圧倒的な情熱と熱量を放出させた。

 それでは「架乃ゆら昭和コラム・美徳のゆらめき#5」をお楽しみください!

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架乃ゆら

架乃ゆら昭和コラム「美徳のゆらめき#5」

 メンズサイゾーをご覧のみなさんこんにちは! 『S1』専属女優の架乃ゆらです。

 今回、昭和歌謡コラムではかっこよすぎて最近ずっとリピートで聴いている山口百恵さんの『イミテイション・ゴールド』について書こうと思ったのですが、楽曲について調べていくと、とある共通点とそこから面白い恋愛ドラマが見えてきてとても興味深かったので、非常に長くなってしまいますがそれについて書いていこうと思います。

 山口百恵さんといえば1970年代のアイドルシーンを代表するスーパーアイドルであり、デビュー当時は素朴な少女のような外見なのに大人っぽく際どい歌を歌うというギャップから人気を博し、やがて色香の溢れる大人の女性へと成長し『時代と寝た女』とまで称されました。結婚を機に引退し、その後メディアに一切出演せず、活動期間はわずか7年ほどですが、その輝かしい姿は時代を超えていつまでもわたしたちを魅了し続けています。

 正直、わたしは松田聖子さん以降の昭和アイドル歌謡が好きでよく聴いており、山口百恵さんは「松田聖子さんが出てくるまでアイドル界のトップにいたスーパーアイドル」くらいの認識でしかなかったのですが、今回いろいろ聴いていく中でその色っぽさや儚さ、かっこよさと、わたしの好きなフリフリかわいい昭和アイドル像とは真逆ではあるものの、そのあまりにも魅力的な姿と歌声にハマってしまいました。

 そして冒頭にも挙げた共通点ですが、1976年6月にリリースされた『横須賀ストーリー』から1980年8月にリリースされた『さよならの向う側』の間およそ13曲ものシングルA面曲を作詞作曲担当されているのが阿木燿子さん・宇崎竜童さんの日本一カッコいい夫妻であるということです。

 このカッコよすぎる夫妻が制作した楽曲は山口百恵さんのイメージを塗り替えてヒット曲を連発したまさに黄金期と切っても切り離せない存在なのですが、作詞・阿木燿子さん、作曲・宇崎竜童さんの楽曲は「実はすべてひとつの恋愛ストーリーとして繋がっているのでは?」とわたしは気づいてしまいました…!

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これっきり

 まず物語の始まりは『横須賀ストーリー』からです。

 それまでの山口百恵さんといえば『青い果実』、『ひと夏の経験』で見せた早熟な少女というイメージでしたが、それをガラッと塗り替えたのが阿木燿子さん、宇崎竜童さん夫妻が制作した「横須賀ストーリー』でした。

 この楽曲には現在にも通じる「自分の意思や芯がはっきりとしている女性像」があり、それがそのまま山口百恵さんのイメージにもなりました。

 さて、『横須賀ストーリー』はおそらく年上でぶっきらぼうな男性に想いを寄せるも、心のどこかで淋しさを感じ、そう遠くない未来に訪れる別れを予期しながらも横須賀の街をデートする主人公が描かれます。

 曲中に何度も繰り返される「これっきり」という言葉がなんとも切なく、男性からたった一言別れを告げてもらえると気持ちに踏ん切りが付いてスパッと別れられそうなものを男性からは何も言わないため、主人公は心の中に渦を作りながらも健気に男性の少し後ろを連れて歩くのです。

 そこから続くのが1977年1月リリースの『初恋草紙』です。

 1年前の初夏に横須賀を連れて歩いていた2人ですが、木枯らし吹き荒れる冬の季節になると同時に関係も冷え込み、いよいよ別れ話が持ち込まれます。『横須賀ストーリー』では男性のぶっきらぼうっぷりが目立っていましたが、やはりそれでも主人公は男性に惚れていて、次々と楽しかった思い出が浮かんでは消えていきます。

 男性がどれほど年上だったのかは分かりませんが、「あなたの頬は大人びて別れの重さで刻まれていた」とあるので、主人公より一回りかそれに近いほどの年の差があったのを別れ際に急に意識するようになったのではないでしょうか。

