8.21お台場フジテレビ抗議デモ潜入取材レポ

 8月21日午後1時。小雨の振る中、フジテレビの韓流偏向放送に抗議するデモ隊が台場・青海北ふ頭公園を出発した。実行委員によると参加人数はおよそ4,000人。途中参加した人々や沿道で彼らを応援する人々を含めれば、その数は1万人に及ぶ勢いを見せた。主催者側も驚きを隠せないほどの規模に発展したフジテレビへの抗議デモ。参加した人々に話を聞けたので、まずはそれを見てもらいたい。

 ふたり組でやってきたという20代の女性は、デモへの参加の動機を「フジテレビの行っている偏重放送への批判」だとし、それが韓流だからということは理由にないと話す。そして、「周りには韓流ブームなんて起こってないのに、なぜあたかもブームであるかのような放送をするのか理解できない」「デモに参加しなくても、そういうことを感じている人は多いと思う。普通の感覚ですよ」と語ってくれた。また、別の30代男性も彼女らと同じようなことを言う。もちろん、デモに参加した全員に話を聞くことはできなかったが、多くの人が同様の感覚でお台場に集まっているであろうことは察せられる。そんな彼らの意見に共通するのは、あくまでもフジテレビの「偏重放送」に対する違和感と憤り。そして今回のデモ参加理由を「意思表示」と言い、これをきっかけにフジテレビが変わってくれることを願っている。

デモ隊の手には思い思いのプラカードが

 しかし一方で話を聞いた人の中には、堂々と「中国人が嫌い」「韓国人が嫌い」と言い、自らを完全な保守主義と言い放つ人もいた。その40代男性は、「元々の自分の考え方とリンクする部分が多くあった」ため、今回のデモに参加したと語る。「元々の考え方」とは何か聞いてみると、先の大戦の歴史認識や竹島・尖閣諸島などの領土問題に関する主張と言う。さらにこの男性は、フジテレビの偏重放送が韓流だから問題があると語り、「たとえばフジテレビがヨーロッパの特定の国の文化に偏重したら?」という記者の質問には「それはいいんじゃないか」と答える。多くのデモ参加者が「偏重」に対して抗議をしている中で、この男性は少し違った視点を持っているようだった。

 ただ、あくまでも今回のデモは、フジテレビの放送内容があまりにも韓流に偏り過ぎていると感じている人々による、偏重放送への抗議が主旨。そして参加者のほとんどはその主旨に賛同して集まった人々だ。多くの人が、自分の信念や思想云々というわけではなく、「何か変だ」「いくらなんでもやり過ぎだろう」という日常の思いを募らせてデモへの参加を決めている。参加者の中に家族連れや女子高生や若い男女のカップルなどが多いのは、そのためだろう。

中には若い女性の姿もチラホラ

 沿道でデモ隊をじっと見つめる少女がいたので話を聞いてみると、「(フジテレビの韓流偏重放送をまとめた)ネットで流れている動画を見てお台場に来ました」と返事をくれた。千葉県からやって来たという彼女は、「やっぱり公共の電波を使って私腹を肥やすような放送をするのはいけないと思います」と毅然とした表情で言葉を続ける。

「確かにKARAとかに興味がある子はいますが、そんなに多いとは思いません。むしろ今回のデモに興味がある友達の方が多いんじゃないですか――」

 たまたまお台場に遊びに来たところデモに遭遇したのかと思って話を聞いたが、記者の予想を見事に裏切る返答に思わずたじろいだ。デモには参加しないという彼女だが、やはり、多くの参加者と同じように、フジテレビが偏った内容を流し続けていると感じ、そこに不信感を抱いていると言う。

 高岡蒼甫のツイートをきっかけにここまで大きな規模に発展したフジテレビへの抗議デモ。1時間以上に渡った行進の後、委員のひとりに話を聞くと「”反韓””嫌韓”という主張ではない。偏った放送をすることへの抗議だ」と改めてデモの主旨を明確に示してきた。

