新旧『白日夢』Wヒロインインタビュー

愛染恭子監督による新しい『白日夢』  新人・西条美咲の裸体がマブしい!

愛染恭子監督と新作『白日夢』でヒロインを演じた新人・西条美咲。
“天性のカリスマ”愛染恭子の存在感に負けじと自己アピールする
西条美咲の健気さが伝わってくるスリリングなインタビューとなった。

 ハードコアポルノの金字塔として燦然と輝く、愛染恭子主演作『白日夢』(81)。武智鉄二監督による日本初の”本番映画”として公開時に大反響を呼んだ。その問題作が新たなるキャストを得て、21世紀版官能ファンタジーとして甦った。監督を務めるのは、前作でヒロイン・千枝子を演じた愛染恭子その人。さらに『たまもの』(04)、『おじさん天国』(06)などピンク映画で哀切のドラマを描くことに定評のある いまおかしんじ監督を”共同監督”として迎えている。そして新しいエロスのミューズに選ばれたのは、新人・西条美咲。一見、清純そうな表情の中に妖しい女の魔性を覗かせた演技で、大胆な濡れ場に挑んでいる。”性の生き伝説”である愛染恭子と、彼女の猛特訓に耐えてヒロインを演じ上げた西条へのクロスインタビューを敢行した。

──前作『白日夢』は社会現象にまでなった問題作でした。愛染さんにとって『白日夢』とはどのような存在なのでしょう?

「本番か本番でないかには敢えてこだわりたくなかった」
と語る愛染恭子監督。しかし、千枝子の相手役を演じた
大坂俊介には前張りをさせないなど、独自の演出方法で
官能シーンを撮り上げている。

愛染 女優・愛染恭子を世に送り出してくれた作品。感謝しているのと同時に、私の生涯から一生切れることのない作品です。これがデビュー作ということでは、西条美咲ちゃんも同じですね。でも私の主演作『白日夢』『白日夢2』(87)の後、ずっと次の子が現われなかったので、長い間「白日夢=愛染恭子」という図式のままだったわけです。もう、私はオバさんになっちゃったのに(笑)。もちろん、私の中では一生『白日夢』は消えることはないんですが、そろそろ若い子にバトンタッチしていいかなという思いで、新作の監督を引き受けたんです。

──妖艶な愛染さんに対し、西条さんはあどけなさの残る清純そうな外見。ずいぶん、ヒロインの印象が異なりますが……。

愛染 そうね。私も初めて美咲ちゃんに会ったときは「この子、処女じゃないの?」「男性経験あるのかしら。大丈夫?」と心配しました。それでね、撮影前にずいぶん練習したよね。ほら、自分で言ってごらんなさい。

デビュー作で大胆なヌードを披露した
西条美咲。大女優への道は今開かれた

西条 ハイ。座布団を置いて、その上に乗って腰を動かす練習をしました。愛染監督からは「違う! 腰を回すんじゃないの」など、いろいろと指導していただきました。

愛染 今のは騎乗位の練習ね(笑)。座布団を相手に5~6時間の練習を2日間にわたってしたわよね。他にも男を受け入れるときの顔つきや手つきだとか、顔が逃げちゃいけないとか指導したわよね。美咲ちゃんは吸収力が素晴らしく、撮影本番ではばっちりだったわよ。

──前作は”本番”ということが大変な話題になりましたが、新作の売りはどこになるんでしょうか?

愛染 今の時代に”本番”を謳っても、これだけAVなどが溢れている状況では意味がないでしょ。あえて”本番”かどうかは謳っていません。お客さんに判断してもらえればと思います。美咲ちゃん、23歳だっけ? 30~40代の女性からエロスが出てくるのは当然。でも20代前半の美咲ちゃんみたいに擦れてない女の子から、どうやってエロスを引き出すか。それが今回のテーマでした。男を誘う仕草とか表情とか、それを観た人が少しでも興奮して、ガマン汁を出してくれれば成功だなと思っています。

──ガマン汁との勝負ですか。西条さん、よくぞ『白日夢』のヒロインを最後まで演じ切れましたね。愛染監督が厳しすぎて、泣いたりしませんでした?

