【テリー・天野のメンズ的映画評 第8回】

内田有紀×あのアイドルマスター監督が描く10年愛の世界!!

bakamono1213_01.jpgばかもの』©2010「ばかもの」製作委員会

 
 さあ、今回このコラムで紹介するのは内田有紀の主演作『ばかもの』ですよ!! 

 内田さんと言えば92年の鮮烈デビュー以来、歌やグラビア、ドラマにと破竹の勢いで活躍してきたワケですが、2002年の結婚引退でいったん表舞台からは完全に姿を消し、06年に離婚→芸能界復帰後は完全に女優業に専念。以降はバラエティーで見かける機会もグッと減ったものの、相変わらずその美しさは衰えを知らず。最近じゃ『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを開放せよ!』(10)や、浜田雅功主演のドラマ『検事・鬼島平八郎』での女検事役など、女優としての幅をどんどん広げていき、意欲的な活動を続けているのはうれしい限りです。

 そんな内田さんを主演に据えて今回メガホンをとったのが、あの金子修介監督!! 平成ガメラシリーズ三部作や、大ヒットも記憶に新しい『デスノート』が有名だけど、その一方で「アイドル映画の達人」として、深津絵里主演の『1999年の夏休み』や中山美穂・宮沢りえ主演の『どっちにするの。』、佐伯日菜子の『毎日が夏休み』等、アイドル映画史に残る名作・怪作を数多く送り出しました。さらにはそのアイドル・歌謡曲好きが高じ、1999年には『失われた歌謡曲』なる著作まで出すという凝りっぷり。

 そんな監督が自ら内田さんを指名し、なおかつ直木賞作家、絲山秋子の純文学を映像化するというのだから、期待に拍車がかかります。

 成宮寛貴演じる大学生・秀成が、あるきっかけで出会うのが内田さん演じる額子。十代のやりたい盛りの秀成は、年上で経験豊富な彼女の手ほどきを受け、たちまちめくるめく愛欲の日々に溺れていきます。

 ところがある日、突然額子の方から別れを切り出されてしまう。しかもかなり強引な手段で!!

 それ以降、彼は何をやっても空虚さだけが残り、アルコール漬けの日々を過ごすようになるのです。その結果、廃人一歩手前まで行き着き、いろいろなものを失ってしまいます。

 しかし、ふとしたきっかけで再会した額子の母(古手川祐子)の助けもあり、なんとかアル中生活から脱却し、社会復帰に向けての一歩を踏み出そうとするのです。

 そして、額子の母から、彼女の意外な消息を聞かされることに……。

 ストーリーは成宮クン演じる秀成の、10年に渡る人生流転を描きます。彼にとって額子の存在は、『市民ケーン』における新聞王ケーンや、『犬神家の一族』における犬神佐兵衛翁のごとく、自身の人生につきまとっている。そんな二人の破滅と再生の日々を、監督は2000年代の社会情勢を交えながら淡々と描き出していくのです。これまでエンタテインメント指向の高かった金子作品としては、かなり異質ではあるものの、以前に筆者が監督にインタビューした際「宮尾登美子先生のような純文学的なものもやってみたい」と意欲的に答えていたこともあり、この方向性に向かうことは監督として必然的だったのではないでしょうか。

 とは言え、”アイドルマスター”としての意欲が枯れているかといえば、答えはNO!!

 既に三十路も半ばを過ぎたというのに、相変わらずデビュー当時の凛々しさと愛くるしさを保つ内田さんの可愛さを、とにかく上手く引き出す金子演出。作品終盤ではとある事情で老け込んでしまい、まるで白髪の老女の如き様相になってしまう彼女ですら、魅力的に見せていくのです。さすが監督、本当なら『CATS’EYE』(97)は自分で監督したかったと言うだけに、彼女の魅力を全て熟知したかの如きカットの数々は必見であります。

 さらに原作を読んだ人なら誰もが期待するであろうセックス描写に関しても、直接的なカットが無いにも関わらず、かなりのエロス爆発ぶり!! 特に、クライマックスで額子が秀成に脇毛を剃ってもらうシーンは、そのシチュエーションだけで興奮すること間違いナシ!! ここら辺はロマンポルノで鍛え上げられた監督の面目躍如といったところでしょう。ああ、俺も内田さんの脇毛剃ってみてぇ!!

 文学作品としての叙情性を決して失うことなく、仄かなエロス、そしてなによりも内田有紀の女優としての演技力、そして彼女の、かつてのアイドル時代の輝きや愛くるしさを余すところなく表現した『ばかもの』。かつて彼女が好きだった人も、今だからこそ内田有紀という存在に触れたいという人も必見の一本です。

 しかし、額子の母役を演じた小手川祐子さんも、『細雪』(83)の愛くるしい娘役から遠く離れて、すっかり老け役が似合う女優になっちゃったなぁ。思えば『細雪』の市川崑監督も、ある意味元祖アイドルマスターだった人だよな、岸恵子とかね(笑)。

◆『ばかもの』http://www.bakamono.jp/
監督:金子修介
原作:絲山秋子(新潮社刊)
出演:成宮寛貴、内田有紀、白石美帆、中村ゆり、浅田美代子、池内博之、古手川祐子ほか
製作年:2010年
劇場:有楽町スバル座、シネマート新宿ほか
公開日:2010年12月18日(土)~
上映時間:120分
配給:ゴー・シネマ

 

1999年の夏休み 
 
 

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