セックス体験談|mixiで出会った女#2

隔たりセックスコラム「mixiで出会った女#2」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


セックス体験談|mixiで出会った女の画像1
※イメージ画像:Getty Imagesより

『mixiで出会った女#1』


「明日晴れるみたいなんですけど、良かったら会いませんか?」


 布団の上で寝返りをうちながら、そうラインを送る。時刻はもうすぐ0時。突然の誘いになってしまったからどうせダメだろうと半ば諦め、その女性とのトーク履歴を遡る。

 その女性、ゆうかとはmixiで知り合った。何度かやり取りした後、彼女の家で会うことになり、けっきょくセックスをした。その日は大雨だった。

 ゆうかは口数が少なく、何を考えているのかわからないような女性だった。唯一わかったことといえば、「雨が嫌い」ということだけだった。

 トーク履歴を見ても、ゆうかからの返信は「はい」「そうですね」という素っ気ないものばかり。しかし、セックスをした日の夜に来たラインは、僕の心を踊らせた。


「今日は楽しかったです。また会いたいです」


 一般的な女性からのLINEだとしたら、この返信は普通かもしれない。しかし、相手は感情表現をあまりしないゆうかだ。そんなゆうかが「楽しい」と思ってくれている。セックスをして「また会いたい」と言ってくれている。僕はそれが嬉しかった。

 この日のゆうかの返信を見ると、あの日のセックスが蘇ってくる。ゆうかの家の床の上で、服を着たままの、決して最高のセックスとは言えなかったが、雨の音を背にした生活感あふれる中でのセックスは、妙に僕の心に残っている。


「はい」


 ゆうかとのセックスを思い出していると、返信がきた。トーク画面を開いたままなので、既読をつけてしまったことになる。僕はすぐにゆうかに返信をした。


「ありがとう。何時くらいに会えそうかな?」

「夕方なら」

「仕事は休み?」

「はい」


 前回ゆうかの家で会ったが、彼女の家は僕が住んでいる実家から1時間半以上かかる。正直それを考えると、腰が重くなる。


「そしたら新宿で会うのでも大丈夫?」


 新宿なら、僕の実家からもゆうかの住んでいるところからも行きやすい。


「わかりました」

「そしたら14時くらいに新宿で」

「はい」

「楽しみにしてるね」


 そのメッセージに既読はついたが、ゆうかからの返信なかった。明日、ゆうかはちゃんと来るのだろうか。そんなことを不安に思いながら、僕は眠りについた。

 窓から差し込む強い光で目が覚めた。日の光で起きれるように、寝る前にカーテンを開けておいた。今日は快晴。ゆうかの嫌いな雨は降っていない。

 昼ごはんを簡単に済ませ、部屋を出た。電車に乗り、ラインを開く。ゆうかからのメッセージはない。念のため「待ち合わせ時間にはちゃんと着きそうです」と送る。


「はい」


 ゆうかから返ってきたのはその2文字だった。


「ゆうかも14時にはつきそうですか?」

「はい」

「よかった。気をつけて来てね」


 そのメッセージに既読はついたが、返信はなかった。相変わらず感情が読めない。ゆうかは僕に会うことを楽しみにしてくれているのだろうか。ゆうかに会うまで不安は拭なさそうだ。

 今日、ゆうかと会う約束をしたが、メッセージで「セックスをする」という約束はしていない。僕はセックスをするつもりでゆうかを誘ったのだが、彼女はどう思っているのだろうか。