西条 オファーをいただいて、脚本を読んで、大変な作品に出るんだなぁとプレッシャーに感じました。愛染さんと同じ23歳でのデビューになりますが、当時の愛染さんと比べて全然セクシーさが足りませんし。でも、この役は絶対に自分がやるんだという強い気持ちでした。愛染監督の熱心な指導は、千枝子役を愛しているからこそだと分かっていたので平気でした。現場ではずっと泣かずにいたんですが、クランクアップは我慢できずに泣いてしまいました。

真剣な表情で愛染監督の話に耳を傾ける西条。

愛染 うん、初めての映画出演で絡みがあって、しかもハードスケジュール。その上、監督が2人いて、言ってることが違っていたから、この子は大変だったと思います。意外と美咲ちゃんは、負けず嫌いだね。

西条 はい、最初は脱ぐことがずっと気になっていたんです。「ウエストがくびれてないし、どうしよう」とか。でも、千枝子は普通の女性だし、プロポーションにこだわるよりも、台本に描かれている千枝子をちゃんと演じればいいんだと考えるようになってからは、裸になることに対する変なこだわりを忘れることができました。

──監督の意見が食い違ったときは、西条さんはどうしたんですか? 「愛染さんに付いていきます」と?

西条 え~、それは……。

愛染 この子は純真だから、どちらの言うことにも素直に従うんです。基本的に女性が中心の場面は私が演出、男性が中心の場面はいまおか監督が演出とケンカしないように分けていたんです。でも、お互いに相手が演出しているときも立ち会っていて、つい自分の意見を言ってしまうわけです。いまおかさんは監督ひと筋、私は女優としてのキャリアが長い。それに男と女で考え方が根本的に違うんです。千枝子が親友(小島可奈子)を殺して山に埋めるシーンで、死体を蹴って穴に落とすように私が演出したら、いまおかさんは「それは残酷すぎる!」と反対して。夜中だったのに、みんなの前で口論になったわね。

西条 はい……(笑)。

──それだけ熱い現場だったんですね。千枝子の純真な中に妖しさが混在している表情は、その結果なのかもしれません。濡れ場のシーンは、愛染さんが基本的に演出されたとか。浜辺で千枝子と倉橋(大坂俊介)が裸で抱き合うシーンはとても幻想的です。

愛染 あのシーンはいちばん力を入れました。全体的にもうひとつ官能シーンが足りないように思い、プロデューサーにお願いして最後に改めて撮ったシーンなんです。真夜中の浜辺で裸のまま朝まで撮影していたから、大変だったと思いますよ。それと注目して欲しいのは、着物を着てからの千枝子の女らしさ。それまで幼い声だったのが、着物を着ることでしっとりと低い声になったんです。濡れ場の喘ぎ声もよかった。

ひとりの男を想い続けるヒロイン・千枝子
(西条美咲)の一途さが警察官の倉橋(大坂
俊介)らを巻き込んで大惨事を招く。男が
想い描く”理想の女性”とはやはり幻想に
過ぎないのか。
(c)2009 アートポート/ベルヴィー

─元ジャニーズJr.の大坂俊介、演説芸人である鳥肌実との濡れ場はどうでした?

愛染 鳥肌さんは、放っておくとコミカルな芝居をするんで「いい加減なことしないで」と私から注意したんですけど、できあがったフィルムを見たら、すごく考えて演技していることが分かり、感心しました。でも、鳥肌さん、美咲ちゃんみたいな若い女の子と絡めるもので、喜んじゃって余計なところまで触ってたわよね。大坂くんはねぇ、変な癖があるの。彼は”キス魔”だよね。カメラに映ってないアングルで、舌を入れてたのが分かったわよ。

西条 アハハ。大坂さんはすごく親切でした。私をリードしようと気合いを入れていて、私も初めての映画で緊張してて、それでキスシーンはお互いに力が入って……。

愛染 ま、自然な演技だからいいか(笑)。

──千枝子は顔を整形して、好きだった男を自分のものにしようとする激情の女でもあるわけですが、女性にはそういう変身願望があるんでしょうか?

