【テリー・天野のメンズ的映画評 第6回】

オスカー監督作に主演したハードコアポルノ女優の●●作!!

 AV女優、あるいはAV出身の女優がゴールデンのバラエティや子ども向けの特撮ヒーロー物に出演することのある日本と違い、アメリカじゃポルノ女優が一般向けのテレビ番組や映画に出演するのは非常に稀なこと。このジャンルに足を踏み入れたら「タレントへの足がかりにアダルト出ちゃいました」なんて戯言は通用せず、一生このジャンルと添い遂げるか、あるいは徹底的にポルノ女優だった過去を封印し、心機一転して頑張るかの「二者択一」を迫られるのが既パターンでした。

 そりゃ中にはトレイシー・ローズのように(ややB級志向ながら)ポルノ女優として大成しながら、その過去を隠さずに一般向けでも活躍したケースもありますが、彼女の場合、悪名高い”逆年齢詐称事件”(18歳未満にも関わらずポルノに出演してたことがバレて、多数の関係者が逮捕された事件)で、逆にポルノ業界に戻れなくなってしまったワケですが。

 しかし今、現役のハードコアポルノ女優であるにも関わらず、カンヌやオスカーも制した超大物監督の作品に出演した女優が話題になってます。

 その女優の名はサーシャ・グレイ。2007年に18歳でポルノデビューして以来、180本以上の作品に出演して数多くのアダルト業界の賞を獲得。ちなみに海外のアレな動画サイトで彼女の名前を検索すると、まぁ出てくる出てくる! サーシャがデカマラ男優二人にマ●コとア●ル、二穴にズボズボと二本差しされて獣の咆哮をあげたり、ア●ルに異物挿入されてはち切れんばかりにケツ穴を拡張させてる姿のアレコレが!(笑) 濃い目の顔やら太めのボディが多いアチラのポルノ女優の中にあって、比較的日本人ウケしそうな整った顔立ちに控えめなボディは、洋ピンに抵抗のある人でもすんなり入り込めそうな雰囲気。なのにいろいろハードなプレイに挑戦していて、あまりにも素敵すぎ!!

 しかし、そんな「現在最高のポルノ女優」の栄誉に留まらず、最近ではファッションブランド等のモデルにも進出し、動物の産児制限キャンペーンの広告にヌード姿で登場するなど社会的活動もこなす、真の意味でスーパースターなのです。

 そんな彼女を主演に選んだ監督が、スティーブン・ソダーバーグ。『セックスと嘘とビデオテープ』(89年)で最年少パルム・ドール監督に選ばれる衝撃デビューを果たし、2000年には『トラフィック』と『エリン・ブロコビッチ』でアカデミー賞最優秀監督賞を含む全米の映画賞を総なめ。そして『オーシャンズ11』(01年)を始めとする”オーシャンズ”3部作では全世界で興収10億ドル以上の大ヒットを記録するなど、今や実力・人気共に世界でもトップクラス。超大作の合間にパーソナルな小品を意欲的に手がけ、メジャーとインディペンデントを行き来するフットワークの軽さも魅力の一つとして讃えられる彼が、サーシャを主演に撮ったのが本作『ガールフレンド・エクスペリエンス』。

 この映画でサーシャが演じるのは、マンハッタンで高級エスコート・ガール(いわゆるコールガール)を営む女性・チェルシー。ただ単にベッドを共にするだけではなく、富裕層の顧客相手に一時だけの”理想の恋人”を演じ、そのための努力を一切惜しまない彼女の5日間の”日常”をモチーフにしています。そこには彼女の仕事に理解を持ちつつも、自分のビジネスに行き詰まりを感じ、関係がギクシャクしつつある恋人の存在や、数多くの顧客たちとの出会いや別れ、そしてビジネスの発展のために悪戦苦闘する彼女の姿が克明に描かれるのです。

 こうした彼女の生活の背景には、いわゆる”リーマン・ショック”を発端とする不景気が影を落としています。そして大統領選ではバラク・オバマが史上初の黒人大統領に選ばれるかどうかに国民の注目が集まっていた時期であり、そうした情勢がアドリフ演技を用いた演技者たちの台詞の端々に出てきて、映画はリアルな時代性をも映し出すのです。自ら撮影も兼ねるソダーバーグのカメラワークも実録タッチで、その生々しさをより一層高めています。

 こうした激動の時代にあって、チェルシーが壁にぶち当たりながらも逞しく生き抜いていく姿がより強く観る者に伝わってきます。残念ながらサーシャの、ポルノスターとしての本領は封印されてますが、若干22歳にして業界で成功を収めた彼女ならではの強かさは映画にしっかり反映されています。そして数多いNYのオシャレスポットを背にしても全く見劣りしない彼女の存在感は、一般作の女優としての今後を期待できるオーラにあふれています。

 でも最近は自らポルノの製作会社を立ち上げるなど、そちら方面でも活動もまだまだ頻繁。これまでアメリカで険しくそびえ立っていた、ポルノと一般作の壁を取り壊せるかどうか、彼女の活動には目が離せません。

 ちなみに彼女のAVの日本版を多く発売している桃太郎映像では、本作の公開を記念してか、現在HP上で彼女の特集を展開中。どうでもいいけど『ガールフレンド~』の紹介まで載せといて、いっしょに掲載されてるAVのタイトルが『尻穴娘。』ってどうなんだ。もしかしてソダーバーグがプロデュースした『シリアナ』(05年)に引っ掛けたのか?(笑)
(文=テリー天野)

◆『ガールフレンド・エクスペリエンス
監督・撮影・編集:スティーブン・ソダーバーグ/出演:サーシャ・グレイ、クリス・
サントス、フィリップ・アイタン、グレン・ケニー
製作年:2009年
劇場:シネマライズ
公開日:2010年7月3日(土)~公開中
上映時間:77分
配給:東北新社

 

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