 このへんは年上好きならあるあるポイントだと思うのですがどうでしょうか? 別れ際、気持ちが冷めるにつれ相手の年齢がやけに気になってくる感じとか…。

くせが違う 汗が違う 愛が違う 利き腕違う

 枯れ葉とともに主人公の恋も散っていきました。

 そうして1977年4月『夢先案内人』。

 終始ドリーミーで夢色がかったような楽曲なのですが、こちらは実際に主人公が見ている夢なのではないでしょうか。

 別れた年上の男性のことが忘れられず、夢の中で二人はゴンドラに乗り太陽や月に祝福されながらデートは続きます。男性にキスされ、「ほのかな愛のやさしさが込み上げてくる」とあるので、主人公は本当は男性に優しくリードされるデートがしたかったのではないでしょうか。それとも、この夢は主人公がまだ見ぬ恋人との理想のデートを文字通り夢見ている風景かもしれません。

 1977年7月『イミテイション・ゴールド』にて新たな恋人の存在がついに描写されます。

 どうやら今回の恋人は主人公よりも年下で肌が焼けていて、かつての男性とは利き腕の違う男性のようです。

 男性が2人出てきたので『横須賀ストーリー』で付き合っていた男性を横須賀さん、『イミテイション・ゴールド』で付き合っている男性をゴールドくんと便宜上呼ぶことにします。まだまだ続くのでもうちょっと我慢して読んでください。

 さて、ゴールドくんは横須賀さんとは違ってラブホより自宅派のようで(横須賀さんも自宅派かもしれませんが)、主人公がシャワーを浴びて帰ってくると窓辺に座ったゴールドくんが流れる雲を牧歌的に眺めていました。

 横須賀さんはどちらかと言うと色白でタバコの匂いのする少し不健康なタイプで、それでいてセクシーな枯れ方を見せる年上の男性であり、おそらく流れる雲に意識を向けたことは少年時代以降ないような人間なのですが(横須賀さんも流れる雲で感傷に浸ってるかもしれませんが)、新しい若い恋人ゴールドくんは流れる雲に季節を見て、主人公にはにかみかけるような「健康」を人の形にしたような人間です。

 そんなギャップにめまいを感じる主人公ですが、やはり横須賀さんのことを簡単に忘れることなどできず、ゴールドくんと恋人らしいことをしている最中でもふとした瞬間から横須賀さんの影を見てしまうのでしょう。ゴールドくんも馬鹿ではないので主人公がかつての恋人の影に縛られていることを分かっていて、年下なりのやさしさで主人公がかつての恋人のことを忘れられるように待っているようです。

 それにしても『イミテイション・ゴールド』はカッコ良さが詰まりに詰まった楽曲で、サビで4つ短文が出てくるのですが、その4つ目を柔らかく歌っていて非常にインパクトがありますし、特に好きなのが「くせが違う 汗が違う 愛が違う 利き腕違う」と途中までは抽象的に表現していたものを急に利き腕という具体的な言葉が出てきたことによって、ものすごくエロティックになるところです。たまらん~。

 そんなゴールドくんとの楽しい日々が描かれているのが1978年2月『乙女座 宮』です。

 さきほどの『夢先案内人』と似たようなドリーミーさがありますがこちらははっきりと目が覚めた現実でのことであり、2人とも幸せの真っ只中なので地面から3センチほどふわふわと浮いています。

 ゴールドくんのやさしさによって横須賀さんのことはかなり吹っ切れた主人公はもうゴールドくんとラブラブです!! 「ウェディングドレスを着てバラの花をかかえ少女漫画の恋人同士ね」と、「おい目を覚ませ!」とわたしなら声をかけてしまいそうなほどイチャイチャラブラブアホアホカップルっぷりが炸裂しています。

 いや流石にここまでツラツラと妄想が過ぎるぞと思われるかもしれませんが、『イミテイション・ゴールド』と『乙女座 宮』に出てくる男性が同一人物なのは多分意図して描かれていて、どちらの楽曲にも男性が若くてやさしいことが描写されています。

 こうしてゴールドくんに添い遂げて結婚まで意識する主人公ですが、この恋路は長くは続きませんでした。

馬鹿にしないでよ

 1978年5月『プレイバック part2』にてつい数ヶ月前までラブラブしていた主人公とゴールドくんになにがあったのか、ゴールドくんを「坊や」呼ばわりしてメンチを斬りまくりです。

 おそらく年下男子ゴールドくんのわがままや甘えっぷりをこれまではかわいいものと捉えていたのがだんだんと疲れてきたのか、ついに喧嘩をして家を飛び出してしまうのです。

 主人公は「真紅なポルシェ」を行く当てもなく飛ばしますが、女が一人運転しているのでそこに目をつけた隣の車の男がなにやら文句を言ってきますが、ゴールドくんとのことでイライラが最高潮に達していた主人公からドスの効いた一言「馬鹿にしないでよ」が炸裂します!