 待ち合わせ場所の新宿駅の改札口でゆうかを待つ。しばらくして、改札から出てくる人混みの中にゆうかを発見した。

 ゆうかはニットワンピースを着ていた。前回会った時の服は茶色だったが、今回はグレー。おそらく同じ服の色違いなのだろう。

 ゆうかは改札付近の柱の近くに立ち止まり、携帯を確認していた。僕を見つけられていないようなので、こちらから近づき声をかける。


「ゆうか」

「はい」


 ちょうど後ろから声をかける形になってしまい、驚かれると思ったが、ゆうかは相変わらずの低いテンションで返事をした。


「元気だった?」

「うん」


 ゆうかに会うのは2週間ぶりだ。


「新宿にはよく来る?」

「あまり」

「そっか。でも今日は晴れてるから」


 晴れている、という言葉にゆうかの顔が綻んだ。


「嬉しいです」


 本当に雨が嫌いなんだなと思った。けれど、ゆうかはどちらかというとイメージ的に晴れよりも雨の方が似合っている。その歪さがなんだかおかしかった。


「そしたら行こうか」


 僕はゆうかの手を握り、歌舞伎町のホテル街へ向かって歩き出した。ゆうかはどこに行くのかなどは聞かず、黙って僕に手を引かれていた。

 歌舞伎町を抜け、ホテル街に入る。僕はゆうかに何も言わず、当たり前のようにラブホテルの中へと入った。

 空き部屋の中で1番安い部屋を選び、受付で「2時間休憩で」と伝える。料金を支払って鍵を受け取り、エレベーターに乗った。


「…?」


 エレベーターがギシギシと音を立てて登っていく。その音にゆうかの声がかき消された。


「ごめん、聞き取れなかった」

「…お金」

「ん?」

「お金、大丈夫?」


 ゆうかの方を見ると、彼女はじっとこちらを見つめていた。その眼差しに怯みそうになる。感情の見せないゆうかにじっと見つめられるのは初めてで、なんだか怖かった。


「お金は…ぜんぜん大丈夫だよ」

「…ありがとうございます」


 ゆうかはペコリと頭を下げた。

 どうにも調子が狂ってしまう。ゆうかの感情や行動が全く読めない。わからないということは恐怖にも繋がるが、これが僕がゆうかに惹かれている理由なのだろう。わからないからこそ、彼女をもっと知りたいと思ってしまう。

 その知るための行動が会話ではなくセックスなのだから、自分の性欲に笑ってしまう。とはいえ、ゆうかはコミュニケーションが苦手だろうからこれでいいんだと、言い聞かせた。

 鍵を挿してドアノブを回す。扉を引くと、ギシギシと低い音が鳴った。重い扉を支えながら、先にゆうかを部屋の中に入れ、後に続く形で僕も中に入る。

 玄関と部屋の間にもう一枚ドアがあった。両方の扉に挟まれていて、靴を脱ぐ空間が狭い。どう動いても、ゆうかに触れてしまいそうだ。

 それならばと、僕は靴を脱ごうとしているゆうかを後ろから抱きしめた。

 ゆうかの顔はお世辞にも可愛いとは言えない。真顔なことが多く、表情もめったに変わらないので愛想も悪く見えてしまう。

 けれども、髪の毛だけは綺麗だった。体型はふっくらしていて、スタイルが良いというわけではないが、綺麗な髪の毛によって、後ろから見たゆうかはとても美しい。僕は甘い蜜に誘われた蝶のように、後ろからゆうかの髪の毛に顔を埋めた。

 長い髪の毛からシャンプーの良い匂いが香る。綺麗に手入れされている髪は、近くで見ると1本1本が細かった。

 後ろから抱きしめても、ゆうかは何も反応しない。ただ黙って僕の抱擁を受け入れていた。


「ごめん、急に抱きしめたくなった」


 後ろからゆうかに向かって囁く。


「ゆうかにくっつくと、落ち着くんだよね」


 これは嘘じゃなかった。

 ゆうかは太っているかといえばそうでもなく、かといって痩せてるわけでもない。ぴったりサイズのニットワンピースを着ているせいか、胸とお尻は張っていて突き出ているように見える。くびれの曲線も服の上から浮き出ていたが、それはくびれているというよりも、胸やお尻が突き出ているから凹んでいるように見えてしまうだけに思えた。

 体の至る所が柔らかい。そんなむっちりとしたゆうかのボディを抱きしめていると、抱き枕を抱いたように安心してしまう。


「安心する」

「…」


 ゆうかは僕に抱きつかれても、何も言わない。

 

