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【テリー・天野のメンズ的映画評 第9回】

稀代の殺人鬼をモチーフに、鬼才が描くエログロバイオレンス!!


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(C)NIKKATSU

 皆さんは93年から95年にかけて起きた、埼玉の連続愛犬家殺人事件をご存知でしょうか?

 熊谷のペットショップを舞台に、この店に関わった人物が次々と失踪。やがてショップの店主夫妻が殺人容疑で逮捕され、後に死刑判決を受けたこの事件。その被害人数や、証拠隠滅のために行われた行為の凄惨さもさることながら、一般市民を震え上がらせ、一部の犯罪マニアをも唸らせたのが、この事件の主犯となったショップの店主Aです。

 何がすごいって、Aが事件の際に語ったとされる発言の数々。

「人間の死は生まれながらにして決まってると言うが、そうじゃない。俺がそいつは今日死ぬと言えば、そいつは今日死ぬ」
「気に入らない奴はみんな透明にしちゃえばいいんだ」
「殺しのオリンピックがあれば、俺は金メダル間違いなし」

 これら強烈なひとことを繰り出したAは、いっさいの証拠も残さぬようにと、殺害した遺体を細かく切り刻み、骨まで灰にして消し去っていったのです。

 惨忍にして用意周到な手口もさることながら、己の目的を果たすためならば、たとえヤクザであっても手にかけるという(悪い意味で)ブレの無さ。不謹慎ではありますが、近年の凶悪殺人犯が「殺すなら誰でもよかった」と供述しながら、弱者のみを手にかける卑劣漢が多い中、いかなる相手であろうと死に至らせる殺人マシーンぶりには驚愕です。まさに日本を代表するシリアルキラーと言ってもいいでしょう。

 そんな彼をモデルにした映画が、この『冷たい熱帯魚』です。

 主人公は吹越満演じる、小さな熱帯魚店の経営者・社本。前妻亡き後、後妻(神楽坂恵)や娘(梶原ひかり)との折り合いも悪く、冷えきった家族関係を抱える男です。そんなある日、彼は娘が起こした万引き事件をきっかけに、大手の熱帯魚店経営者・村田(でんでん)と出会います。そして、陽気で弁も立つ村田に丸め込まれるように、社本はビジネスパートナーとしての依頼を引き受けることに。しかし、村田の持つ"裏の顔"が、やがて彼を恐るべき血と狂気の世界へ引きずり込んでいくのです。

 この残忍にして凶暴な殺人者、村田を演じるのが、今や日本映画に欠かせない名バイプレイヤーのでんでん。スタンダップコメディアンとして『お笑いスター誕生』等で大活躍し、近年は俳優としてお人好しの小市民役を演じることの多かった彼が、本作では稀代の殺人犯をモデルとした、凶暴な殺人マシーンを大胆に演じています。

 その容貌自体が件の犯人を彷彿とさせるだけでなく、ポジティブの塊のような表の顔と、惨忍でドスの利いた犯罪者としての本性の両面を憎々しいまでに演じきる姿は、現実の事件を超えた殺人モンスターとでもいうべきでしょう。そして先述のような名言を吐き、子供のようにはしゃぎながら遺体を切り刻んだかと思えば、欲求不満な社本の妻に襲いかかり、彼女の性の抑圧を解き放っていくなど、その狂気にまみれた姿は、近年の邦画の中でも屈指の怪演です。公開前にも関わらず、某映画誌のベスト男優に選ばれたのも納得と言えるでしょう。

 いっぽう社本を演じる吹越も、冴えない熱帯魚店主から、村田の悪事に嫌々ながらも加担することにより、徐々にその狂気を開花させていきます。吹越もまた「オカルト二人羽織」や「ロボコップ演芸」といった、コメディ芸人として演技者の歩みを始めた役者だけに、同じ轍を踏んできたでんでんとの共演は感慨深いものがあります。

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官能シーンも......。(C)NIKKATSU

 監督は『愛のむきだし』(09)の園子温。実際の事件をベースに、リアルな殺人描写や遺体解体のプロセス(メイクを担当したのは残酷モノの第一人者、西村喜廣!!)を丹念に描きつつ、稀代の"悪のカリスマ"を描き出していきます。しかし、映画は実録物の枠を超え、凶気に憑かれた社本が飽くなき暴走を繰り広げるクライマックスへと向かうのです。最後に放たれる社本の一言、

「生きるってのは......痛いんだよ!!」

 この台詞が、きっと観る者全ての心に突き刺さることでしょう。

 ところで、連続愛犬家殺人に詳しい人ならピンときたかと思いますが、社本もまた村田と同様、同事件に関わった人物がモデルになっているのです。「共犯者」という、その氏が書いたドキュメンタリー本が出版(現在絶版)されており、本作を観るに併せての一読をお勧めします。いかに『冷たい熱帯魚』が事件を忠実に再現しているか。そして作り手が創造の手を加えて映画へと昇華させているか、そのプロセスが解って更に楽しめると思います。そしてフィクションを凌駕した事件と、それを更に凌駕した恐るべきフィクション、改めて両方に衝撃を受けるでしょう。

 最後に!! 『愛のむきだし』で満島ひかりのパンチラを炸裂させていた園監督、今回もエロとバイオレンスのタペストリーを展開させております。

 神楽坂恵演じる、いかにも生活に疲れた感全開な社本の妻が、村田によって再び性に目覚め、徐々に淫靡さを増していく姿も必見ですが、それ以上に淫靡さ、凶暴さを魅せつけてくれるのが、村田の妻を演じた黒沢あすか。夫同様、下着姿で嬉々としながら死体解体に勤しみ、また店に殴り込んで来た被害者遺族に対応する夫を眺め、店員(なぜかフー○ーズ風のホットパンツ&タンクトップ姿)とのレズ行為に耽るなど、そのビッチさは夫以上の曲者ぶりを発揮しており、こうした薄ら寒い官能性も、この映画の存在感を見事に際立たせるのです。お楽しみあれ。
(文=テリー天野)

◆『冷たい熱帯魚』http://www.coldfish.jp/
監督・脚本:園子温
出演:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲ほか
製作年:2010年
劇場:テアトル新宿ほか
公開日:2011年1月29日~
上映時間:146分
配給:日活
※R-18

DVD「愛のむきだし」


満島ひかりcの株を飛躍的に上げた一作

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