 たまたま隣にいた男は不憫な気もしますがタイミングが悪いですね。ですがポルシェを乗りこなすカッコいい女性にブチ切れられるのは羨ましい気もします…。

 さて、そこから主人公はゴールドくんとの喧嘩をプレイバック、つまり回想します。車のラジオから聴こえてくる沢田研二さんの楽曲さながら「勝手にしやがれ」と言われたこと。

 「出て行くなら勝手にしろ」と言われ突発的に家を飛び出してしまったのですが、「女はいつも待ってる」というセリフは横須賀さんのことを忘れるまでゴールドくんと真に向き合えず戸惑っていた主人公のことを思うと非がないわけではないのかな、とも思ってしまいますが、そんなこと当人同士だと関係ないですね。

 とりあえず気が済んだ主人公はゴールドくんのもとへと帰っていきます。あんなにラブラブだった2人がまさか喧嘩をするなんて…と驚きですがこの喧嘩がきっかけでどんどん気持ちがすれ違っていき、ついには大事件が起きます。

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 1978年8月『絶体絶命』で夏の厳しい西陽が差し込む「夕暮れ迫るカフェテラス」にてバッチバチな女が2人。「彼と別れてほしい」と泣きじゃくるかわいらしい女と、「そんなことはできない」と啖呵を切るカッコ良すぎる主人公です。

 ゴールドくん、どうやら主人公を裏切り浮気をしていたようです。しかも主人公とはタイプの違うかわいい子犬のような女です。おそらく主人公がここ数日様子がおかしいゴールドくんを問い詰め、浮気が判明したのでしょう。もしくは浮気現場に最悪なことに鉢合わせてしまいそのままカフェへ連れてきたのか…。

すっかりカタはついたわ

 とにかく今現在カフェにて女同士の激しい火花が散っていることは確かです。「そこへ彼」ゴールドくん登場。そして一言「二人とも落ち着いて」。これはいけません。どうしてこんなことになったのかってゴールドくんただ一人あなたのせいなのに、何故このリングに上がってすらこないのでしょうか。これはダメ。

 わたしでさえ頭を抱えているのにこれには主人公もブチ切れて「はっきりカタをつけてよ」とゴールドくんを責問します。いいぞ主人公! がんばれ!

 浮気相手の女は負けじと、しおらしく涙を拭いたり唇を震わせたりと、ぴえん子犬アピールが止まりません。正直、ブチギレ青筋ド演歌モードの主人公と、かわいらしく“ぴえん”な女では男性は“ぴえん”の肩を持ちたくなってしまうので、もう主人公の負けは確定なのですが、もはや勝ち負けやゴールドくんを取り戻すなどではなく、浮気という最低な手段をとったゴールドくんを木っ端微塵に粉砕するのが目標なので、これに言及するのは無粋なのです。

 さて、そこでゴールドくんがまたいらぬ一言を挟みます。

 こんな状況で最も口に出してはいけないセリフ「二人とも愛してる」です!!

 なななな何様のつもり〜!? おい!! え〜〜?!? びっくり〜!!!! ノーベルびっくり賞!!!

 わたしが地面をのたうち回っているうちに主人公はフッと一息吐き、「すっかりカタはついたわ」と一言。そのまま席を立ちカフェを後にします。

 カッコいいぞ主人公! 世界で一番カッコいい背中!! あんなチンケな男はやく忘れてウチらと一晩中遊ぶわよ!!!! さあ行くわよ!!!! タクシー呼んでちょうだい!!!!

