馴れ合い『ロンハー』に辟易…… テレビのつまらない理由

テレビ朝日系『ロンドンハーツ』公式サイト

 2月14日、バレンタインデーに放送された『ロンドンハーツ2時間SP』(テレビ朝日系)がどうにもひどかった。PTA的視点からひどいというのではない。彼らのいう「下品」「ばかばかしい」「モラルの欠如」といった批判は、バラエティ番組ならむしろ歓迎すべきものと考える。では、なにがひどかったというと、ずばりその内容である。

 その日『ロンドンハーツ』では、2006年から年に1、2度放送のある名物企画「女性芸能人スポーツ」が特集されていた。もちろんその使い古された企画にも安易さが感じられるが、記者が呆れたのは出演タレント陣のやる気のなさである。ひとり奮闘していたハリセンボンの近藤春菜は別にして、同じ芸人でありながらほとんどの種目を棄権した森三中の村上知子などほとんど発言もせず、なぜ番組に出演したのかわからない。

 熊田曜子や磯山さやかといったアラサーグラドルたちも、芸能界の先輩と後輩に挟まれどこか所在無さ気に淡々と種目をただこなすだけ。乃木坂46という若手アイドルも出ていたが、並み居る先輩たちに圧倒されてか、その存在感は無いに等しい。オアシズの大久保佳代子は相変わらず下品な言動で多少の存在感を示したが、そこに乗るはずの杉田かおるはまるで隠居した老人のように無反応。番組内でつけられた”床上手協会会長”という名はなんだったのだろうか。

 確かに手島優のおっぱいや大島麻衣のカマトトぶりは見応えありだが、大した見所もないまま延々とこれまでと同じパターンを繰り返されると正直辟易する。そんな中、今放送での最大の見所といえば、「やはり」というか、「またか」の国生さゆりのコケだった。

 2007年の放送時にも同番組内の女性芸能人対抗リレーで見事なコケっぷりを披露した国生。その際の印象は、インターハイ出場経験という彼女のプライドからくる真剣さが痛々しいながらも、まだ新鮮さと可愛気があって笑えるものだった。しかし、先日の放送で転んだ国生は笑えない。きっと、それは彼女が第二の旬を過ぎたばかりだからだろう。

 80年代のアイドル時代を終えた国生は90年代に入り長渕剛との不倫報道をきっかけに表舞台からその姿を消した。2000年代に入ると、おニャン子の再結成に連動して徐々にメディアでの露出を再開するも、当時のファンだけが盛り上がる一過性のもの。しかし、2007年、そんな彼女に目をつけ、ドッキリを仕掛けたのがロンドンブーツ1号2号の田村淳だった。そこから彼女の第二の旬が始まったといえる。以降彼女は、昔の芸能界を知るアイドルの生き字引的存在、または大御所アイドルという新しいジャンルを開拓し、活躍してきた。

 しかしすでにその第二の旬も5年前のこと。作家の山田詠美の言葉に「2、3年前ならただのユーズド。でも20年経つとヴィンテージになる」というものがある。まさに2007年当時の国生さゆりはヴィンテージだった。そこに目をつけた淳はさすがといえる。しかし、今の国生はただのユーズド。中古品が多少壊れたって「そんなもんか」と思うのが普通だろう。

 そんな国生にも関わらず、この日の『ロンドンハーツ』は後半30分で「緊急生放送」を組み、彼女の入籍を大々的に発表。同日のバレンタインデーに入籍したという国生は「バレンタイン・キッス」を熱唱した。そして淳からのサプライズプレゼントといって、お決まりのようにロンハー名物の落とし穴に落とされる国生。まるで茶番。苦笑いというより赤面必至である。

 前半、1時間半に渡って流されたスポーツテストの様子が冗長だと感じたのも、この30分に及ぶ茶番が原因な気がしてならない。つまり、もともとの2時間SPでは1時間の企画を2本流す予定だったが、国生入籍の報せを受け、ちょうどバレンタインデーだし生にしようか、でもさすがに1時間の生は厳しいから、前半のVTRを引き伸ばして1.5時間にしよう、という具合。さすがに勘ぐりすぎだろうが、そんな風に考えてしまうほど、この日のロンハーはつまらなかった。

 「Win-Winの関係」という言葉がいつから使われるようになったのかはわからないが、最近のテレビバラエティには、そういった風潮が蔓延っているように思う。つまり、今回のロンハーの例でいえば、生放送での入籍発表で視聴率を上げたい番組側と、番組に恩を売りながら自らの知名度を上げようという国生という関係。一見どちらも得になってめでたしめでたしと言いたいところだが、大事な人々が損をしているのに関係者は気づいていない。そう、視聴者だ。

 確かに「Win-Winの関係」というのは当事者にとって結構なことだろう。しかしそれも言い換えれば「なぁなぁの関係」。やる気のない出演陣のおべんちゃら運動会を見せられるくらいなら、8キロというダイエットを敢行したバービーの「奇跡の一枚」が見たい。二度も旬の過ぎた熟年アイドルより、スポットを当てるべき人物はいるだろう。下品でも、ばかばかしくてもいいから、とにかく内輪だけで盛り上がるのは止めてほしい。それならテレビなんか見なければいいという声も聞こえてきそうだが、それは受け付けない。なぜなら記者はテレビが見たいからだ。もちろん面白いテレビを。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『ロンドンハーツ5』

 
再生工場的な面白さにも限界が…

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