【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第15回】

「○○商法」で結構!! 限定リリース戦法でじりじりチャートを上る小桃音まい

小桃音まい『コズミック☆UNIVERSE』

 アイドルのCDの販売方法には様々なものがあるが、あまりにもヲタに複数枚買いをさせすぎると、「○○商法」などと揶揄されることもある。とはいえ、アイドルという商売たるもの、ヲタに複数枚買いをさせてナンボではないだろうか。と、私の感覚もすでに麻痺しているのかもしれない。たぶんそうだろう。

 小桃音まい(ことねまい)の場合は特殊で、これまでのすべてのシングルが枚数限定盤。それゆえに初動枚数が多くなり、チャートの上位に食い込んでどんどん話題になる、というかなり先鋭化されたスタイルを徹底してきた。たしかにチャートの上位に飛び込みやすくはなるが、新しいファンが後からCDを買えないという弊害もあるわけで、そこを考慮しないというのがすごい姿勢ではある。

 小桃音まいの4枚目のシングルとなる「コズミック☆UNIVERSE」も5,000枚限定。すでにオリコンのシングルデイリーランキングでは6位、週間ランキングでも22位を記録するなど、これまでの手法が成功を収めている。前作「さくら、咲くころに。」の倍の枚数とはいえ、いつまで「コズミック☆UNIVERSE」を買えることか……と不安になるので、今回は「とりあえず早く買っとけ!」と明記して話を先に進めたい。

 ブログを見ていると、整った顔立ちが印象的だが、メディア越しだといまひとつ彼女の小柄な体格が把握しづらい。それゆえに、今年5月18日に開催された「NEO GIRLS FESTIVAL TOgether~プレミアム~」で、彼女と一緒に観客を左右に移動させる通称「民族大移動」を渋谷O-EASTで小桃音まいが起こした光景には驚かされた。そして、ライヴが終わった後の乾杯の場にいたのは、やはり小柄な「まいにゃ」こと小桃音まい。丁寧な物腰と柔和な笑顔で、なんていい子だ……と感じ入ったほどだ。

 そしてこの「コズミック☆UNIVERSE」。タイトル曲の「コズミック☆UNIVERSE」は、アキバの女王・桃井はるこによる作詞作曲で、まるで葵の紋所を見せつけられた気分になる。モモーイならではの、ツボを押さえまくった手堅い楽曲。しっかりとヲタ芸・ケチャを発動できる、いわゆる「ケチャ・ポイント」が用意されているのも心憎い。

 また、小桃音まいに関するスタッフ・ワークで感心するのは、シングルにカップリングされるアニソンのカヴァーの選曲だ。『ひぐらしのなく頃に』の「なのです☆」、『とらドラ!』の「オレンジ」をカヴァーしてきて、特に後者はもはや小桃音まいのオリジナルのようにすら聴こえる。

 さらに今回カヴァーされたアニソンは、『化物語』の「恋愛サーキュレーション」だ。ヲタに人気が高いものの、単独でCD化されていないこの曲をカヴァーするというのはうまいアイディアだ。

 小桃音まいの「恋愛サーキュレーション」は、原曲に比べるとチープな味わいだが、それを逆手にとってエレクトロ・ファンク化してしまったかのようなトラック。ブリブリと鳴るキーボードが、彼女のヴォーカルの可愛らしさを強調する結果になる、という化学反応も起きている。

 もう1曲のカップリングの「HAPPINESS」は藤末樹作曲。この連載で紹介した東京女子流の「おんなじキモチ」やbump.yの「voice」も手掛けてきた作家だ。エレキ・ギターの響きがアニソンっぽいのも職人芸だろう。

 枚数限定盤でここまでチャート上位にリーチした以上、勝負どころはむしろこれから。同じ事務所のコスメティックロボットが8月に解散した今、小桃音まいの小さな双肩にいろいろなものが乗っているかと思うと、つい応援したくなってしまうし、実際8月8日の「TOKYO IDOL FESTIVAL 2010」では「コズミック☆UNIVERSE」を予約して彼女とツーショットチェキを撮影してしまった。とにかくヲタ臭い感じで支えたくなってしまう存在だ。

 ちなみに、年間でライヴを300本以上していると謳われているので、その気になればほぼ毎日彼女に会えることになる。なんて危険な……。この辺にも、デビュー・シングルから1年足らずで彼女のファンが増えた理由があるのは言うまでもないだろう。というか、書いているうちに私もそろそろまいにゃに会いたくなってきた。こういう仕組み。

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