西条 う〜ん、変身願望というよりは、自分の欲しいものを手に入れるためなら手段を選ばないという執着心じゃないかと思います。共感はしないまでも、欲しいものを手に入れるために命懸けになる千枝子の気持ちは私にも分かる気がしました。

愛染 実はね、全身整形をして昔の男を手に入れた女性が私の友達にいるんです。「そんな男のことは忘れなよ」と私は言ったんですが、女の嫉妬というのはすごいもの。愛が深いんです。その愛の深さが復讐にも繋がってしまうというのが今回のストーリー。新しい千枝子は私の知り合いがモデルになっているんです。

──友人の実体験がベースだったんですか。怖いなぁ。え~、愛染さんから見て西条さんのヌードはどうでした? 若い子の肌を見て、ジェラシーを感じたりは?

「歯科医のシーンにも注目してください。患者さ
んが落ち着くような話し方など、歯医者さん
に行って自分なりに研究してみたんです」(西条)

愛染 いえ。若い子のきれいな裸はね、見ていて気持ちいいものよ。それに美咲ちゃんの体型はね、デビューした頃の私に似てるの。美咲ちゃんのバストは幾つ? Bカップね。私はAカップだったの(笑)。でもね、いろんな恋愛を経験して男に抱かれることで、腰がくびれて胸が大きくなって、どんどん女らしい体になっていくのよ。

──西条さんの今後が楽しみなような、ちょっと切ないような……。最後に2人にお聞きしたいのですが、カメラの前で裸になるということは自分自身をさらけ出す行為なんでしょうか、それとも”役”という透明のベールを被っているものなんでしょうか?

西条 う~ん、どちらでもないと思います。

愛染 そうね。確かにカメラの前で、大勢のスタッフが見守っている中で裸になることは最初はすごく恥ずかしいことなんだけど、みんな「いい作品を撮りたい」という真剣な眼差しをしているの。その視線に負けちゃいけないという意識になっていくんです。恥ずかしがっていることが、恥ずかしく思えてくるんです。

西条 そうですね。2回目以降は現場で裸になるのが平気になって、監督の演出をガウンも着ないまま聞いてました(笑)。『白日夢』に出演したことで、度胸がつきました。それに愛染さんから教わった女らしい仕草や表情は、これから生きていく上で、すごく重要になっていくと思います。

愛染 ハードなスケジュールの上に、監督同士がケンカしてる大変な現場を経験したんだから、これからも充分やっていけるはずよ。

西条 はい、頑張ります!

(取材・文=長野辰次)

『白日夢』
原作/谷崎潤一郎 脚本/井土紀州 監督/愛染恭子、いまおかしんじ 出演/西条美咲、大坂俊介、小島可奈子、坂本真、福永ちな、菅田俊、鳥肌実 R18+ 配給/アートポート 9月5日(土)より銀座シネパトスほか全国順次公開  
 

 

『白日夢(81年) 』

 
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愛染恭子(あいぞめ・きょうこ)
1958年千葉県生まれ。青山涼子の芸名でピンク映画に出演していたが、愛染恭子に改名して出演した『白日夢』(81)で一躍スターに。その後も『未亡人下宿』(84)、トレイシー・ローズと競演した『THE エロス』(86)などに出演し、性のカリスマとなる。全国各地のストリップ劇場にも出演していたが、94年には引退。現在は『パッチギ! LOVE&PEACE』(07)に出演するなど女優・タレント業に力を入れている。『愛染恭子vs小林ひとみ 発情くらべ』(01)など監督作品も多数あり。

西条美咲(さいじょう・みさき)
1986年京都府生まれ。本作でヒロインに抜擢され、映画デビュー。7月には舞台『新宿ミッドナイトベイビー』にいしだ壱成とW主演し、舞台でも度胸の良さを見せた。『新宿ミッドナイトベイビー』の映画化が決まっている他、2010年以降も主演クラスの舞台や映画を予定。海外旅行が好きで、韓国には語学留学している。

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