待ち合わせ場所は、新宿アルタ前。約束の時間ちょうどに現れたキヨミちゃんのシルエットを見た瞬間、心の中でガッツポーズをとってしまった。
ウホっ! こいつ痩せてんじゃん!!
寒い時期ゆえ、それなりに着こんではいたものの、膝から下の足は細いし、ウエストもかなりクビれていそうだった。それなのに、胸が大きいことをアピールしていたということは…、
痩せ巨乳ちゃんの可能性がバリ高だ!
キヨミちゃんの顔は、目とクチが大きくて実に濃い感じ。濃厚なソース顔といった具合で、あまり筆者の好みではなかった。
だが、顔の造作なんて体型の前には霞んでしまう。所詮は一夜限りのお付き合いなのだから。
「こんばんは、キヨミちゃんかな?」
「あ! ショーイチさん? 今日はよろしくお願いします!」
のっけからノリノリのキヨミちゃん。ハキハキとしゃべるので、ただでさえ大きいクチがますます巨大に見えてしまう。まっ、無愛想な女性よりはよほどマシだろう。
「う、うん、さっき【PC★MAX】で約束させてもらったショーイチだよ。こちらこそよろしくネ」
「へぇ。思ったより真面目そうなんですね」
「え? 送った写メと印象違うかな?」
「はい。もっとチャラそうな人だと思ってました♪」
「え? ち、チャラそう? そんな風に言われたのは初めてだよ」
「あっ、別に悪い意味で言ったんじゃないですよ。なんだか女性慣れしてそうっていう意味です」
「そっかぁ。でも、キヨミちゃんもなんだか慣れてそうだよ」
「そんなことないですよぉ。これでもすっごく緊張してるんですから!」
やたらと早口で語り始めるキヨミちゃん。とても緊張しているようには見えないが、その緊張を誤魔化すため必要以上に饒舌になっているのかもしれない。
「で、実際の俺はこんなスケベそうな顔だったんだけど大丈夫?」
「え? 何がですか?」
「もし嫌だったら、ココで断ってもらっていいからね」
「そんなことしませんよぉ。私も同じくらいエッチですから」
エッチという部分だけ小声になったキヨミちゃん。周囲はそれなりに人混みがあるので、大声で言うのを避けたのだろう。
そんな彼女の常識的な部分を知り、まずは一安心。愛嬌もあるし、これならたっぷりと楽しめそうだ。
「じゃあ立ち話もなんだから、行こうか?」
「はい! あっ、でもショーイチさんも大丈夫ですか?」
「え? ナニが?」
「私みたいな“へちゃむくれ”でもいいですか?」
「へ、へちゃむくれって! キヨミちゃんみたいに可愛いコがそんなこと言うもんじゃないよ」
自分のことを“へちゃむくれ”だなんて。女性が自分の顔をそう表現するのを聞いたのは初めてかもしれない。
「あっ、いま可愛いコってさらっと言いましたね」
「うん。とても可愛いと思うよ」
「やっぱチャラいんですね! 女性を持ち上げるの上手いですねぇ」
「そんなことないって! ほら、キヨミちゃんって目が大きいでしょ。そういう“目力”のある女性に弱いんだ、俺」
目も大きいが、クチも大きいキヨミちゃん。だが、初対面の女性に向かってクチが大きいことを指摘するのはNGだろう。やたらとおしゃべりな彼女を見ていて、ここで気づいてしまった。
ま、松野明美みたい…
元マラソン選手の松野明美とイメージがカブってしまったのだ。顔は綺麗なほうかも知れないが、決して色っぽいとは言い難い。
だが、松野明美に似てるとはクチが裂けても言えない。