なぜ“オワタ”!? フジテレビ視聴率低迷の理由と復活の糸口

fujitv0304.jpg※画像:フジテレビ屋舎

 昨秋から始まったゴールデンタイムの新バラエティ『世界は言葉でできている』『アイアンシェフ』が相次いで終了。昼の時間帯に打って出た『知りたがり!』は打ち切りが決まり、ついには1月28日~2月3日の週間平均視聴率で30年間負けたことがなかったというTBSに敗北するなど、フジテレビの凋落ぶりが止まらない。昨年夏には大幅なテコ入れ人事が行われたというが、好調なのは唯一アニメ『サザエさん』だけ、回復の兆しは一向に見えてこない。

 そんなフジテレビの現状について、4日に発売された「週刊現代」(講談社)が特集記事を掲載している。記事によると、現在のフジテレビの低迷の原因は3点考えられ、その1つは、制作陣の世代交代がうまくいかなかったという点、もう1つはバラエティスタッフの事故や不祥事、そしてさらにネトウヨからのバッシングだという。

「会社という組織に属しているとはいえ、もともとテレビマンはどこか一匹狼的なところがある人が多いですからね。そういう人が組織の中で後輩などの人材を育成しようとしてもなかなか難しいところがあります。もちろん若い人たちも成り上がってやろうと必死ですが、超エリート企業になったフジテレビに入るような人は、それこそ偏差値レベルの高い、いわゆる“良い子”も多く、なかなか一匹狼的というわけにはいきません。そんな若い世代と『バラエティのフジ』を支えてきた制作陣には大きな隔たりがあるのかもしれませんね」(業界関係者)

 現在視聴率が好調といえば、昨年、プライムタイム(午後7時~11時)で年間首位を取ったテレビ朝日。週刊現代は、この同局の好調ぶりを『報道ステーション』を軸にしたものであると分析。同番組への流れをいかに作り上げ、そしてその後にどうつなげるかを意識した結果ではないかと指摘する。中でも、23時から1時にかけて放送され、その後ゴールデンに昇格した深夜バラエティの人気が視聴率を下支えしているという。また、そのテレビ朝日と視聴率トップの座を争っている日本テレビの好調ぶりについては、長期的なビジョンを持って番組制作に携わった結果だという。

 とはいえ、世の中“勝てば官軍”。テレビ朝日の深夜からゴールデンタイムへの番組移動などはフジテレビの十八番といえるものだし、また、日本テレビが長期的なスパンを見据えて行っているという新人ディレクターによるお試し番組企画なども、フジテレビは2004年から「ゴールデンブレイク枠」として現在も実施中。言わばこうした取り組みに関しては、テレビ朝日や日本テレビはフジテレビの後塵を拝してきたともいえるものだ。数字が悪いことで、フジテレビは低迷ぶりだけが注目されているようでもある。

「最近では『ソモサンセッパ』や『ヌメロン』のように、“知”を感じさせる番組つくりにおいてはフジテレビの独壇場な気がします。ただ、それが世の中に合っているかとなると難しいですよね。先日も“テレビはダメだ”という、いかにもフジテレビらしくて斬新で自虐的なことをテーマにした『できるテレビ』というのを放送してましたけど、素直に楽しめるかといえば、そんな感じではなかったですよ。番組内では失踪人探しなどをやっていましたが、それがいかにもあっさり見つかるし、何を言いたいのか中途半端なんですよ。“テレビはダメだ”と言いながら逆説的に“テレビの力”を見せてくるのかと思ったら、実際は“それテレビじゃなくていいんじゃないの?”という印象で(笑)。迷走している印象を受けました。そういうところが視聴者離れを引き起こしているんじゃないでしょうか。良い意味でも悪い意味でも視聴者というのはもっとシンプルなものを好むんだと思います。僕もよく企画会議なんかで経験しますけど、あんまり練りすぎてもダメなんだと思います」(バラエティ放送作家)

 1980年代からバラエティの王者に君臨したフジテレビが、現在の「テレビバラエティの形」を作ってきたことは誰もが認めるところだろう。そのフジテレビが作ってきたレールに乗って今のテレビ朝日の躍進があるともいえる。そんなフジテレビは、バラエティ番組での事故や不祥事、さらにネトウヨからのバッシングによっていつの間にレールから脱線してしまった。1本のレールしかない状態では追い越すのは不可能だ。だとすれば、フジテレビはもう1本別のレールを作るしかなく、その渦中での模索というのが現状なのかもしれない。フジテレビにすれば、ある一定の評価を得た深夜番組を安易にゴールデンに昇格させるのではなく、深夜は深夜、ゴールデンはゴールデンの面白さを再確認し、それぞれの枠組みの中で番組を練り上げることができれば、それこそが新たなレールとなるのではないだろうか。他局で見たことのある似たような番組ではなく、かつてのフジテレビバラエティがそうであったように、「どこか壊れた(ようにパワフルな)」オリジナリティある番組こそが、「復活の糸口」となるはずだ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

men's Pick Up