自分の娘を売った金で豪遊し「何が悪い」と開き直る父親

※イメージ画像:Thinkstockより

 明治期の新聞記事を見ると、男が自分の娘や奥さんを遊廓などで働かせるケースがしばしば報じられている。そうしたなかには、ケガや病気などで本人が働くことができないといった、やむをえない事情によるものも少なくなかったことだろう。

 ところが、新聞記事になっているようなものの多くは、前借金や報酬などをとりあげて自分の懐に入れてしまい、遊び呆けているようなケースばかりである。こうした所業を「まだ人権感覚の乏しい明治時代だから」とか「100年以上昔のコト」と考えていたとしたら間違いである。その後も、同様のケースは何度も起きている。

 昭和10年(1935)8月のこと、東京の洲崎遊廓(現・江東区にあった遊廓)で豪遊している50歳くらいの男がいた。

 その男は、10日の夜に洲崎に現れ、ある妓楼であれこれと注文して支払いが33円にも及んだ。この頃、サラリーマンの給料が30円程度、単純作業の従事者などは月給わずか2円程度というケースもあった時代である。だから、ひと晩で何十円も使うというのは、かなり目立つ行為であったことは間違いない。

 男の遊び方があまりに派手なため、不審に思った店が警察に通報。駆けつけた警官によって洲崎署へと連行された。

 署内で事情を聞いたところ、この男、宮城県で農業を営む佐藤(49)という者で、娘のふさ子さん(15)と先日上京した。そして日本橋の置屋にふさ子さんを芸者として渡し、その代わりに受け取った250円を持って洲崎へとやってきたというのである。

 つまりこの父親、実の娘を売ったカネで遊びまくっていたというわけである。これを聞いた警察は、「娘に悪いとは思わないか」と諭して送り出した。

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