ただのtwitterには興味ありません

「twitterはコミュニケーション不全の巣窟」? ある監督の憂鬱

アニメ『ブラック★ロックシューター』オフィシャルサイトより

 2009年はtwitterを利用する有名人が一挙に増えた年だった。その中にはアニメ業界の関係者も含まれている。作り手側では、夏に公開されヒットした映画『サマーウォーズ』の監督・細田守(@hosodamamoru)や、宇多田ヒカルなどのPVで知られる森本晃司(@kojimorimoto)など。また、現在『極上!!めちゃモテ委員長』に出演中の柚木涼香(@yuzuruu)や、シンガーソングライターとしても著名な桃井はるこ(@momoiktkr)といった声優もアカウントを開設している。先週8日には、トップクラスの人気を誇る声優・田村ゆかり(@yukari_tamura)が参入し、数日を経ずして1万人以上にフォローされていた。

 その日から遡ること4日の、12月4日。大ブームを巻き起こした『涼宮ハルヒの憂鬱』のEDアニメの演出を手がけ、『らき☆すた』『かんなぎ』の監督も務めたアニメ演出家・山本寛(通称ヤマカン)が、批評家の東浩紀(@hazuma)に誘われてアカウントを開設(@yamacane)。現在『オトナアニメ』(洋泉社)でアニメ批評「妄想ノオト・出張版」を連載する傍ら、ニコニコ動画で好評を博したボーカロイド曲『ブラック★ロックシューター』のアニメ化を進め、さらに初の実写映画『私の優しくない先輩』をクランクアップしたばかりという山本監督。気鋭のクリエイターだけに、twitter上では早速フォロー申請と「応援してます!」というファンのメッセージが寄せられていた。

 ところが、山本監督はわずか2日後に退会してしまう。同時に、「twitter」と題された記事をブログにアップ。そこには「何ら意義を見いだせないのでやめた」「初対面の人間にずけずけと話しかけられる(しかも時にはタメ口で)神経が私には理解できない」と、twitter利用者およびtwitterそのものへの厳しい批判が綴られていた。さらにコメント欄では「あなたみたいな人にタメ口で話せることこそtwitterの存在意義では?」という批判に対し「twitterはこういったコミュニケーション不全者がぬるく生きながらえるための巣窟なのでしょうか?」と攻撃的に返信するなど、twitterに対して深刻な不快感を抱いたさまが見て取れる。

 山本監督が退会した直接の引き金は「迷いなき決断は傍迷惑な独り相撲にすぎない」という彼のつぶやきに対する「エンドレスエイトですね、わかります」というレスだったようだ。「エンドレスエイト」は今年放映された『ハルヒ』新シリーズの、同じストーリーを8回繰り返したことで賛否両論を呼んだエピソード(参照記事)。また「わかります」はさしたる意味も持たないテンプレート表現なのだが、これに対して山本監督は「結局そういった下俗な煽りがくるだけなんですね。激しくつまらない」と怒りを表明し、それが最後のつぶやきとなった模様である。

 かねてより山本監督は歯に衣着せぬ言動で知られ、『らき☆すた』4話を最後に監督を降板して所属していた京都アニメーション(以下、京アニ)を退社したのも舌禍が原因と、まことしやかに噂されている。『ハルヒ』新シリーズについても今夏、「エンドレスエイト」が物議をかもしていることについて、山本監督がアメリカのアニメコンベンションで「謝罪」した様子がYouTubeに投稿されて話題となり、部外者に勝手に謝られた形となった京アニから「当社とは一切関係のない人の話です」というコメントが出されるなど、何かと揉め事の尽きない人物だった。

 今回もtwitter利用者から反感を買い、山本監督のブログやこの件を報じた記事のブックマークでは「むしろ自身の方がコミュ不全なんじゃないの?」「どうして京アニ追い出されたのか分かった気がする」などと批判的なコメントがつく一方で「合う合わないはあるからなあ」「有名人には無礼しても構わないと思ってる人が多い」と山本監督を擁護する意見も見られるなど、意見が分かれた。

 その後も山本監督のブログは幾度か更新されたものの、このまま沈静化するのかと思われたが、彼の退会から1週間を経た13日、思わぬところから批判の声が上がった。06年から08年にかけ、3度にわたってアニメ化された人気ライトノベル『ゼロの使い魔』(メディアファクトリー)の作者であるヤマグチノボル(@hexagonzero)が山本監督のブログを読んで激怒し、twitter上で痛烈な批判を展開したのである。「タメ口で話しかけられるのも、批判を寄せるのも全部コミュニケーションだろ」とするヤマグチは、批判や悪口であれ発言者に寄せる意志がある以上「不全」には当たらないとしたうえで「『試験運営中』とか『基地外だと思う人は近寄るな』とか、そういう予防線張って言いたいことだけ言うってスタイルの方がよっぽど”コミュニケーション不全”だ」と、山本監督のブログ運営姿勢を非難。「もうはっきり、俺を気持ちよくさせてくれないツールは駄目なツールって言ったほうがよっぽど納得できる」と斬って捨てた。

 かと思うと、およそ半日後には一転「カントク、疲れてる?」と山本監督をいたわる姿勢を見せ、「おれ、カントクが言ってることには頷けないこと多いけど、作るものとか好きだよ。ハルヒのEDダンスとか、すごかったじゃん」と賞賛。彼を元気付けるため、「(もし角川書店の新年会へ来るなら)目の前で(『かんなぎ』OP曲の)『motto派手にね!』歌って踊ってあげる」とも宣言している。

 これがヤマグチの皮肉なのか、それとも本心からの言葉なのかをうかがい知るのは難しい。山本監督の性格上さらに攻撃的な応答がなされることも予想される。どんな発言も不特定多数の目に触れ得るインターネットは、彼のような癖のあるクリエイターにとっては、やりづらい場所なのかもしれない。

『Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(津田大介/洋泉社)

 
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