4党が出席、AV新法シンポジウムで法改正の動きが加速

「AV産業の適正化を考える会」第2回シンポジウム

 令和4年6月のAV出演被害防止・救済法(AV新法)施行から、見直し条項で定めた2年以内の期限が令和6年6月に迫る中、「AV産業の適正化を考える会」による2度目のシンポジウムが4日都内で開催された。

 パネリストとして制度アナリストの宇佐美典也、弁護士の平裕介、エンターテイメント表現の自由の会代表の坂井崇俊、関西大学教授守如子(もり なおこ)らが出席し、AV新法の問題点を指摘した。

 国会議員は、日本維新の会の堀場さち子衆議院議員、NHKから国民を守る党の浜田聡参議院議員、国民民主党のたるい良和氏(玉木雄一郎代表の代理)が出席し、立憲民主党の川田龍平参議院議員もリモートで参加した。

星乃莉子が国会議員に直接AV新法改正を訴え

 パネリストとして参加した女優の星乃莉子は、「国会議員の先生に当事者の意見を聞いてもらいたい。悲しい女の子が増えないように願っている」と話した。

 女優の星乃は「1ヶ月‐4ヶ月の問題は、5ヶ月も公表ができず、自由がない状態だとデビューして感じた。この法律が業界を全く知らない人が決めたのは問題。自分の意志でまじめに取り組んでいる人も被害者扱いされることは、悲しいというか尊厳を害されていると感じる」と述べたうえで、「この法律がどうなるかによって当事者として自分の人生を考えるきっかけになった。女性一人一人の人生を左右する法律であることを考えていただきたかった。3ヶ月で決めるのではなくもっと当事者の意見を聞いて決めてほしかった。」と訴えた。

星乃莉子氏

わずか3ヶ月で施行された「AV新法」は業界で負の連鎖を生んでいる

 早くからAV新法に疑問を投げかけ、SNS等で問題点を指摘していた宇佐美氏は、法規制である「AV新法」と業界の自主規制である「適正AV」の今後のあり方の関係について発表した。出演強要問題に端を発し第三者委員会の設立、政府の実態調査と課題整理を踏まえ、さまざまな自主規制項目を策定しそれをIPPA(知的財産振興協会)加盟メーカーに順守させた「適正AV」と比べ、十分な議論と当事者へのヒアリングが行われないまま、わずか3ヶ月で「AV新法」が施行された経緯を述べ、施行後は1ヶ月‐4ヶ月ルールによる製作期間の強制的延長と、取消権による契約のリスク増大によって労働環境の悪化し負の連鎖が起きている実態を紹介した。

 そのうえで、現状の「AV新法」による過剰規制が本来は自主規制の領域であるはずの「表現の自由」や「職業選択の自由」にまで踏み込んでいるとし、AV新法改正の議論を通じて官民で問題意識をすり合わせ、法規制と自主規制の適切な分担を再定義すべきと述べた。

 これを受け川田議員は「当初の法案から規制の範囲が大きくなった。業界の人たちの意見を十分に聞かず拙速に決まってしまった。この2年どうだったのか検証をしっかりと行い、表現規制の問題、人権の問題を含めて検証して見直しをする方向性を話し合っていければ」とAV新法改正に向け検証が必要と述べた。

 堀場議員からは「女性が(AV)産業に嫌々だったり、強制されて入らざるを得なかったりして、その人たちを法律で守ることができるならばいいと思っていた。一方でセックスワークが女性の仕事の選択肢の一つとしてあってもいい、と強く思っている。業界の調査が大事であり、男女共同参画局にもプッシュをしていきたい。この法律で救われた女性がいるであろうことを評価しつつも、それによって困っている人がいることもしっかり理解し、改正に向けて頑張らせていただきたい」と語った。

宇佐美典也氏
川田龍平参議院議員
堀場さち子衆議院議員

職業選択の自由や表現の自由に全く触れられていない「AV新法」

 また平裕也弁護士からは、AV新法施行時に出版された逐条解説「AV出演被害防止・救済法Q&A」(立花出版 監修・衆議院議員元法務大臣山下貴司)において、「職業の自由」「職業選択の自由」「営業の自由」そして「表現の自由」という言葉がまったくでてこないことを問題視。本来立法に際しては規制される側の権利についても慎重に比較考量されなければならず、立法した国会議員がルール作りの基本すらわからず作った法律であり、改正されるべきであると述べた。

 国民民主党から参加したたるい良和氏は「国会議員の中にはAVがなくなればいいと思っている人たちがいる。ところがストリーミングになり、なくなるわけがない。AVがなくなったら介護でもやればいいと言ってる人もいた。潰しにかかっている法律だと思う。この法律はまったく経営感覚がない人たちが作ったもの、経営感覚を持ってやらないと、もっと悲惨な道を歩むと思うのでその点を考えていきたい」と力強く発言。

 N党の浜田聡議員は「日本は1日1つのペースで規制が増えているとんでもない国。一方欧米では規制の評価をしっかりとした上でおこなっている」と問題点を指摘した。

平裕介弁護士
たるい良和氏
浜田聡参議院議員

漫画業界、フェミニズム業界の専門家からも問題点が指摘

 エンターテイメント表現の自由の会代表の坂井崇俊氏は、漫画、アニメ、ゲームがこれまでどのように規制されてきたかを実例をもとに紹介。AVをめぐる問題と、漫画、アニメ、ゲームに対する規制の類似点を上げた。また、団体が有志で国会議員へのボランティア活動を長年行っていることも伝え、そういったロビー活動が大事であることも紹介した。

 また、関西大学社会学部教授の守如子氏はフェミニズムの立場から表現の自由とAV新法の問題を取り上げ、性産業で働く女性への偏見が根底にあり、女性は性的で無垢でなければならないと、押し付けており、AV新法は救済的な視点が強く、現在働く当事者である出演者の視点が置き去りになっているとし、弁護士や研究者だけでなく、その職に就いている当事者の参加を得た実態調査をしたうえで、政策決定を行い、どのような出演者も不利にならないシステムの構築の重要性を述べた。

坂井崇俊氏
守如子氏

AV新法の問題は自公が範囲を広げたことが原因

 宇佐美氏は「最後なので思い切った発言を」と前置きしたうえで、「立憲民主党の議員が主導しておかしな法律を作ったといわれているが、現実は当初の立憲の案は18~19歳を対象にしており問題はなかった。全年齢に対象を拡大した自民公明が問題だと思っている。自公は今回の件で黙っており、立憲民主をスケープゴートにしている。自公にもきちんと向き合って法改正してほしいと思う」と訴えた。

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