セックス体験談|恋人がいる寂しさ#4「男と女の欲望ゲーム」

隔たりセックスコラム:恋人がいる寂しさ#4「男と女の欲望ゲーム」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


「恋人がいる寂しさ#1#2#3

 人混みの中から知った顔を見つけると安心する。それが、可愛い子ならなおさらだ。

 

「隔たりくん、ごめん! 待ったよね? なかなか友達と離れられなくて」

 

 土曜日の新宿東口の地下改札前は、たくさんの人でごちゃごちゃしている。

 

「いやいや。こっちこそごめんね。友達と遊ぶ日に誘っちゃって」

「ううん、大丈夫だよ。そんなに遅くまで遊ぶ予定じゃなかったし」

「そっか。それじゃあ、行こう」

 

 土曜日だからか、スーツを着たビジネスマンよりも、新宿に遊びに来た若者の方が多い気がする。前回詩織に会った時は平日で、僕はスーツを着ていたが、今日は休みなので私服だ。

 

「そういえば、隔たりくんの私服、初めて見たかも」

「あれ、そうだっけ」

「うん。スーツしか見たことなかった」

 

 詩織は今日も私服姿だった。

 

「相変わらずスタイルいいね」

「え、本当?」

「うん。俺は詩織の私服姿、好きだな」

「えー。恥ずかしいけど、嬉しい」

 

 詩織は白のロンTに黒のガーディガンを羽織り、黒のスキニーパンツを履いていた。ロングヘアーの大人っぽい雰囲気に合っている。ピチッとしたパンツから浮かび上がる脚は相変わらず細く、スラッとしていてモデルのようだった。

 階段を登って外へ出ると、そこにもたくさんの人がいて、みんな楽しそうだった。すでに空は暗くなっているが、新宿の街は夜の境目を告げまいと光り輝いている。雰囲気が明るいから、もう22時を過ぎているということを忘れそうだった。

 前回、詩織と居酒屋で酒を飲み、ホテルでキスをした。それから僕らはずっとラインで連絡を取り合った。僕は早くあの日の続きがしたい、詩織に会いたいと思っていた。次いつ会えるのか。そうラインで聞くと、次の休みは土曜日で友達と遊ぶ予定がある、と詩織は教えてくれた。

 会えないだろうなと思ったが、もし友達と解散後に会うことができれば、またホテルに行けるかもしれない。そう考えた僕は、友達と遊び終わった後に会えないか、僕もその日に予定はあるが新宿の近くだから会えそうだと、詩織に告げた。すると、詩織は簡単に「いいよ」と返信をくれたのだった。

 

「こんなにすぐにまた会えると思ってなかったから嬉しいよ」

「そうだね、3日ぶりだっけ?」

「うん、3日ぶり。あの日、何したか覚えてる?」

 

 僕は意地悪に聞いた。

 

「覚えてるよ。一緒にお酒飲んだ」

「その後は?」

「もー。恥ずかしいからやめてよ」

 

 会話のやり取りが自然になっている。詩織と会うのはこれで三回目だが、すでに会話のテンポが心地良かった。可愛い子と話すときは緊張してしまうが、詩織にはもうそれがない。互いに分かり合えているような、そんな安心感があった。

 それは、僕らがキスをしたからだろうか。

 

「でもさ、初めて会ってから次会うまでに一年半かかったでしょ? だから、こんなにまた早く会えるのがめっちゃ嬉しいんだよね」

「えー何それ。嬉しい」

 

 出会った当時の話を懐かしみながら、新宿の街を歩く。

 

「そういえば、どこ向かってるの?」

 

 ふと、不思議そうに詩織が訪ねてきた。

 

「え、ホテル」

 

 僕がふざけながら真顔で言うと、

 

「えーそれはダメだって」

 

 と詩織は笑った。

 

「でもこないだ行ったじゃん」

「そうだけど」

 

 困る詩織が可愛らしい。もっと意地悪をしたくなってしまう。

 

「居酒屋とかにしない?」

「居酒屋?」

「うん。そこでゆっくり話すの」

「でも、ホテルでもゆっくり話せるよ」

 