「…ごめん。中に入ろうか」


 部屋は壁一面がピンク色で、とても可愛らしい雰囲気だった。安い部屋なので全体的なスペースは狭く、ベッドが大部分を占めていた。

 座る場所もないので、僕とゆうかはベッドに腰掛けた。


「思ったよりも狭かったね」

「うん」


 ピンクの壁に囲まれた、ベッドしかない部屋。誰が見てもただセックスするための空間だと明らかにわかるだろう。

 ゆうかもそれに気付いているのだろうか。


「ゆうか…大丈夫?」


 このままゆうかを押し倒すこともできた。しかしどうしても、言葉で確認したくなってしまう。


「ん?」


 ゆうかは不思議そうな顔で僕の方を見た。その顔を向けることの方が僕にとっては不思議だった。


「キス…していい?」


 ゆうかは自分の気持ちを伝えるのが苦手だとはわかっている。それでも、ゆうかの気持ちをちゃんと言葉で伝えて欲しいと望んでしまう。セックスの同意が欲しい。


「うん」


 ゆうかはそう頷いた。頷いたというよりも、顔の力が抜けて俯いたような動きだった。

 ゆうかの顎に手を添えて、軽く口づけをする。微動だにしないゆうかの唇に、僕はゆっくりと、そして何度も自分の唇を重ねた。


「唇、柔らかいね」

「…」


 ゆうかは何も言わない。ゆうかが何も言わないとわかっているのに、彼女が何も言わなければ言わないほど、何か言って欲しいと、声をかけてしまう。


「もう一回するね」


 再び唇を重ねる。今度は舌を出して、ゆうかの唇をなぞった。そして中に舌を差し入れようとしたが、前回と同様、ゆうかの口は開かなかった。

 目を開けて顔を見ると、ゆうかは目をつぶっていた。言葉を使わないゆうかの感情は行動から読み取らなければならない。ディープキスは諦め、僕はニットワンピースの上から胸を触った。

 胸を触ってもゆうかの反応はない。これもディープキスと同様、前回のセックスと同じだ。わかっていたとはいえ、少し寂しい気もしてくる。気分が盛り上がっているのは自分だけなんだと、バカみたいに思えてくる。

 それでも、僕はゆうかとセックスしようとしている。反応もなく、楽しくもないのに。それはいったい、なぜなのだろうか。


「服、脱がしていい?」


 ゆうかに尋ねる。前回は服を着たままのセックスだった。裸になればゆうかの気持ちも、僕の気持ちも変わるかもしれない。

 ゆうかが何も言わなかったので、僕はそれを肯定と捉え、「ちょっとごめんね」とベッドに押し倒した。そしてニットワンピースを下からめくる。

 足、ふくらはぎ、太ももと、ゆうかの体があらわになっていく。ゆうかの上にコーティングされたバリアを丁寧に剥がしていくような気分だ。どんな女性でも裸を見るのはドキドキする。

 さらに服をめくっていくと、水色のパンティがあらわになった。濡れているかなと期待したが、目視では確認できなかった。そのまま上までめくっていくと、ほどほどに贅肉のついたお腹、そしてパンティとセットであろう水色のブラ、その中に収まったバストが次々とあらわれた。


「きれいだよ」


 ゆうかの気分が盛り上がるといいなと、そんな一言を添える。

 ニットワンピースを脱ぎ、ゆうかは下着姿になった。特に胸を隠すなどの、恥ずかしがるそぶりは一切ない。ただ人形のように、ベッドに横たわっているだけだった。


「電気消すね」


 照明を最大まで暗くする。本来、セックスの時に照明を暗くするのは、女の子が恥ずかしいからという理由が一般的だ。しかし今、ゆうかは恥ずかしがるようなそぶりを見せていない。

 そう、僕が真っ暗にしたかったのだ。無表情なゆうかの顔を見ながらセックスするのは、やはり難しいと思った。なんだか自分の奥底の感情を見られているような気分になり、怖気づいてしまう。

 真っ暗な中、うっすらと見える水色のブラに手をかける。下にずらすと濃い茶色をした乳首が顔を出した。僕はそれを、舌先でチロチロと舐めていく。

 乳首を舐めながら、両手を使ってゆっくりとブラを取った。そして手で胸を揉みながら、乳首を口に含み、吸う。ゆうかはそれでも声を上げない。さらに大きく口を開け、食べるように口の中いっぱいに胸を含んだ。気のせいだと思うが、ほのかにミルクの味がした。その味によって懐かしい安心感が蘇り、僕は口の中で何度も乳首を舐めまわした。

