池上彰の毒舌に石原慎太郎もタジタジ タブーなしで斬りまくれる理由とは

※イメージ画像:TXN衆院選SP「池上彰の総選挙ライブ」(テレビ東京系)より

 16日に投開票された衆院総選挙と東京都知事選のW選挙。衆院選は様々な争点が論じられてきたが、終わってみれば自民党の大勝。自公は法案再可決が可能な325議席を獲得し、一方の民主は57議席という惨敗。民主は選挙前の4分の1程度の議席数となり、54議席を獲得した日本維新の会に迫られるという苦しい状況となった。

 当日は選挙特番に釘づけだった人も多いと思うが、ネットユーザーから「鋭すぎる!」「やり過ぎw」などと圧倒的な高評価を得たのが、ジャーナリストの池上彰氏がメインを務めたテレビ東京の選挙特番。池上氏のほかは、『モヤモヤさまぁ~ず2』『出没!アド街ック天国』などに出演中の大江麻理子アナが進行役を務め、『アド街』のナレーションを務める武田広がナレーターを担当。ゲストはモーニング娘。の道重さゆみや坂下千里子、ガレッジセール・ゴリという、テレ東ならではのゆる~い雰囲気の布陣のはずだった。

 ところが、フタを開けてみれば池上氏とテレ東の暗黒面が全開の番組で視聴者は大喜び。番組では、速報と共に表示される候補者のプロフィールには、皮肉にしか思えない情報やマニアック過ぎる情報が掲載された。

 いくつか例を挙げてみると、自民の石破茂幹事長は「カレー作りに異様な情熱」、維新の石原慎太郎代表は「“暴走老人”公式HP名『宣戦布告』」、維新の東国原秀夫氏は「たけし軍団→知事→国会 おそるべし上昇志向」など、明らかに悪意があるとしか思えない情報が。

 その他の候補も「ブログに昼食を掲載」「大のおばあちゃん子」「出馬による転居で息子が涙」「母が振り込め詐欺の被害に」「大学の先輩は長州力」などといった必要以上に候補者の人柄のにじみ出た情報が並び、フイを突かれて思わず爆笑した視聴者も多かったようだ。

 だが、テレ東スタッフの黒さは序の口だった。真打ちである“キラー池上”は、当選・落選にかかわらず候補者をシュート発言でぶった切りにした。

 維新の石原代表に対しては「パプアニューギニアと北朝鮮を一緒にするから、石原慎太郎は暴走老人って言われるんですよ!」などと批判し、暴走老人を何度も連呼。これを聞いた石原代表はムッとした表情で険悪ムードになり、中継終わりで音声のみが切れた状態で石原代表が明らかに「バカ」と言っていたのが口の動きで分かるシーンが放送された。

 大敗を喫した民主の岡田克也副総理には「惨敗と言ってもいい結果だと思いますが」とドSな追い打ちをかけ、「落選した民主党の議員たちから、野田さんに対する恨みつらみが聞こえてくるんですが」と切り出して岡田氏を凍りつかせた。

 大勝した自民の安倍晋三総裁に対してもひるむことはなく、「5年前に総理を辞任した時、当時の会見では体調不良に一言も触れていませんよね? これはどういうことなんですか?」と過去のウソをつっつくと、安倍総裁は「国のトップとしてあえて体調不良を隠した」と苦しい返答。だが、これで攻撃はやまず「国防軍は場合によっては戦争をすることもある。兵士に死者が出ることもある。そういうことを命令する立場になるということですね?」と健康問題に絡めて鋭い突っ込みを入れた。

 自民公認が外れて無所属で当選した鳩山邦夫氏には、「東京の選挙区だったのに、いつのまにか福岡に行かれてしまいました。これどういうことなんですか?」とお国替えをツッコミ、「福岡を選んだのは(鳩山家が大株主の)ブリジストンの工場があるというのも大きかったんですか?」とシュート発言。明らかに理由を知っているのに、あえて本人に聞くというドSぶりを発揮し、鳩山氏はタジタジで「お袋の故郷なので…」と答えるのが精いっぱいだった。

 さらに、テレビでは扱いにくい公明党と創価学会の関係も池上氏にとってはタブーではなかったようだ。返り咲き当選を果たした公明党前代表・太田昭宏氏に「自民も民主も対立候補を立てなかったから当選できたのだと思いませんか?」と皮肉にも程があるというキラー質問。太田氏の中継が終わると、すかさず「宗教法人の信者数」という画面が表示され、創価学会や幸福の科学の信者数が発表されるという抜かりのなさだ。視聴者からの「公明党から出馬する候補者はみんな創価学会員なのですか?」という質問にも、池上彰は「会員が多いですが、それ以外の人もいます。意外と知られていないことですね」とサラッと答えている。

 まさに向かうところ敵なし、タブーなしの池上無双状態となったが、なぜ彼はここまでやってしまえるのだろうか。

「本来ならコメンテーターや解説者といった立場の人間は、政治家との付き合いもあって全ての議員に噛みつくようなマネはできません。しかし、池上さんはニュース解説にこだわるつもりはなく、テレビ番組のレギュラー出演も昨年3月で取りやめ、今はあくまでジャーナリスト活動の一環として出演している。裏の懐柔工作が通用しない相手ですから、政治家にとっては厄介でしょうね(笑)」(テレビ局関係者)

 これからも政治を気持ち良くぶった切ってほしい!
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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