300人以上にエイズを感染させた可能性のある男が裁判に

 アメリカ・CNNが伝えたところによれば、自分がHIVに感染していることを知りながら、多数の相手と配慮に欠ける性的な行為を続けた男が裁判所に訴追された。

 訴えられたのは、アメリカのミズーリ州に住むD・マンガム(36)。彼は2003年にHIV感染が陽性との診断を受けた。しかし、その後もマンガムはインターネットで出会ったり、公園などで声をかけたりして知り合った相手と濃厚な接触を伴う性行為を繰り返していた。

 ところが今年になって、彼と性的関係にあった男性が「マンガムがうそをついていた」と警察に届け出て、その男性がHIVに感染していることが確認された。そこで、HIV感染の危険への対処を怠ったとして、警察はマンガムを逮捕した。

 ミズーリ州の州法では、故意に相手にHIVを感染させるなどの行為を禁じており、もし自分がHIVに感染していることを知りながら性的パートナーに感染の危険にさらすような行為に及んだ場合には重罪として扱われ、15年以下の禁錮が科せられる。さらに、もし相手が実際にHIV感染してしまった場合には、最高で終身刑となる可能性もある。

 マンガムは警察の取り調べに、これまで長年にわたって繰り返してきた性的行為について、パートナーはおよそ300人程度、そのうち50人くらいは地元ストッダード郡に住んでいるらしいこと、ほとんどの相手はファーストネームくらいしか知らないと供述している。つまり、マンガムとセックスした相手の特定はほぼ不可能な状態だという。

 ところで、最近ではほとんど報道されなくなってしまったが、性感染症への感染は日本ではいまだに深刻な問題である。つい先月末、厚生労働省がまとめた速報によれば、今年2013年4月から6月の3カ月間に新たにHIV感染したとの届出が294人で、調査を開始してから2番目に多い数字だという。

 感染者数の多さは、HIVだけではない。やはり厚労省による調査を見るとここ数年のデータでは、性器クラミジア感染症2万5000件台、性器ヘルペス症8000件台という高い数字で推移している。また、梅毒も800件台と2年連続で増加傾向にある。

 こうした数字は医療機関等から届出があったものだけであり、実際にはこの何倍もの感染者や患者がいるとみられている。

 最近では治療法も進んで発症を抑えることもできるようになったとはいえ、依然としてエイズは決定的な特効薬のない死に至る病である。また、梅毒は抗生物質で確実に治癒するとはいえ、やはり放置すれば全身あらゆる場所を侵され、最後には死亡する恐ろしい病気だ。

 エイズも梅毒も、潜伏期間が長く、しかも初期症状は軽微という点で共通している。徐々に増えつつあるこれら性感染症が、近い将来に再びメディアで繰り返し取り上げられるような事態にならないことを、ひたすら祈るばかりである。
(文=橋本玉泉)

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