 インターネット上で自然発生的に組織されたデモを主催した実行委員会は今回で解散することを明言している。従って次回のデモは予定されていない。デモを終えた実行委員や参加者は、今回の抗議デモがひとつでも多くのメディアに取り上げられて、現在垂れ流しにされているテレビ局の偏った放送が少しでも是正されればいいと願っている。このレポートが彼らの主旨に沿うかは分からないが、少なくとも抗議活動があったという事実を示すことはできるだろう。

長蛇の列を連ねるデモ隊

 最後に、この日、「頑張れ日本!全国行動委員会」「チャンネル桜」主催によるフジテレビへの抗議デモが午後4時から台場で行われた。「頑張れ日本!全国行動委員会」や「チャンネル桜」と言えば、国会議員の靖国参拝問題や尖閣諸島問題で保守系の思想を堅持する組織だ。彼らの主張も、1時から出発したデモ隊と同じ「フジテレビの韓流偏重放送に抗議する」というものだった。しかし、そのデモに取材に行くと、そこでは君が代が流れ、「売国奴は出て行け!」という掛け声が飛び交っている。主張は同じでも、元々の思想が強い分、態度ややり方は前述のデモとは違うようだった。

 1時からスタートしたデモの最後に「これからチャンネル桜によるフジテレビへの抗議デモの第2弾があります」と拡声器で話す男を実行委員が制す場面があった。実行委員に話を聞くと、「向こうは向こう。うちはうち。関係ないですから」と教えてくれた。実行委員のメンバーは、チャンネル桜側の使う「第2弾」という言葉に強い違和感を持っているようだった。だが、1時からのデモに参加した人々の中には、一部のメディアで1万人を超える人々が集まったと伝えられているチャンネル桜のデモに参加した人も多いことだろう。

 フジテレビの放送する内容に違和感を覚えた人々が集まり、その内容の是正を訴えた8.21フジテレビ抗議デモ。彼らの多くは外国人参政権の問題には興味を示さず、竹島問題を違う世界の出来事だと思っている。それは外国人参政権の問題より流行やテレビというものが日常に根ざしているからだろう。しかし、そんな彼らの思いに便乗し、ここぞとばかりに自分たちの主義主張を広めようというチャンネル桜のやり方はいかがなものだろうか。チャンネル桜側の唱える信条についてとやかく言う気はないが、わざわざ同日にデモを敢行する必要はなかったのではないか。

 チャンネル桜の水島総代表は、フジテレビを「売国テレビ局」と指摘し、フジテレビの主催している「お台場合衆国」を、「朝鮮人もシナ人もみんな仲良く笑顔で他民族が共生する日本合衆国のエンターテイメント版」(チャンネル桜http://www.ch-sakura.jp/mizushima/index.html)と糾弾、このままでは日本伝統の固有文化が転換させられると警鐘を鳴らす。そんな彼の主張に賛同し、8.21にお台場に集まった人々の数は前述のデモ隊を上回る。だが、それよりも多かったのは、この日「お台場合衆国」に遊びに来た人々だ。正式な発表は得られなかったが、通常の日曜日とほぼ同じ程度の来場者というのだから、以前の公式発表から考えて5万人程度の入場者はいたと推察できる。そんなお台場合衆国に遊びに来ていた家族連れに、デモを目の当たりにした感想を聞いてみると、「興味ないね。フジテレビが韓流偏重なんて知らなかったし」と言う。デモに参加した人々は口々に自らを「一般人」と称すが、この日お台場合衆国に遊びに来るような人々こそ大多数の一般人なのではないか。そんな彼らの「興味ない」というひと言が、デモ隊が必死で叫ぶ「国民の声」の本当の姿なのかもしれない。だがそのことにフジテレビが甘えるのは、一民間企業とはいえ、国の認可を得て電波を流し放送業に取り組む会社として許されないだろう。デモ隊の抗議文提出に対し「抗議するいわれはない」と受け取りすら拒否するフジテレビには、多少なりとも違和感を覚えている視聴者がいることに留意し、現在の放送内容に対する公式な見解を示すべきだ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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