アイドル・シーンにはむしろ新しい文化が生まれている~2018年アイドル・ポップス・ベスト10

1位:nuance(ヌュアンス)「タイムマジックロンリー」


 横浜を拠点とし、メンバー全員が横浜在住のグループによるアナログ7インチシングル。つまり、まだCDでリリースされていなければ、配信もされていない。

 歌詞の舞台は横浜クリフサイド。1946年に開業して以来営業を続けるダンスホールであり、nuanceのワンマンライヴや主催イベントの会場として使われてもいる場所だ。そんな横浜の老舗ダンスホールを舞台にして、nuanceは「タイムマジックロンリー」の中でタイムスリップしていく。聴いていて気が変になりそうになるのは、めまぐるしく変化していく楽曲構造によるところが大きい。3分33秒という短さの中で、セリフのパートもあれば、コールアンドレスポンスのパートもある。楽曲構造そのものが時間軸をエディットしているかのようなのだ。

 この「タイムマジックロンリー」にするか、ミニ・アルバム「ongen」収録の「sanzan」にするかは最後まで迷った。nuanceは横浜の「匂い」を体現する存在であり、個人的にはクレイジーケンバンドやSuchmos以降の流れの中にいる存在だ。特に横浜のメランコリーを表現しているのが「sanzan」であり、遂に彼女たちのようなアイドルグループが横浜から出てきたことに強い感銘を受けた。

 nuanceから1曲を選ぶだけで一苦労。nuanceと出会えたことは、2017年末から現在に至るまでの大きな収穫のひとつだ。


2位:フィロソフィーのダンス「ヒューリスティック・シティ」


 シングル「ラブ・バリエーション with SCOOBIE DO」のカップリング曲。シングル「イッツ・マイ・ターン/ライブ・ライフ」がオリコンデイリーシングルランキングで1位、週間ランキングで7位を記録し、ワンマンライヴでは品川ステラホールを埋めるなど、フィロソフィーのダンスは2018年に大きな躍進を果たした。

 「ヒューリスティック・シティ」は、フィロソフィーのダンスのソウル・サイドを押しだした楽曲。「平成のおわり」をひとつのテーマに、時代の変化と恋愛における関係性の変化を重ねあわせた楽曲だ。2018年の終わり、冬の寒さにとても心地よくなじむ。


3位:SAKA-SAMA「寿司でぃ・ないと・ふぃーばー!!」


 日本から寿司を食べながら見上げたアフロフューチャリズム。ディスコのフォーマットなのに、リズム構造にタイのモーラムをも連想するような歪さを抱えているのも「Lo-Fiドリームポップ・アイドル」のSAKA-SAMAらしい。「ところで 世界はいくつあるの???」と歌われるように、この世界はひとつですらない。並行世界のどこかで鳴り響くアイドルポップス。

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