育成本に学ぶ淫乱女の育て方

 小説やエッセイといった、昔からの定番ジャンルに加えて、近年多く見かけるのが恋愛やセックスのハウツー本である。街の書店でも電子書籍でも、性愛のノウハウを説いた本を目にする機会が著しく増えてきた。なお、性愛ハウツー本は、21世紀が生み出した産物かと思いきや、実は何百年も前から存在していたジャンルである。インドのカーマスートラや、日本でも、織田信長に仕えた戦国武将・松永久秀が「五傷の法」という指南書を残している。やはりいつの時代も、性愛に対する関心は尽きないようだ。

 そういったハウツー本を読むと、「なるほど!」と目からウロコの発見をすることもあれば、思わず首を傾げてしまいたくなるような部分もある。よって、全てを鵜呑みにするというよりも、共感できる部分だけを取り入れるというほうがいいだろう。

 一方で、性愛ハウツー本に頼りたくないという声も聞く。書店のレジに持っていくのも恥ずかしいし、ネット通販で買うのもプライドが許さない、とのこと。「いかにもセックスに不自由しているようで抵抗がある」というのだ。では、実際セックスに不自由していないのか? と訊ねると、「パートナーがセックスに乗り気でないのは俺のテクニック不足か?」など、悩みはあるようだ。

 セックスに対する悩みを抱えているにもかかわらず、ハウツー本の世話になるのはいやだという人は、育成本を手にとってみては如何だろうか? 育成本と聞くと、子育てや、「有能な部下を育てる!」などの真面目な内容が多い印象を受ける。確かにそのとおりなのだが、それらをセックスに応用することも充分可能ではないだろうか? ベストセラーになった「もしドラ」も、高校野球のマネージャーが、ビジネス本を応用して甲子園を目指すというストーリーだ。性愛に悩む男が、子育てやビジネスの育成本を応用して、セックスに活かすというのも一興だろう。

 セックスに関する悩みは多々あるだろうが、ここでは「マグロ女を淫乱女に育成する」という一点だけに焦点をあてたいと思う。せっかく育成本を応用するのだから、包茎・短小・早漏・遅漏などよりも、「育てる」という部分を重視するのが自然な流れ、という考えからである。といっても、「俺のカノジョをメス豚マゾ奴隷に調教」などという過激なことをいっているのではない。セックスに対して積極的でない女性に、ほんの少し乱れていただくだけである。

 さて、子育てやビジネスの育成本に書いてある内容として、ほとんどの書籍で取り上げられているのが、「褒める」ということ。子どもも部下も、褒めることで伸ばそうという、ごく単純な育成術である。確かに、セックスに置き換えても、「何故お前は騎乗位を拒むのだ!」と怒鳴りつけるよりも、はるかに効果が期待できそうだ。しかし、勘違いしていけないのが「何を褒めるか」である。「いやらしい腰使いだね、次も頼むよ」「キミの獣のような声は実にそそられる!」などと言っても、ドン引きされるだけだろう。それよりも、素材を褒めるほうが無難である。一番わかりやすいのが「膣の締まり具合」。腰使いや喘ぎ声と違って、先天的な要素が強い部分のためか、膣圧を褒められることに悦びを見出す女性は実に多い。よって、女性を褒める際は「締まる・狭い・きつい」の三本柱を掲げると良いだろう。

 育成本には、「競争させる」というテクニックも載っている。兄弟姉妹同士・部下同士が切磋琢磨して、高め合うというやり方だ。マグロ女性の場合は、「競争相手がいないことに安心しきっている」可能性が非常に高い。そこで、まずは「ほかにも競争相手がいるんだぞ」ということをわからせることから始めよう。といっても、「イラマチオしてくれないなら浮気するぞ!」というアプローチは絶対にNG。それよりも、風俗嬢の名刺などをさりげなくカノジョの目につくところに置いておくなどしたほうが、素人ではなく玄人なので角が立ちにくい。「私が手抜きフェラをしていたばっかりに、プロのお世話にさせてしまった」と焦燥感に駆られるだろう。

 最後に、「習慣づけ」。子育てでもビジネスでも、「お菓子を食べたらハミガキ」「外回りから戻ったら報告」など、習慣づけの重要性が謳われている。これをセックスにも取り入れるべし。「デートのたびにセックスに誘うのは気が引ける」などと気にせず、毎回必ず声掛けする。行為中においても、「クンニしたらフェラチオで返す」ように、毎回促す。何度も言うのは疲れるかもしれないが、子育てもビジネスも、ハミガキや報告義務を覚えさせるまでは、地道に声掛けするものだ。それによって、「するべきものなのだ」ということが次第に伝わるであろう。

 今回ご紹介したのは、子育て・ビジネスの育成本で定番になっているテクニックのごく一部である。ほかにも、応用できる部分は多々あるだろう。すでに育成本をお持ちの人は、この機会に是非読み返すことをお奨めしたい。
(文=菊池 美佳子)

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