 「もう~」と詩織は頬を膨らまし、怒ったような困ったような表情を見せた。その表情がアイドルみたいに可愛くて、僕の心を射抜いた。詩織には彼氏がいる。そして、僕には彼女がいる。でもこの空気感は、お互いの恋人以上に恋人だった。

 

「ごめんごめん。そしたら、カラオケ行かない?」

「カラオケ?」

「うん。久しぶりに行きたい気分なんだ」

 

 カラオケいいね、と詩織は笑顔になった。そうして僕らは新宿歌舞伎町の中にあるカラオケ屋さんに入った。

 

「カラオケ来るの久しぶりかも」

「そうなんだ。友達とは?」

「あんまり行ってないかな」

「そしたら、先、歌いたいの歌っていいよ」

「えー恥ずかしいよ。隔たりくん歌って歌って」

 

 詩織が曲を入れる機械を僕に渡してくる。

 

「隔たりくんの歌聴くの楽しみだな」

 

 不意な詩織の呟きに、僕はドキドキした。平静を装い、曲を入れる。

 

 詩織も知っている曲がいいだろうと、最近流行っていた映画の主題歌を歌った。曲名が画面に映し出されると、詩織は「これ知ってる」と笑い、曲中、何度も「やっぱりいい曲だね」と呟いていた。

 

 歌い終わってソファに座ると、詩織がこちらを向いて拍手をしてくれた。恥ずかしくてペコリと頭を下げ、ウーロン茶を飲む。

 

「すごい。上手」

 

 その詩織の声はいつもよりも少し高かった。テンションが上がっていることが伝わってくる。

 

「もっと歌ってほしい」

 

 詩織の褒め言葉に調子を良くした僕は、そのあと何曲か続けて歌った。どんな曲も詩織は楽しそうに聞いてくれた。見た目はモデルのように綺麗めだが、自分のことをよく話したり、音楽を素直に楽しんだりと可愛らしい一面を持っている。ひねくれていない。その純粋さが美しいと思った。

 

「隔たりくん本当に上手だね」

 

 何曲か歌い終わり、僕はソファに座って渇いた喉を潤すために再びウーロン茶を飲んだ。そして横を見ると、そこには笑顔の詩織がいた。

 

 僕は何も言わずに顔を近づけ、自然に唇を重ねた。驚いたのか、詩織の唇は動かない。僕は舌を差し出し、詩織の唇をなぞると、ウーロン茶の独特な香りが漂った。僕は舌を詩織の唇の中へと入れる。詩織の唇はゆっくりと開き、僕の舌を受け入れた。

 舌と舌が優しく絡まり合う。先ほどまで歌っていた僕の口は、今、詩織の口の中で踊っている。画面にエンドレスで流れるアーティスト紹介の映像の音が響いているはずなのに、部屋には静けさが漂っていた。

 ねっとりと、まったりと、舌を味わい合う。詩織も積極的に舌を動かしてきてくれた。僕らはまた、キスをしている。カラオケを素直に楽しむ純粋さを持っている詩織は、彼氏がいるのに、彼氏ではない僕とキスをしている。

 それは純粋さからかけ離れた不純な行為であるが、逆に言えば、詩織は純粋だからこそ、僕のキスを受け入れてくれたとも言える。詩織は今の感情に純粋なのだ。話したいから話す、楽しいから楽しむ、寂しいから寂しい、キスをしたいからキスをする。そこには打算も駆け引きもない。純粋さ、素直さしか残っていない。

 

「詩織。キスしたかったの?」

 

 僕は唇を離し、尋ねた。詩織は拗ねたような表情を見せる。やっぱり素直だな、と思った。

 素直さや純粋さは美しい。でもそれがいつだって、正しい行動に繋がるとは限らない。

 

「隔たりくんズルい…」

 

 ズルいと答えたということは、詩織もキスをしたかったということだ。僕にはその返答の方が「ズルい」としか思えなかった。可愛い。

 僕は再び詩織にキスをしようと顔を近づけた。すると詩織は自然に目を瞑り、唇をこちらに差し出してきた。やっぱりキスしたいんだな、と愛おしさがこみ上げてくる。僕は詩織の頭の後ろに手を回し、抱きしめるようにキスをした。

