【SM系ライター回顧録】巨漢女王様×痩せぎすM男×格闘SM

※イメージ画像:Thinkstockより

 SM業界に足を踏み入れて、かれこれ10数年。私、ライターの菅野久美子は、これまでいろいろなSM界に住む人に出会ってきた。

 そこには、SMを通して人間の本質に迫ろうとする人から、己の欲望を満たそうとする人まで…。共通しているのは、誰もが純粋であるというところでしょうか。そんな愛すべき人々を少しでも知ってもらえれば、ライター冥利に尽きるというものです。

 
<巨漢女王様×痩せぎすのM男>

 
 私が初めて編集者としてかかわったのは「MISTRESS(ミストレス)」というSM雑誌だった。「MISTRESS」とは、直訳すると“女主人”のこと。そのタイトルが意味する通り、女王様をメインにしたSMファン向けの雑誌である(そういえば、やたらと投稿コーナーが充実してたっけ)。

 入社後しばらく経ったある日、編集長から撮影の同行の話がきた。私がそこでする仕事は、「女王様にインタビューして記事にする」という、いたってシンプルなものだった。

 生まれて初めて女王様とご対面するんだと思うと、やっぱりボンテージ姿で鞭とロウソクを持っているのかな、素顔はどんな人なんだろうかといろいろと想像して胸が高鳴った。

 場所は渋谷。編集長と雑誌に応募してきた痩せ型のM男さんと一緒に、代官山方面にしばらく歩いて、やや殺風景な半地下の建物に入った。装飾的なものがまったくなく、当初想像していたSMクラブとはあまりにかけ離れていたのを覚えている。

 摺りガラスのドアを開けると、その先にはなんと、プロレスのリング(!)がドーンと広がっていた。部屋全体にマットが敷き詰められ、四隅には、支柱、そしてロープまである…。どこからどう見てもリングである。

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