海鮮モノが好きだという鈴羽のために、評判がいい寿司屋にした。
「私、回らないお寿司って初めてです…」
「マジか! あれだけ稼いでるのに」
「あはは…。お金は全部貯金しちゃってて」
「そっかそっか。じゃあ、今日は遠慮せずに食べちゃってよ」
鈴羽はペコリと深く頭を下げ、「ありがとうございます」と嬉しそうに言った。
旨い寿司が運ばれてくるにつれ、酒も会話もどんどん進む。
鈴羽は普段出勤すると仕事に出ずっぱりなので、ここまでしっかり会話したのは初めてだった。
実際に彼女の声や話し方、仕草を肌で感じると、なるほど確かに男がハマってしまう雰囲気があった。
自然でさりげないボディタッチや絶えない笑顔は、彼女の魅力をより引き立たせていた。“女は愛嬌”とは、よく言ったものだ。
「すいません、店長。ちょっと酔っちゃいました…」
顔を赤らめ、トロンとした目になる鈴羽。
すぐに会計を済ませて店を出て、タクシーを拾った。
車中、こちらにべったりくっつき、目を閉じている鈴羽。
さて、どうするか…。
「据え膳食わぬは男の恥」という言葉が頭をよぎるが、彼女はウチのNo.1嬢。下手に手を出してお店を辞められても困る。
とりあえず鈴羽の家の方向は知っていたので、走り始めてもらう。
「鈴羽、お家の場所教えてくれる?」
「ん…、はい」
眠そうな目を懸命に開きながら、運転手に場所を伝える鈴羽。
左折、右折、直進…、しばらくすると、彼女の家らしき小さめのマンションが見えてきた。
停車し、お別れかと思ったその時、
「店長…お家まで来てほしいです…」
と、スーツの袖口をキュッと掴まれた。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
高鳴る鼓動を抑えつつ、すぐに支払いを済ませると、鈴羽と一緒にタクシーを降りた。