 そこから部屋を出るまで、僕らは一度も歌わなかった。「ちゅ」と可愛らしい音を奏でるだけだった。僕が服の上から胸を触った時、詩織はクネクネと体をかすかに踊らせた。僕の下半身も少しづつ大きくなった。

 唇を離すと詩織と目があった。彼女の瞳は潤っているように見え、真っ暗なカラオケボックスの中で輝いていた。ああダメだ、と僕は諦める。こんな瞳をされてしまったら、帰りたくなくなるじゃないか。本気でホテルに行きたくなるじゃないか。

 

「詩織」

「ん?」

「歌う?」

「でも、もう出る時間じゃない?」

 

 詩織が自分の携帯の電源を入れた。そこには23時15分と記されてあった。

 

「ここじゃなくて、違うところで」

「え、また違うカラオケ行くの?」

 

 僕は詩織の手を取る。そしてズボンの上から大きくなったモノを触らせた。

 

「このマイクで歌ってほしい」

 

 その言葉を聞くと、トロンとしていた詩織の表情が柔らかくなった。

 

「何言ってんのもう…バカじゃん」

「バカだもん」

「いやいやいや」

「ごめん、冗談っぽく言ったけど、割と本気だよ」

 

 僕は真剣な眼差しで詩織を見つめ、そして唇を重ねた。ズルいと言われるだろうな、と思い唇を離すと、案の定、詩織はまた拗ねた表情で「ズルい…」と呟いた。

 

「そしたら行こうか」

 

 僕は詩織の手を握り、伝票を持って部屋を出た。受付で会計を済まし、外へ出る。もうすぐ0時が近づいているのに、歌舞伎町はきらびやかに光っていた。まだ夜は終わらせない、そんな風に僕の背中を押してくれているようだった。

 

 詩織の手を握ったまま、僕はホテル街へと歩き始める。

 

「え、本当に行くの?」

 

 詩織が慌てたように聞いてくる。

 

「行くよ」

「ちょっと待って」

「ごめん、もう待てない」

「本当に?」

「本当だよ」

「そしたら…」

 

 手を握っている僕の腕を詩織は反対の手で掴み、歩みを止めさせた。僕は詩織の方を向く。詩織は真剣な眼差しで何かを訴えるように僕を見つめた。

 

「お願いがあるの」

「お願い?」

 

 詩織は少し俯いて息を吐いた後、覚悟を決めたようにこう言った。

 

「行くなら、前みたいなボロいホテルじゃなくて、もっと綺麗なところがいい。それなら、行ってもいい」

 

 素直に自分の要望を伝えてくれるのが本当に嬉しい。僕は思わず詩織を抱きしめた。

 

 今付き合っている彼女は想いを素直に言葉で伝えてくれない。私は不機嫌だ、ということを態度でアピールしてくるだけだ。僕はそんな態度を見せる彼女をまた怒らせてしまうのではないかと怯え、どう自分の気持ちを伝えればいいのか分からなくなっていた。

 僕と彼女はもう、素直に想いを伝え合うことができていない。もっと優しくしてほしいとも、気づいてほしいとも、セックスしたいとも、何もかも本音を伝えられていない。交わす言葉は、駆け引きをするような、本音ではない言葉だ。それがしんどかった。

 今の詩織のように、不機嫌にならず想いを伝え合えたら、どんなに幸せなことだろうか。詩織と付き合った方がうまくいくのではないか。そんな想像が頭をかすめる。

 

「わかった。教えてくれてありがとうね。そしたら今日は、綺麗なところに行こう」

 

 詩織の望み通り、値段が高めの綺麗なホテルに入った。時間はすでに23時半を過ぎている。休憩を選択しても、もう終電には間に合わない。僕は詩織に確認せず、当たり前のように宿泊のボタンを押した。

