河本、生保不正受給問題でますます広がる世間とテレビ業界のギャップ

komoto20120528.jpg庇ってくれる人もいるわけで……

 涙の会見で、実母の生活保護受給の不正疑惑について謝罪したお笑いコンビ・次長課長の河本準一。不正という意識はなかったものの、支給を受けた生活保護費に関しては返還するという、なんともちぐはぐな内容の会見からは、彼の言葉をどこまで信用していいのかわからない。「しっかり喋ってこい」と母親に言われてきたというが、そもそも問題の原点はその母にあり、感覚としては、その母にしてその子ありという気がする。子どもが年に数千万円を稼ぐようになっても、生活保護を受けていた事実は間違いなく、それこそ「もらえるもんはもらっとけ」という卑しく浅はかな感覚がまったくなかったとは言い難い。

 そんな河本を公人ととらえ、今回の問題を大きく取り扱ったのが、自民党の片山さつきだった。当初、片山は、週刊誌上で取り沙汰された「ある芸人の母が生活保護を不正受給している」という旨の記事に関連して、河本の実名を公表。会見の席では、河本の事務所である吉本に説明を求めた経緯を説明し、不正受給が問題となっている今の生活保護制度に一石を投じた。

 この片山に対して、やりすぎだと批判しているのが河本の芸人仲間である芸能界の面々だ。爆笑問題の太田光は、『サンデー・ジャポン』(TBS系)の中で「オレたちが言うと、(河本を)かばってるように見えるんだろうけど」と前置きしながら、「Twitterでいかにも市民運動のように、巨悪と戦う、あたかもカダフィをやっつけたかのようにやるのはとんちんかんな気がする…」と発言。河本と同じ事務所に所属する千原せいじは、『かんさい情報ten!』(読売テレビ系)に出演した際、「片山さつきという人はプライバシーのことは放っておいていいのか」と怒りをあらわにした。

 その後、せいじの発言を受けた片山はなぜか「恐喝された」と思い込み、『報道ステーション SUNDAY』(テレビ朝日系)に生出演した際、「一方的に私たちを批判した上に、なんとその片山の夫の会社を潰すと公共の電波でおっしゃった」と話し、その後に新幹線で大阪を通った際には乗客にからまれたと打ち明け、涙を滲ませていた。確かに、せいじは前出の番組内で「旦那さんが結構でっかい会社、潰してた…」と発言していたが、それがなぜ恐喝になるのかは不明。ただの聞き間違いだろうが、河本追及の気炎が空回りしている感は否めない。そんな片山を疎ましく思った新幹線の乗客が彼女にいちゃもんをつけた程度のことだ。テレビの生放送で涙を見せられるほどに、片山さつきというのは自意識が強いのだろう。

 そもそも芸人というのは権力の対極にあるのが存在価値のような人々の集まり。理由がどうあれ、芸人仲間が国会議員に追求されているとなれば、援護射撃をしないではいられないに違いない。まして、まるで人気取りのようにしゃしゃり出てきたのが片山のような人物であれば、なおさら黙って利用されるわけにはいかないだろう。河本の件をきっかけに、生活保護の不正受給問題を拡大させて、制度の闇を暴こうという片山にはがんばってもらいたい。ただ、あまりにも目前に迫る総選挙を意識しすぎているのが見え見えなのが玉に瑕。何も泣くことはないだろう。

 実母だけではなく叔母などの親戚縁者数名が生活保護を不正受給していたのではないかという疑惑も浮上している今回の騒動。一部報道によれば、総額1億円以上とも言われているだけに、河本への非難はまだまだ続くだろう。だが、河本を起用しているテレビ各局は、会見を開いて、返還するとまで言っているのだから、という理由でこれまで通りに河本を使うことを明言している。近年顕著になってきた世間とテレビ業界の温度差は、この問題でもますます深まりそうだ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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