強姦殺人疑惑の二の舞…大津市イジメ事件で相次ぐ書類送検

※イメージ画像 photo by alexamortel from flickr

 滋賀県大津市で、中学2年の男子生徒が自殺した問題を巡り、無関係の女性について「生徒をいじめた同級生の母親」と告発する誤った情報をインターネットの掲示板に書き込んだとして、滋賀県警が京都市の30代男性会社員を特定し、名誉毀損容疑で書類送検する方針を固めた。この事件では、イジメを隠蔽する教育委員会や情報公開に慎重な警察にいらだったネット住民による“私刑”が繰り広げられたが、それが誤爆したケースも目立った。

 加害者少年の母親と間違えられた女性はネットの情報拡散に怯えていたという。自宅に「顔に濃硫酸をぶっかける」という手紙まで届き、彼女が所属する女性団体にも抗議が殺到。電話をかけてきたネットユーザーに女性が「違います。あなたはネットの書き込みを信じてるんですか?」と問いただしたところ、「ネットは正しい」と言われたという。

 また、加害者少年の祖父だとネットに書き込まれ、顔写真や実名まで公開された元警察官の男性も被害届を提出。捜査の結果、同じく名誉毀損容疑で兵庫県の男が書類送検されることになった。元警察官の男性はテレビのインタビューで「(ネットには)『死ね』とか『自殺の訓練をしろ』とか『鬼畜』とか、見たらびっくりするような内容が並べられてます。胃の調子が悪くなるとか、体の不調もでてきた」と語っている。男性が現在勤務する病院にも「人殺しの親族を雇うのか」などといった抗議が殺到し、診療に支障をきたしたという。

 ネットには事件関係者の顔写真や実名などが書き込まれたが、全くのデマも多かった。タレントのデヴィ夫人もそういった情報を鵜呑みにし、ブログに事件関係者の顔写真を掲載。だが、彼女もまた無関係の女性が加害者少年の母親であると誤認させるような書き方をしていたため、この女性がデヴィ夫人を告訴する構えを見せている。デヴィ夫人は悪びれず、「売られたケンカ 買いましょう! 私は逆告訴します!」と吠えており、こちらは泥沼になりそうな気配だ。

 非道なイジメ事件の捜査が遅々として進まず、ましてや学校や教育委員会がイジメを隠蔽しようとしていたのだから、ネットユーザーが義憤に駆られる気持ちは分からなくはない。だが、ネットは新聞やテレビと同じく立派なメディアであり、その影響力は想像以上に大きい。イジメが許せないことであるのは間違いないが、だからといって正義感の暴走によって無関係の人物の名誉を傷つけていいわけではない。

 過去には、お笑い芸人・スマイリーキクチが殺人犯の一味だと事実無根の中傷を受けた騒動でも、ネットユーザーが書類送検される事件に発展している。この事件の教訓が全く生かされず、同じことが繰り返されたといえるだろう。ネットでは巨大掲示板「2ちゃんねる」の既婚女性板のユーザー、通称「鬼女」が驚異の捜査力を見せることがあるが、間違っていた時は知らんぷりをすることが多かった。だが、名誉毀損容疑で逮捕されるケースが増えてくれば、そういった無責任はできなくなるだろう。

 ネットには、大手メディアで報じられていない情報が数多く出回っているが、決して“真実”ばかりではない。むしろ、そのほとんどが何の根拠もない情報だ。それに踊らされず、真実を見抜く目を養うことがネットユーザーに求められている。メディアによる報道被害を批判していたネットユーザーが、同じ轍を踏まないことを祈りたい。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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