 僕の口の中にゆうかの胸が入っている。互いの体の輪郭が徐々に交わっていく。

 両方の胸をたっぷり堪能した後、僕はゆうかの下半身に手を伸ばした。下着の上から触ると、そこはしっとりと濡れていた。

 

「濡れてるね」


 ゆうかの耳元で囁く。反応がないとわかっていても、コミュニケーションは取りたい。僕から話しかけていないと、ゆうかとの関係がよくわからなくなってしまうから。

 下着の中に手を入れ、中指をアソコの割れ目に沿わせた。指先がすぐに愛液に包まれる。特別な関係でないと触れない女性器に触っているという事実が、薄いコミュニケーションでつながっている僕らの関係を特別に変えていく。

 指先が小さな膨らみに触れた。愛液で滴らせた指先で、その膨らみをなぞる。


「んっ」


 やっと、やっとゆうかの口から声が漏れた。


「気持ちいい?」


 僕はさらにゆっくりと、触れるか触れないか程度の優しさで、膨らみをいじる。


「あんっ」


 ゆうかの喘ぎ声を聞くだけで、底知れない喜びが身体中に広がっていく。ゆうかが気持ちよくなってくれているという事実が、今日ここまでの自分の行動全てを肯定してくれている気がした。

 僕はゆうかの胸を舐めながら、指で規則的な動きでクリを触り続けた。一定のスピードを保ち、機械のように愛撫する。ゆうかの快楽が上昇するのを待った。

 その動きを5分続けた頃、ゆうかの腰がだんだん浮き上がってくるのがわかった。ゆうかは自分の手を口にあて、声が漏れないよう我慢するようなそぶりを見せる。あともう少し。

 舌と指先の動きのスピードを少し早める。


「あっあっあっ」


 小鳥が鳴くような高い声がゆうかの口から漏れた。ゆうかのどの部分から出たのだろうと不思議に思えるほど、彼女の顔に似つかわしくない声だった。その唐突な声の豹変ぶりに興奮が高まり、さらに動きのスピードを上げていく。


「あっ…」


 一瞬、ゆうかの腰が大きく浮いた。そして一度ビクンと体を震わせながら、糸が切れた人形のようにドスンとベッドに落ちた。イったのだろう。


「ゆうか、イっちゃった?」


 嬉しくなり、思わず確認してしまう。


「…」


 ゆうかは何も言わなかったが、コクリと頷いた。


「よかった」


 ゆうかに軽くキスをする。


「あの…舐めてもらうことってできるかな」


 ゆうかのイった姿を見て興奮した僕のモノはもうパンパンに膨らんでいた。

 しばらく待ってみたが、ゆうかは何も言わなかった。大きく呼吸をしていて、胸が膨らんだりしぼんだりしている。ゆうかのフェラを体験してみたかったが、断念することにした。


「そしたら、挿れるね」


 バックの中からコンドームを取り、モノにつける。ゆうかの足の間に入り、アソコにあてがった。


「いくよ」


 その言葉に対し、もちろんゆうかは反応しない。それでも僕のモノはゆうかの中へと侵入していく。

 ゆうかはなぜ僕のモノを受け入れるのだろうか。つながった今も、その理由は未だにわからない。

 しかしそれは、僕にも言えることだ。僕はなぜ、何の感情も見せない、コミュニケーションを取るのも難しい、お世辞にも可愛いとは言えないゆうかとのセックスを望んだのだろうか。

 いつだってセックスは不透明だ。濁っている。わかったようでわからない。挿入して相手と繋がった瞬間にセックスというものに一番近づいたような感覚になるが、そこから腰を振るたびにかけ離れていくような感覚にもなる。今、腰を振っているこの瞬間がセックスなのか、それとも挿入するたった一瞬だけがセックスなのか。セックスの存在を捉えようと思えば思うほど、その輪郭は崩れてしまう。

