「私、AV女優になります」樋口みつはエッセイ#01

 メンズサイゾーイメージガール連載【樋口みつは】編。7月にデビューしたばかりのみつはちゃんが、AV業界に臨む女子のホンネをエッセイで綴る。AVという異世界に飛び込んだ彼女を待ち受けているものは何なのか、新人女優の胸の内を少し覗いてみませんか――。

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※画像:樋口みつは(公式Twitter@higuchi_mitsuhaより)

「私、AV女優になります」樋口みつはエッセイ#01

 午前7時、新宿駅東口。

 私は撮影場所に向かうためのロケバスの中で、過去に使っていた「はてなブログ」の下書き機能を使ってこれを打っています。

 この「はてなブログ」は非公開で私しか見られません。久しぶりに読み返すと、当時の私は泣いたり怒ったりスマホを破壊したり深夜に飛び出したり頭部をぶつけて血を流したりと、かなり激情的な毎日を送っていたようで、「大丈夫!?」と心配になります。

 その一方で、かなり面白くも思えて笑ってしまった。あの頃は毎日ずっと退屈で、わざと泣いたり叫んだり恋愛したりしていた気がします。

 デビュー作を撮って貰った日から、生活や環境、心が忙しく自分の気持ちや状況についていけない日があったりします。元々周りと比べると何をするのにもゆったりしていてのんびりと生きてきたタイプなので、端から見たら大したことない毎日でもあわあわしてしまうのです。自分がマイペースだということにすら最近気付いたくらいで…。多分私は人間1回目のターンなんだなぁ…なんて思いながら電車のホームまで全力疾走して足を挫いたりパンを勢いよく食べて咽たりしています。

 そんな私はAV女優になる前のことを懐かしく思うこともなく、とにかく速いスピードで進む毎日を過ごしていました。

 しかしメンズサイゾーさんから今回のエッセイのお話を頂いて、過去のことをじっくり思い出す機会ができました。今回はデビュー作の撮影についてお話しようと思います。

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※画像:樋口みつは(公式Twitter@higuchi_mitsuhaより)

 「よし、振り返ろう」とひとり意気込みましたが、あれ…あれ…記憶がカケラのようです。ぽろぽろと出てくるのはかなり断片的なものばかりで、上手に表現できません。

手が震えるほど緊張していたこと。

ずっと身体が火照っていたこと。

筋肉痛が嬉しかったこと。

帰り道、寂しくて泣いてしまったこと。

 そんなワンシーンばかり蘇ります。

 作品を観て下さった方から、「明るいところや笑顔が素敵だ」とメッセージを貰うこともあります。私は陽気で天真爛漫で堂々としている太陽みたいな女の子にずっと憧れています。けれど、実際の私は陰気で捻くれ者で怖がりで自分のことが大嫌いで自信がない人です。

 たまにとんでもなくポジティブなところがあるのですが、それはネガティブの奥の方にあるどうしようもない状況になってやっと出てくるポジティブなので憧れている明るさではありません。

 デビュー作の撮影日の朝は楽しみやワクワクよりも緊張が勝っていました。最初のカラミがあるまでは緊張の裏返しのように笑っていて、カメラが回っていても手が震えていたのを覚えています。ただその後のカラミで一気に緊張が解けたのが私らしいなと思います…。

 そして身体がずっと熱かったこと。私は極度の寒がりで、初夏にも関わらず「鳥肌立ってるよ…!?」と友達を驚かせてしまうのですが、この日は帰り道まで身体が火照っており、ぽかぽかしながら原宿駅まで歩いたのを覚えています。

 その日の夜は寝落ちしてしまい、翌朝起きたら「こんなとこが…?」と思う場所まで筋肉痛になったのですが、辛いはずの筋肉痛が撮影したことの証に思えて何だか嬉しかったです。

 情緒大丈夫なのか…と自分でも心配になりますが、泣いてしまったこともよく覚えています。

 デビュー作の続編というのを2作目で撮って頂いてるのですが、その撮影後に「撮影が終わったこと」が寂しくて泣いてしまいました。

 「病んでいるの?」と思われそうですが全くそうではなく、きっと凄く満たされた時間だったのだと思います。子どもがテーマパークから帰る時、閉園まで居たのにまだ寂しくて泣いちゃうあれに近いです。

 これまで、あの日のことを振り返らずにドタバタと数カ月過ごしていましたが、こうやって思い返してみて心がぽかぽかと愛おしい気持ちになりました。こんな気持ちになれる作品を作って下さった皆さんには改めて感謝したいと思います。

 あの日から変わらないことも、いくつかありますが(カメラが回るまで緊張していたり、撮影後の帰り道が寂しかったり)、あの日だけの感情や顔や声があるのだと思います。

 AV女優を引退するまで、これからもずっとデビュー作は私にとって特別で愛おしい作品です。

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※画像:樋口みつは(公式Twitter@higuchi_mitsuhaより)

 撮影が終わり、最寄駅から自宅までの坂道に嘆きながらやっとこさ我が家に着き、身に纏ったものを脱ぎ捨て今お布団の中で原稿を読み返しています。こんな内容で大丈夫なのだろうか…。こんなの読みたい人いるのかな…と不安です。

 次回は私がAV女優になるまでのお話をしたいなと思います。前半にかいたような激情的な毎日から何があったのか面白がってくれたら嬉しいな。じゃあ、またね!

【樋口みつは】
身長:159センチ
スリーサイズ:B80・W58・H85(cm)
公式Twitter(@higuchi_mitsuha

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