消えたアダルトカルチャー残像

「私の恥ずかしい写真を送ります」に心が揺れたあの頃 ~70年代アダルト通販広告~

ちょっとダサめの商品ネーミングは今とさほど変わらない?

 1970年代には、いくつものアダルト向けメディアが登場した。「自販機本」「官能漫画誌」「実話誌」が代表的なものだが、そうしたメディアにつきものだったのが、「アダルト通販広告」である。

 まず、それら当時のアダルト通販広告を見て気がつくのは、圧倒的な文字量の多さである。とにかく字で埋め尽くされており、なかにはルーペを使わないととても読めないような、とても細かい文字で書かれている広告も珍しくなかった。ユーザーのことを考えているとはとても思えなかった。

 次に内容だが、「無修正写真・雑誌・画像」「ダッチワイフ・オナニーグッズ」「その他アダルトアイテム」の3つに分類できる。

 

ポルノ大国日本?

 なかでも「無修正」モノは大勢を占めていた。当時、ヌード画像には厳しい規制がかかっており、局部はおろかアンダーヘアですら一切不許可。しかも、71年頃までは、臀部すなわち「お尻の割れ目」までボカシで修正されていたくらいである。そうした状況のなかで、「無修正」をアピールし、しかも「ズバリ丸見え」とか「秘部完全露出」などといったキャッチコピーが添えられた広告は、健康な男性諸氏の関心をひいた。また、当時は無修正アダルトメディアというとデンマークなどの北部ヨーロッパが本場というイメージが強かったため、「北欧から直輸入」などのフレーズもよく使われた。

 一方、あたかも個人売買を装った広告もよく見られた。女性の個人名を使い、郵便局留めが特徴で、「私の恥ずかしい写真を送ります」という類である。

 さて、この70年代のアダルト通販広告だが、三行広告に比べて格段に異なる点があった。三行広告のほとんどが、実態のある相応に信頼できる営業内容を伴っているのに対して、アダルト通販広告はその内容について信用度が極めて低いものが少なくないという特徴である。

 こうした当時のアダルト通販で、まともに「無修正」とか「丸見え」などという雑誌や写真が送付されてきたという話は、聞いたことがない。洋物のアダルト雑誌の粗悪なカラーコピーをとじただけの代物などが送られてくるなどはよいほうで、送金してもナシのつぶてというケースも少なくなかった。

嘘だと思ってもついつい注文しちゃうのが男心

 気になるのは、こうした広告の掲載料である。かつて成人向け実話誌の編集に携わったという人物によれば、「広告同様、いい加減だったよ」とのことだ。

「当時のエロ本は、今の雑誌と違って実売に頼っていたので、広告はどうでもよかった。広告料は、タダみたいに安かったんじゃないかな。それから、請求しても踏み倒されることが多かったと聞いたこともあるよ」

 こうしたデタラメなアダルト広告も、80年代に入ってAVやダイヤルQ2などが台頭してくると、急激に姿を消していくのである。
(文=橋本玉泉)

 

広告批評 336号

 
アダルト通販広告も歴史の1ページ?


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