 受付でお金を支払い鍵を受け取る。そのまま言葉を交わさず、エレベーターに乗った。

 エレベーターで詩織と二人きりになる。詩織との初めてのお泊まりだ。男女が一緒のラブホテルに泊まったら、そういうことを期待しないわけにはいかない。前回よりも、詩織との関係をより深くできるのだろうか。その先の期待に胸が膨らんでしまう。

 エレベーターを降り、部屋に入る。天井にはシャンデリアのような照明があり、ベットにはお城に住んでいるお姫様のベッドみたいに透明なカーテンが広がっていた。まるで小さなスイートルームだった。

 

「わあ、めっちゃ可愛い」

 

 詩織は部屋の中を見て、喜びの声をあげた。可愛らしい装飾で喜ぶのは、詩織もやっぱり女の子なんだなと思った。僕は少し高級な皮で出来ていそうな茶色のソファに腰を下ろす。宿泊なので、当たり前だが休憩で入るより値段が高くなる。

 そして、今日は土曜日で、ホテル自体のグレードも高い。正直、ラブホテルでこんなに高い値段を払ったのは初めてだった。

 でも、詩織の喜び方を見たら、そんな気持ちは吹き飛んでしまう。そして詩織とセックスできるのであれば、その値段すら安いと思うのだろう。

 

「お風呂もめっちゃキレイ」

 

 詩織の声を聞き、僕はソファから腰を上げて、浴室へ向かった。詩織のリアクション通り、浴室は広く、浴槽も足が伸ばせるほど大きかった。

 

「めっちゃ広いね」

「ね! ここめっちゃいい。気に入った」

「ほんと? それなら良かった」

「ああ、家のお風呂がこんな感じだったらな」

「それは最高だね。今日泊まりだし、このお風呂入りなよ」

「うん。そうだね」

 

 詩織は嬉しそうに笑い、洗面所のアメニティを漁り始めた。泊まりという言葉を初めて出したのに、詩織は特にリアクションを見せなかった。もう泊まりという事実を受け入れている。詩織は何を思っているのだろうか。彼氏ではない僕とラブホテルに泊まるということを。

 

「そういえばさ、彼氏とはラブホきたことないの?」

 

 ふと気になって聞くと、詩織は備え付けの洗顔料を眺めながら答えた。

 

「来たことない。こないだ、隔たりくんと来たのが初めてだよ」

 

 ここにあるのって持って帰って良いのかなと、詩織はこちらを振り向いた。

 「いいんじゃないかな」と僕は答える。「彼氏にバレないようにね」と付け足すと、「あ、それならやめておこうかな」と詩織は手に持っていたアメニティを置いた。

 イケないことをしているんだなという自覚が、詩織にもあるのだなと思った。

 そして、浮気という新たな刺激を楽しんでいるのかもしない、とも思った。

 

 僕は後ろから詩織を抱きしめた。名前の分からない、甘い香水の匂いが香る。長い髪が僕の頬を撫で、抱きしめた腕の上に、詩織は手を添えた。

 僕は後ろから詩織の頬にキスをする。それに誘われるように詩織の顔がこちらを向いた。詩織の目は僕の唇を捉えている。僕らは同じタイミングでかすかに口を開き、食べるように唇を重ねた。

 キスをしている姿が鏡に映っている。そこにはキスを欲しがっている詩織がいた。その姿に僕は興奮する。決して僕だけではない。詩織も僕とキスをしたいんだ。付き合う前にお互い両想いであることに気づいた恋愛初期のような喜びが、胸に広がっていく。

 僕は後ろから両手で詩織の胸を揉んだ。柔らかな感触とブラの硬さが同時に手に伝わってくる。詩織は感じたのか、僕の舌を吸い、体をムズムズ動かし始めた。

 詩織のお尻が自然と僕の下半身を撫でる。ズボンの中に隠されたモノはどんどん大きくなっていく。興奮した僕は意図的に下半身を詩織のお尻に擦った。

 「はぁはぁ」と互いの呼吸が荒くなる。興奮が止まらない。僕は詩織のロンTの中に右手を入れて、詩織の左胸をブラの上から触った。

 詩織は僕の手を抑えるようと、唇を一度離したが、僕が「キス」と言うと抵抗をやめ、再び唇を重ねてくれた。

 僕はブラの中に親指を入れ、乳首を撫でた。「あっ」と詩織の口から喘ぎ声が漏れた。僕は左手を回して詩織の左頬に手を当て、その口をキスで塞いだ。

 そのまま右の親指で乳首を撫で続ける。みるみると乳首が勃ち始めた。同時に詩織の口からどんどん喘ぎ声が漏れていき、呼吸が乱れ始める。あからさまに詩織の体が興奮しているのが分かった。もう止められない。