 ゆうかの顔、首、鎖骨、胸、お腹、くびれ、そして僕のモノを受け入れている女性器。いま目に映るこの景色を求めて、僕はゆうかと連絡をとった。そして自分の下半身に広がる快感を求め、ここまで来たはずなのに。

 一瞬だけ大きく打ち上がって咲く花火のように、セックスの絶頂を迎えるのはたった一瞬だ。そのすぐに消えてしまう儚い快楽を味わうために、僕はセックスをしているというのだろうか。

 ゆうかとのセックスが終わった後、僕の中には何が残るのだろう。花火を写真に収めるように、いま目の前にあるゆうかの裸の映像が記憶として残るだけなのか。それとも…。

 ゆうかの中は膨らんでいてとても暖かい。暖かいから、あっという間に快感に襲われてしまう。


「気持ちいいよ、ゆうか」


 僕はゆうかに体を重ね、キスをした。互いの体の輪郭がいびつに重なり合う。なぜ僕はこんなにもゆうかにくっつき、そして交わることを求めてしまうのだろう。

 無意識に舌が伸びる。ゆうかの中に少しでも入りたいと、脳が信号を出した。

 すると、今まで受け入れることのなかったゆうかの口が開いた。そしてぎこちない動きながらも、ゆうかの舌が僕の舌と絡まり合う。

 脳内に快楽の花火が打ち上がった。

 僕は壊れたように舌を絡ませ、腰を振る。結合部からはクチュクチュと音がなり、さらに僕の興奮を刺激した。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。今この瞬間を五感全てが捉える。セックスを逃さないために。

 僕は口を離すと、ゆうかのお尻を持ち上げて回転させ、四つん這いにさせた。そしてゆうかのお尻をガシッと掴み、奥をめがけて腰を打ち付けた。


「あっ!」


 もう一度、ゆうかの奥深くに辿り着けるように、腰を打ち付ける。


「あんっ!」


 ゆうかが初めて大きな喘ぎ声をあげた。やっと、セックスしている彼女を見れた。

 お尻を掴んでいた手をくびれに移し、ゆうかの体をしっかりと固定して腰を振る。長い髪の毛が腰を振るたびに揺れ、背中の肉が波を打つ。くびれを持っている手のひらにじんわりと汗が広がり、繋がっている部分からは卑猥な音が鳴り続けていた。快楽の絶頂がもうそこまで来ている。

 もうすぐ、この行為は終わる。終わったらゴムを処理して、服を着て、ホテルを出て、ゆうかと別れるだろう。そして、またセックスしたくなった頃に、僕はラインを送るのだろう。

 僕が今しているセックスはその日常の繰り返しだ。会って、セックスして、別れて。また会って、セックスして、別れて。その繰り返しの先に何が待っているのだろう。

 セックスを体験するまでは、セックスとは愛のための行為であると思っていた。

 しかし、セックスを重ねれば重ねるほど、愛がなくてもセックスできてしまうという事実に直面した。それでも僕は、愛がなくてもセックスしたいと、今日もラブホテルで女性に腰を振っている。

 愛がないセックスだとしたら、そこにはどんな意味が存在するのだろうか。

 もちろん性欲の解消があるだろう。けれど、それだけではないという感覚が言葉できないがはっきりとあるのだ。性欲の解消はひとりだってできる。


「あん! あん! あんっ!」


 ゆうかが獣のように乱れている。感情を解放したゆうかを初めて見た気した。

 そんなゆうかは、僕とのセックスにどんな意味を感じているのだろう。愛の行為、ではないはずだ。


「い、イくよ!」


 ゆうかのお尻をガシッと掴み、奥をめがけて大量の精を放った。

 放たれた生命はゴムに阻まれ、奥に届かないのはわかっている。それでも、女性の奥で果てたいという願望は無意識に出てしまうものだ。

 僕がイったあと、ゆうかはベッドに崩れ落ちた。その上に、僕も落ちてしまう。モノがニュルッと、ゆうかの中から吐き出された。


「はぁはぁはぁ」


 ゆうかは荒い呼吸を繰り返した。額にじんわりと汗が浮かんでいて、体からは熱気を感じた。僕はそのゆうかの体をなぜかペロリと舐めた。しょっぱくて汗の味がしたが、不思議と嫌な気分は全くしなかった。

