50代以上も要注意! 増え続ける高齢者層のHIV感染

※イメージ画像:『そしてエイズは蔓延した〈上〉』/草思社より

 厚生労働省エイズ動向委員会が、現在の日本には約1万8,000人のHIV感染・エイズ発症者が存在していると発表した。HIV感染やエイズといえば、かつては同性愛者の病気であるといった認識が一般的だった。しかし、最近ではそのうち同性愛者は5割程度にとどまっており、もはや、同性愛者、異性愛者などに関係なく感染するものだと思って間違いない。

 またその一方で、「HIVに感染するのは性に乱れた若い層」という認識も崩されてきている。現在では、なんとHIV感染者の5人に1人が50代以上なのだという。中には70代、80代のHIV感染者もいる。しかし、HIV検査を受けているのは圧倒的に30代以下の若い人が多い。おそらく、どの年齢層も同じように検査をすれば、高年齢層のHIV感染率はさらに跳ね上がるだろうと言われている。では、なぜ高年齢層にHIV感染者が増えているのだろうか?

 まず大きな理由として、ED治療の進歩が挙げられるだろう。現在では、日本国内でも比較的簡単にバイアグラなどのED治療薬を手に入れることができる。そのため、ひと昔前ならばあきらめざるを得なかった、加齢による男性機能の低下が食い止められるようになった。ED治療薬を手に入れた男性がまず考えるのが「せっかく治療薬があるんだから、本当に男性機能が回復するのか試したい!」ということだ。しかし、同じくらい高齢になってしまった妻には性的な魅力を感じない。そこで登場するのが風俗、というわけだ。

 しかし当然、風俗店では生殖器がじかに触れ合うナマ行為は禁止され、また女の子の性病検査も義務付けられており、感染するおそれは少ないはずだが……。

「性病検査は建前ですよ。ほとんどが女の子に検査代だけ渡し、その後病院に行ったのかなどを確認しないことが多いそうです。また、コンドームの着用も一見徹底させているようですが、個室で女の子が個人的に応じてしまえば店側がすべてを把握することは難しい。それに先月摘発された東京・小岩の風俗店のように、本番行為があることをウリにして客を呼んでいる店もまだ存在しています。高年齢者の中でもコンドームを着けると刺激が薄くなり勃起しにくいという方が、そういった本番アリの店を好むそうです」(元・風俗店関係者)

 ただ、問題は男性本人の感染だけではない。さらなる問題は、家庭内での感染である。風俗に行くことで自信を取り戻した男性は「たまには奥さんとも……」という気分になる。高齢になるとパートナーも閉経しており、妊娠のおそれもないので当然ナマでの挿入ということになる、そしてHIVを感染させしてしまうという事態も考えられる。また、高年齢者はエイズを発症して初めてHIV感染に気付くことが多いのだという。

「若い人には”HIV感染は人ごとではない”という認識が浸透しています。しかし高年齢者には、まだ”エイズは特殊な人の病気”という認識があり、検査を受けにいくということ自体、全く頭にない人も多いようです。エイズが発症し、体調が本格的に崩れて初めて病院に行き、HIV検査を病院から勧められ感染したと判明するケースが後を絶たないと聞いています」(病院関係者)

 HIVウイルスに感染しただけなら、抗ウイルス剤を飲んでいれば発症は抑えられる。完治はせず、一生治療を続けなければならないが、抗ウイルス剤を使用する限りエイズを発症して死んでしまうということは、ほぼない。しかし、発症してしまえば治療する有効な手立てはいまだ発見されていないのだ。

 高年齢層の方も「自分だけは大丈夫」などと思わず、とにかくHIV検査を受けてみてほしい。保健所に行くのが恥ずかしい、と思う方は、ネットで購入できる検査キットもある。また、さらに言うならば、普段からコンドームを使った「セーフティー・セックス」を心掛けるべきだろう。一時の性欲に流されてしまったばかりに、自分だけではなく周囲の家族にまで被害を及ぼすような事態になりかねないことを忘れないでほしい。
(文=高野夏)

『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』

 
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