 ゴールドくんとの花束みたいな恋があっけなく終焉を迎えて1979年3月『美・サイレント』ではさっそく新たな男が登場しています。

 便宜上の名をサイレントさんとしますが、こちらのサイレントさんもろくでもない男である雰囲気がひしひしと伝わってきます。ゴールドくんで年下男子に疲れた主人公は再び年上の男性であるサイレントさんと出会い、付き合うようになりますがサイレントさんはおそらく自称Sで承認欲求が人よりも強めであられるのでしょう。

 デート中に他の女性に色目を使うサイレントさんに嫉妬が止まらない主人公。そこで何か文句があるなら言いなよとでも言いたげな態度のサイレントさんに、主人公は大胆にも自ら誘いに出ます。「あなたの…が欲しい」「燃えてる…が好き」と楽曲では「…」部分が聞き手に想像できるように空白となっているのですが、これがオシャレかつニクいつくりなんです!!

 聞き手がスケベであればあるほど「…」部分にはとうてい口には出せないようなあられもない単語が入ってしまい、「とんでもないどスケベ楽曲じゃん!」と思ってしまうのですが、「それはあなたの感想ですよね?」と半笑いで論破されてしまうのです。

く、悔しい…。

 でも、どう考えてもどスケベな単語しか当てはまらない気がする…。というわけで主人公はいつも赤面しながら大胆な誘いをしますがサイレントさんはニヤニヤしながらその誘いを断るのです。

 年下の女性に赤面させながらスケベな言葉を言われたいだけなんだろう! なによこのスケベ男!!! 許せないわ!!!! ウチらで潰すわよ!!!!! いくわよベンチプレス300キロ!! メキメキメキ!!!

愛する極み

 こんなスケベ男サイレントさんと主人公が2人でいるとどうなってしまうのかと言うと、それが1979年6月『愛の嵐』に繋がります。

 主人公を嫉妬させ、その嫉妬を愛と受け取り満足するサイレントさんの歪ともいえる愛のかたちは今風に言うとかなりメンヘラっぽく、その不健康で不健全なにおいのする愛は感染し、あんなに凛としていた主人公も心なしかやつれて目元にはクマが浮き出ています。

 夢でサイレントさんと他の女性が抱き合うのを見て青ざめて目醒める主人公。「二人でこうして一緒にいるのに」、「あなたがどこかへ行ってしまいそう」と、よくある恋愛における不安の並みではなく、常に嫉妬を覚えている主人公はかなり病んでいます。

 主人公の病みっぷりは随所に現れていて、情事に及んだ後、ベッドサイドでサイレントさんがタバコをふかしながら「好きだと容易く口に」して「屈託のない笑顔を」見せるのですが、どうせ他の娘にも言ってるんでしょと主人公はまた嫉妬を覚えてしまい、「軽くあなたを憎んで」しまうほどです。

 もともと主人公にもド演歌な情念で動くところがあったので、サイレントさんの不健康さに感化され「あなたのすべてを縛れない限り」、「愛する極みで巻き込まれて行く」と、二人の愛模様はまさに嵐のようにどんどんとどす黒く深く広がっていきます。

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そして伝説に…

 その後、1979年9月『しなやかに歌って-80年代に向って-』をリリースして一ヶ月後に三浦友和さんとの恋人宣言をし、翌年1980年3月には結婚・引退も発表、同月に『謝肉祭』、同年5月に『ロックンロール・ウィドウ』も発表。

 そうして、ファイナルコンサートや最後のテレビ出演でも歌われた山口百恵さんの事実上のラストソング『さよならの向う側』が1980年8月にリリースされ、伝説のアイドルはマイクを置いて舞台を降りました。

 この4曲は山口百恵最終章ともいえるので大長編恋愛ドラマは『横須賀ストーリー』から始まり『愛の嵐』で終わったのでしょう。

 もちろん山口百恵さんのシングル曲は他の方が制作されたのも数多くありますが、今回は作詞・阿木燿子さん、作曲・宇崎竜童さん夫妻に視点を向け、そうするとなにやら面白い恋愛模様がみえてきたので楽曲をベースに妄想8割でなが~く語らせていただきました。

 今回はこのへんで終わります。最後まで読んでくださってありがとうございます! 次回もよろしくお願いします。

【架乃ゆら(KANO YURA)】
身長:156cm
スリーサイズ:B84(D)・W55・H86
生年月日:1998年12月28日
趣味・特技:昭和歌謡、特撮ヒーロー鑑賞
ツイッター:@kano_yura
インスタグラム:@kano__yura
公式ブログ:架乃ゆらオフィシャルブログ
YouTube:かのちゃんねる

(写真・構成=神楽坂文人Twitter@kagurazakabunji

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