 呼吸を整えたあと、先にゆうかがシャワーを浴びに浴室へと入った。そして入れ替わりで僕もシャワーを浴びる。

 浴室から出ると、ゆうかは服を着て、ドライフルーツを食べていた。ゆうかの家でセックスした後も、彼女はドライフルーツを食べていた。


「それ、持ってきたんだ」

「うん」

「好きなんだね」

「好き」

「毎日食べてるの?」

「うん」


 ゆうかはドライフルーツの入っている袋をこちらに差し出した。


「食べる?」

「うん。じゃあ、もらおうかな」


 ひとつとって口に入れると、凝縮された果実と砂糖の甘さが同時に口の中に広がった。


「やっぱり甘いね」

「うん」


 ゆうかはバクバクとドライフルーツを口に運ぶ。その食べ方をみて、ゆうかの体型がむっちりであることに納得した。砂糖には中毒性があるから止まらないのだろう。いくら体にいいフルーツを使用しているとはいえ、砂糖が使われているから食べ過ぎれば太ってしまう。

 美味しいから、中毒性があるから。ゆうかはドライフルーツをボリボリ食べる。

 僕がセックスしたいと、多くの時間を使って今日のような日々を過ごすのも、案外その程度の同じ理由なのかもしれない。

 

「じゃあ、そろそろ出ようか」


 もうひとつドライフルーツをもらって口に入れ、服を着て靴を履き、部屋を出た。エレベーターの中で一度だけ軽い口づけを交わしたあと、手を繋がずに僕らはラブホテルを出た。


「晴れてるね。よかった」


 ゆうかは雨が嫌いだ。


「うん。よかった」

「…今日どうだった?」


 僕はゆうかに尋ねた。


「ん?」

「今日のエッチ、どうだったかなって」


 その言葉にゆうかは下を向いた。そして呟くように、恥ずかしがるように言った。


「…よかった」


 この言葉が欲しかったんだ、と強烈に思った。僕はこの言葉が欲しかったのだと。

 本当に自分は生きていいのだろうか。そんな人生のテーマに対し、壮大に悩んだことはないけれど、どこかで自らの存在価値に疑問を抱いている自分が幼少期の頃からずっといた。

 かといってその回答を探すわけでもなく、僕は日々をこなすように今まで生きていた。そのなんてことない日々の中でセックスに出会った。誰かと繋がる快感を知った。セックスはひとりではできない。他者を必要とする密な行為の中で、自分の存在価値が生まれていくような感覚が確かにあった。

 そう、僕はセックスを通じて自分の存在を確認していたのだ。僕が欲しいていたのはセックスによる快感ではなく、セックスが終わった後に実感できる自分が生きていていいという存在価値なのだ。「気持ちよかった」という女性の言葉だ。肯定だ。僕はそれを求めていたのだ。


「俺も気持ちよかったよ。ありがとう」


 セックスが捉えられないほど不透明に感じていたのは、僕が行為中ではなく、その後に意味を求めていたからだろう。行為が終わった時ほど、僕の中のセックスはより鮮明になる。

 だからこそ、僕はまた違う人とセックスしてしまうのかもしれない。多くの人にセックスで肯定してもらい、自分が生きていることを実感して生きていくのだろう。


「それじゃあ、またね」


 ゆうかを改札で見送り、僕は振り返って再び新宿の街へと戻っていった。

 そしてラインを開き、ゆうかではない、違う女性にメッセージを送る。


「今日は20時くらいに新宿で大丈夫かな?」


 しばらくして、その女性から返信がきた。


「うん、大丈夫だよ! 楽しみにしてるね」


 セックスを繰り返し、僕は自分を肯定していく。


「俺も楽しみにしてるね」


 そんな日常の先には結局、同じような日常が待っているだけだ。

 新宿の喧騒に僕の存在が滲み、消えていく。

 でも、それでいい。消滅と再生を繰り返しながら、僕は生きていく。

(文=隔たり)

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