約束の5分前に到着した筆者は、胸をドキドキさせながら彼女の到着を待つ。
そして数分後。それらしき女性がこちらに真っすぐ近づいてくるのを発見した。
で、デカっ!
周囲の他の女性より頭ひとつ分くらい背が高い。肩幅もそれなりにガッチリしていて、南海キャンディーズの「しず」チャンみたいな体型だ。
身長171センチの筆者が思わずたじろいでしまった。
マスクのせいで顔がよく分からなかったが、お世辞にもセクシーだとは言えないタイプだ。
「あ、もしかしてショーイチさんですか?」
目と目が合った瞬間、ホノカちゃんに先手を取られてしまった。
見た目とは不釣り合いな明るい声で話しかけられ、少しばかり拍子抜けしてしまう。
こうなったら逃げるわけにはいかない。
「う、うん」
「ホノカです。今日はよろしくお願いします」
「あ、うん。こ、こちらこそよろしくね」
しかし、ふたりとも次の言葉が出てこなかった。数秒ほどの沈黙がとても長く感じた。
回れ右して駆け出したい気持ちを抑え込む。顔パスするにしろ、ホテルに直行するにしろ、こちらがリードしなければ話が始まらない。
覚悟を決め、マスクをズラしてこちらの顔を彼女に見せる。
「実物の俺はこんな感じだけど、大丈夫そうかな?」
「え? どういうことですか?」
「ほら、写真と違うとか思ってたら、遠慮しないで断ってもらっていいんだからね」
「や、やだ。そんなことしませんよ」
「本当に? 無理してない?」
「はい! 写真の印象通りとっても優しそうに見えるから安心しました」
「あ、ありがとう」
優しそうに見えるとまで言われてしまったら、もう後には引けない。こうなったら最後の最後まで優しい男を演じるしかない。
「それじゃあ、このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてホテル街に向かって歩き始めることになった。
その道中、軽いノリで聞いてみることにした。
「ホノカちゃんは旦那さんとエッチしてないのかな?」
「え? そ、それなりにしてるつもりです」
「へ、へぇ、そうなんだ。どれくらいのペースエッチしてるの?」
「だいたい月に1、2回くらいですかね」
「でも気持ち良さが分からないって書いてたよね?」
「はい、そうなんですよ。イクって感じが全然分からなくて…」
「それであのサイトに書き込んだんだ?」
「はい! こうなったら少しくらい冒険してみようかなって」
「なるほどね。でも俺はテクニシャンってわけじゃないから、ホノカちゃんの要望に応えられるかどうか分からないよ」
「はい。私もいきなりそうなれるって思ってませんから」
「へ? そうなんだ」
「でもこのまま何も行動しないのは嫌だなって思ったんです」
「なるほどね。その気持ちなんとなく分かるよ」
そうこうしているうちに目的のラブホテルに到着。110分で3,300円という安めのところだ。