 僕はキスをやめ、詩織の手を取り、ベッドへと移動した。そして詩織を押し倒し、覆いかぶさるようにキスをした。再び手を服の中に入れて、今度はブラを少し下にずらし、人差し指で乳首を撫でた。前回は直接胸を触ることを詩織は拒んだが、今日は拒まなかった。

 詩織も僕の首の後ろに手を回し、呼吸を荒くしながら舌を動かしている。彼女も興奮していた。

 僕はブラの中に手を入れて詩織の両方の胸を交互に触った。肌触りが良く、柔らかい。胸から手のひらに詩織の体温が伝わってくる。彼女の胸とは全く異なる触り心地だった。詩織の胸は彼女の胸よりも大きくない。それでも、僕は今、彼女の胸よりも、詩織の胸をこれからも触り続けたいと思った。胸は大きさではないのだ。

 胸を触っていると、詩織が僕の首の後ろに回していた手をほどき、右手でズボンの上からモノを撫で始めた。想像外の詩織の行動に、僕のモノはさらに硬くなる。反り上がったモノの裏筋を詩織はスリスリと撫でた。一度しゃぶったことがあるから、もう触ることに抵抗がないのだろう。一度口に含み愛でてたモノ。詩織との関係性の境界線が滲んでいく。

 

「詩織、舐めて欲しい」

 

 耳元で囁くと、詩織は何も言わずコクリと頷いた。

 

 起き上がって体勢を変え、詩織が僕の足の間に入った。そして、ゆっくりとズボンとパンツを脱がしていく。硬く大きくなったモノがあらわになった。二度目の対面だからか、それを見ても詩織は何も言わない。優しく手で撫でた後、当たり前というふうにモノを口に含んだ。

 僕の体から生えている、他の部位とはあからさまに違う、歪に飛び出ているモノ。それが口の中、詩織の空洞に入っている。挿入ではなくても、その事実が僕と詩織が繋がっているという錯覚に近づけてくれる。

 モノが詩織の口の中を出たり入ったりするたびに、もっともっと繋がりたいという欲求が膨らんでいく。これが「好き」という気持ちなのだろうか。それともただの「性欲」なのだろうか。僕の詩織に向いている気持ちが分からなくなっていく。感覚が、世界が、ぼやけていく。

 「詩織」と呼ぶと、詩織はモノから口を離して顔を上げた。唇が唾液で光っている。僕は両手で詩織の両頬を包み、さっきまで自分のモノをしゃぶってくれていた唇に、口づけをした。そして、舌を差し入れ、さっきまでモノを舐めていた詩織の舌に絡めていく。

 激しく舌が絡まり合う。

 口と口の隙間から吐息が漏れ、唾液が垂れる。

 こんなキスを交わす僕らは、一体どんな関係なのだろう。就活仲間、友達、セフレ、恋人候補。どれもしっくりこない不思議な関係。その不思議さ、曖昧さが、沼の奥底へと引きずりこんでいく。もう戻れない。

 僕も詩織の下半身に手を伸ばした。無意識だった。このぼやけた境界線の中、僕の感覚もぼやけていた。もっともっと詩織に溺れたい。この曖昧で危うい関係に溺れていたい。僕の手は誘われるように自然と伸びていく。

 しかし、詩織はそれを拒んだ。僕の手を握り、抑えた。

 僕と詩織の境界線がまた、くっきりと浮かび上がっていく。

 

「ダメ…」

 

