【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第7回】

エロくないのにエロく聴こえる!! 聴けば聴くほど頭が悪くなる名曲誕生

cpnf.jpg「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」(ポニーキャニオン)

 2010年、私が今年初めて聴いた未知の楽曲がこの「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」(ポニーキャニオン)だった。フジテレビで年越しに中継された『ジャニーズカウントダウンライブ』に続いて生放送された『キャンパスナイトフジ』のオープニングだったのだが、「虎年だから」か虎同士が交尾している写真がテレビ画面に大写しになり、キャンパスナイターズと呼ばれる女子大生たちがこの楽曲を歌いだしたのだ。

 「まんごすちん ちんすこう / 負けないで! うなぎ パイパイパイ♪」。冒頭からしてこの歌詞である。唖然とした。なんだこれは? さらに番組では、バランスボールに女の子が乗って天気予報をしたり、必然性のないマラソン中継をしたりしていた。あまりにもバブル時代臭が強烈で、逆に「これだけやれれば日本は大丈夫なんじゃない?」と、元旦から友人と話したものだ。

 「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」は当初着うたのみの配信だったが、反響が大きかったのか満を持して3月17日にポニーキャニオンからCDで発売された。だが……『キャンパスナイトフジ』自体が3月20日に終了しちゃったよ! 遅いよ! ともかく、27人からなるキャンパスナイターズのCDがこうして発売されたからには、購入せざるをえない。

 この番組からバブル時代の臭いがしていたのも、往年の『オールナイトフジ』の系譜を受け継ぐ番組なので必然だ。ただし違うのは、同じ現役女子大生を起用していても、『オールナイトフジ』のオールナイターズは素人、『キャンパスナイトフジ』のキャンパスナイターズはタレント、という点だ。たとえば、キャンパスナイターズのフロント・メンバーである吉木りさはすでにCD「夜桜お七」(徳間ジャパンコミュニケーションズ)をリリースしている。よく彼女たちの事務所が許したな……という意味でも「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」には感心する。

 「なんきんたますだれ / つゆだく おいなり 元気を出して!」。エロく聴こえる単語を並べて、そこに何の脈絡もなくポジティヴな言葉を突っ込んで体裁を整えている歌詞は、なんとキャンパスナイターズ自身が作詞。はっきり言って、聴けば聴くほど頭が悪くなる。それがたまらなく気持ちいい。すべての難点を気にさせない、一線を突き抜けたエネルギーがここにはある。「エロくない」と言っている割に振り付けは胸や股を強調した部分もあり、ややエロ。それも付属のDVDで堪能できる。ビデオ・クリップも振り付けビデオも、深夜帯テレビの安っぽさを過剰に強調したかのような映像だ。

 作編曲はS.P.E.O。一部ジャニーズファンからは、「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」は、KAT-TUNの「Will Be All Right」(J-One Records/「Real Face」のカップリング曲)とメロディーが似ているとの指摘もあるのだが、このコード進行でベタな譜割りをするとこうなるのかな、とも考えられるし、いい意味でベタを突き詰めた感がある(ちなみにカップリング曲である「ばいならまたね」作曲の宮崎歩は、当のKAT-TUNにも楽曲提供をしている)。その割に、冒頭からバグパイプを模したような音が鳴り響き、後半ではラップ・パートも飛び出す意外性もあるから驚く。歌詞も含めた、ベタさと凝り方の絶妙なバランスが「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」に中毒性をもたらしている。ああ、どんどん頭が悪くなる……。その結果、根拠不明の多幸感を聴く者にもたらしてくれるのだ。

 最終回では、オープニングで「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」を歌い踊りながら泣いている女の子がいた。この楽曲を歌いながら泣くなんて……と思いつつ、それがむしろ感動的だった。この楽曲には、テレビ番組の企画だからこそ生みだされた、馬鹿馬鹿しいたくましさがある。オリコン週間シングルランキング16位という数字は微妙だったが……。ともあれ、「PANDA 1/2」として音楽活動もする藤岡みなみをはじめ、今後のキャンパスナイターズの活躍に期待したい。毎週「エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~」をテレビで歌っていたんだから、あとは何でもできるよ!

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