ラッシャーみよしの「エロ業界栄枯盛衰物語」第12回:1988年

「イグーッ、イグーッ!」 花ざかりの淫乱女優たち

本能のままに激しく喘ぐ咲田葵。『ぶっとび 咲田葵の先制口撃』(ありす)より

 これはAVか!? というわけで、1988年は長~いAVの歴史の中でもっとも「音声」がでかかった時期(笑)。なんたって、豊丸ですよ。あぁ、おっさんのぼくには、ついこの間のことのように彼女の喘ぎ声が頭に浮かぶのに、すでに20年の歳月が流れているんですね。

 そんなわけで、今回はAVを中心に時代を振り返ってみたいと思うのですが、81年にAVが誕生してから6、7年の歳月が経ち、AVの流行はすっかり「美少女本番路線」に定着。早川愛美や森田水絵、秋元ともみといった美少女たちが続々デビューし、レンタル店にはずらりと彼女たちのパッケージが並び、ニッコリ微笑んで我々を迎えてくれたものでした。

 でもなあ……。上品なお魚料理や野菜料理ばかり食べていると、反動で脂ぎった肉を食いたくなるのが人間なんですね。

 上品に対して下品。美に対して醜。善に対して悪ですよ! いや、豊丸が醜で悪だと言っているわけじゃないですよ(笑)。ともかく、88年を機にAVは「美少女路線」から大きく舵を切って、「淫乱路線」に走り出したんです。

咲田葵は淫乱ブームの火付け役となった。
『ぶっとび 咲田葵の先制口撃』(アリス)より

 きっかけは、前年にアテナ映像から発売された『いんらんパフォーマンス GINZAカリカリ娘』が大ヒットしたこと。銀座のクラブでホステスをしていた咲田葵という女優のデビュー作ですが、これを見たぼくはびっくりして腰を抜かしました。

 淫乱女というのは、フェラチオをしてくれたりアナルまで舐めてくれたりと、とにかく「男に気持ちのいいことをしてくれる女」だと思っていたらそうじゃない。「自分の快楽のためなら男なんかボロボロにしても平気な女」ということだったんですね。

 今は痴女流行りで、男を犯す女をAVで見るのは普通のことですが、まだ「AVとは、女が下になって男に愛撫されてアンアンと泣くもの」だった時代に、「男にまたがりガオーッとマウンティング、立たない男は容赦なく罵倒し、巨根にむしゃぶりつき、自分からハメ倒す」咲田葵の姿にビックリしたんですね。

普段は礼儀正しくしとやかな女性だった
という豊丸。

「うわあ、すごい女優が出てきたぞ」と思っていたら、88年になってデビューしたのが豊丸。

 5月に『吸淫力~史上最強のワイセツ~』(サム)でデビュー。以降、88年だけで『大淫シンドローム』(V&Rプランニング)、『人間発電所』(サム)、『淫と乱』(KUKI)他25本以上の作品に出演。驚異的な大ブレイクでしたが、どの作品でも巨大バイブがうなりを上げ、大根をアソコにくわえ込み、何人もの男優と連続で何時間もハメ続ける姿に、いよいよ腰を抜かしたわけですね。

 そして、何よりも夢に出てきたのが、大根やバイブではなくて、豊丸のもの凄いヨガり姿。白目をむいて「イグーッ、イグーッ!」。その顔はもはや人間というより爬虫類。

 この後、豊丸に続けとばかりに亜里沙、沖田ゆかり、栗原早記、有希蘭、千代君などいろんな「淫乱女優」がデビューしましたが、やはり記憶すべきは豊丸。

 ただ、この路線はエスカレートするのが宿命でしたから、最後はもはやエロというより、サーカスやビックリ・ショーの世界になってしまいました。豊丸さんは人間的に魅力的な方だったので、そちらばかり強調されるのは残念だなあ……と誰もが思っていましたが、それもまたAVの宿命。

たまにはかわいい顔でヨガります。『これぞ豊丸』(メーカー名不明)より

 イグーッ、イグーッとやたらうるさい88年のAVでした。

 
・バックナンバー
【第1回】 ノーパン喫茶(1978年)
【第2回】 エロ・パンデミック前夜(1979年)
【第3回】 ビニ本全盛期、B5判64ページのロマン!(1980年)
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【第5回】 ハッスル、ハッスル! ピンサロ・マニアへの道(1982年)
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