 詩織はか細い声でそう言った。

 けれども僕は止まれなかった。ダメ、と言われても、触りたい、という想いが勝る。僕は再び詩織の下半身に手を伸ばした。

 

「ダメなの…」

 

 詩織は僕の手を抑え、そして手が股に入らないように足を堅く閉じた。

 僕は体を起き上がらせる。

 詩織はベッドの上で、真っ直ぐと伸びるように体を硬直させていた。

 顔を横に向け、髪の毛が横顔を隠している。決して大事な部分には触れさせない。一線を越えさせない。その姿は、僕に彼氏には勝てないのだという残酷な現実を突きつけた。突きつけられたはずなのに、僕は醜くも、そのベッドに埋もれそうな詩織のことを美しいと思った。

 

「ごめん…分かったって」

 

 諦めと悲しさが胸を支配する。ここで無理やり足を開かせ、ズボンを脱がし、下半身を触ったとしても、詩織を傷つけてしまうだけだ。臆病者の僕にはそんなことはできない。誰かを傷つけてまで、僕はセックスをしたいとは思えない。

 

「詩織、ごめんね」

 

 僕は詩織の頬に被さった髪の毛にキスをした。詩織は動かない。口を離すと、何本かの髪の毛が唇にひっついてきた。そしてその後、その細長い髪の毛たちは僕の唇から離れ、そっと布団をかけるように、詩織の頬に再び落ちた。

 セックスができると思っていた。高いお金を払い、詩織が望む綺麗なホテルに入った。深夜遅い時間だったので、宿泊を選んだ。良いラブホテルに男と女が泊まる。僕と詩織はすでにフェラをするまでの関係…。

 だから、セックスできると思った。ここまで条件を揃えたら、さすがにセックスができるだろう…。

 けっきょく今日もセックスは出来そうにない。体を固まらせた詩織を見てそう思う。どれだけ環境を整えたとしても、心が準備できていなければ、セックスは出来ないということを、当たり前だが気付かされた。

 このまま会い続けていれば、詩織の心の準備が整う日が来るのだろうか。その日まで、僕はセックスを我慢し続けることができるのだろうか。

 そんなことを考えていると、詩織がゆっくりと体を起き上がらせた。ボサボサに髪が乱れていたが、それが余計に妖艶な雰囲気をもたらしていた。

 

「お風呂入ってくる」

 

 詩織はベッドから降り、浴室へ向かった。「う、うん」と僕は言い、スラッとした後ろ姿を眺める。

 そうだ、今日は泊まりなのだ。セックスが出来ないとはいえ、明日の朝まで詩織と同じ部屋で過ごさなければならない。どう過ごせばいいのだろう。ベッドは一つしかないから、必然的に一緒に寝ることになる。詩織は僕と寝ることをどう思うのだろうか。僕は、詩織に手を出すことを、夜中、ずっと耐えなければならないのか。

 ふう、とため息が漏れた。なぜ泊まりにしてしまったのだろう。僕は後悔していた。そして、詩織と過ごしているときに「後悔」という感情を抱いた自分に驚いた。

 その時、浴室の手前で詩織がこちらを振り向いた。ため息を聞かれてしまったのだろうかと、僕は慌てて笑顔を作り、詩織の方を見た。

 

「どうした?」

 

 僕がそう尋ねると、詩織は恥ずかしそうに、そして申し訳そうに口を開いた。その声が小さくて、上手く聞き取れない。

 

「ん? なんて言った?」

 

 僕はベッドから立ち上がり、詩織の方へと近づいた。

 僕と詩織の距離が近くなる。

 

「その…」

 

 詩織と目が合う。

 

「一緒に」

 

 僕は今、泊まりにしたことを後悔していた。

 

「お風呂」

 

 でも、セックスができなくたって。

 

「入る?」

 

 楽しみ方はいっぱいあるのだ。

 

「入る!」

 

 後悔という感情が、一瞬にして消え去る。僕は勢いのまま、詩織を抱きしめた。

 

「…かわいい」

 

 詩織が僕の耳元でそう呟いた。その声には、今まで交わしたどんな言葉よりも、優しさが詰まっていた――。

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(文=隔たり)

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