パンドラの箱を開ける!? 『アメトーーク!』好感度ゼロ芸人企画の危険性

※イメージ画像:『示談交渉人 ゴタ消し DVDBOX』よしもとアール・アンド・シー

 『アメトーーク!』(テレビ朝日系)といえば、特定の“くくり”に属する芸能人が登場することでおなじみのトーク番組。「家電芸人」や「徹子の部屋芸人」などのヒット企画でも知られており、「ひな壇芸人」という言葉も同番組から生まれたものだ。

 14日深夜に放映された『アメトーーク!』の企画は「好感度低い芸人」。同番組で有吉弘行に付けられた「おしゃべりクソ野郎」というアダ名が定着した品川庄司・品川祐をはじめ、Twitterの炎上騒動でも知られるキングコング・西野亮廣、『めちゃめちゃイケてるッ!』(フジテレビ系)レギュラーのジャルジャル・福徳秀介など、総勢6人の「嫌われ者」ゲストが出演し、世間から受ける冷たい仕打ちに関してのトークを盛り上げた。

 番組内では、出演者の過去の“炎上”騒動にもスポットライトが当たった。2011年の『27時間テレビ』(フジテレビ系)でのバスケットボール企画で、福徳がナインティナイン・岡村隆史に必要以上にボールをぶつけて批判された事件に触れられたほか、番組後半では、西野の「禍根の人物」である放送作家・鈴木おさむが登場。鈴木の小説『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』を西野が酷評した件について、西野が鈴木に土下座し、和解を演じた。

「放映前には『ガチすぎる人選』としてネットで話題にもなった同企画ですが、フタを開けてみれば、吉本のノリそのものでしたね。会話の中では登場しましたが、『芸人交換日記』騒動で一番“荒れていた”森三中の大島美幸は出演しませんでした。西野とは同じ事務所(吉本興業)同士とはいえ、一番『ガチ』な部分にはやっぱり触れなかったということかもしれません」(芸能ライター)

 「好感度が低い芸人を集める」という企画そのものは珍しいが、江頭2:50のように、「抱かれたくない芸能人」に選ばれることをステータスとしている芸人も多い。吉本興業では2000年以来、男女別の「ブサイク芸人ランキング」を毎年発表しており、一般には不名誉なことを「オイシイ」話に作り変えてしまうのはもはや常套手段だと言える。では、「好感度の低さ」は、他の不名誉なくくりとどう違うのだろうか。

 番組では、「世間の声」として紹介された出演者への罵詈雑言に対して各自が自己弁護。出待ちのファンからイジられた経験談や、ファンレターの中での傷ついた一言を紹介するなど、一種の自虐自慢会場ともなっており、そこに垣間見えたのは「好感度ゼロ」芸人たちの自尊心の強さだ。

「自慢話を聞かされて快く思う人が少ないように、一般に、他人が自尊心を発露することに対して、いい感情を抱く人は多くありません。品川さんの芸風はまさにそういった感じですし、彼らが“好感度ゼロ芸人”として扱われるのは、ある意味で自然なことだといえます」(マーケティング研究者)

 ところで、人気の企画はシリーズ化されることもある『アメトーーク!』。14日の放送では出演者は全員男性だったが、同様に「好感度の低い」女性タレントが集まるようなことはないのだろうか。

「ウェブサイト『探偵ファイル』のネット投票で選ばれた『消えて欲しい芸人ランキング』の最新版では、1位がAKB48、2位が和田アキ子、3位が剛力彩芽といったように、トップ10のうちの8つまでが女性(個人・ユニット含む)です。この面々をそのくくりで集めるのは絶対にムリですよ!!」(バラエティ番組関係者)

 Twitterでのエピソードや「2ちゃんねる」への書き込みに話が及ぶなど、「好感度ゼロ」の象徴としてネットでの声が取り上げられた14日の『アメトーーク!』。だが、本当の「ネットの声」をそのまま取り上げれば、芸能界のルールを破壊するのみならず、公共の電波を利用した単なる誹謗中傷の場にもなりかねない。一種の“炎上商法”ともいえる今回の企画だったが、テレビにとっては、開けてはいけない「パンドラの箱」だったのではないだろうか。
(文=是枝 純)

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