セックス体験談【最終回】僕にとってセックスとは?

隔たりセックスコラム連載【最終回】「僕にとってセックスとは?」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。


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※イメージ画像:Getty Imagesより

 経験人数5人を達成したい。それが最初のセックスの目標だった。

 中学生の時に初めての彼女ができた。2年間付き合ったが、セックスはできずに別れてしまった。その原因は自分にあった。セックスをしたいと、彼女に言い過ぎてしまったのだ。彼女はまだセックスに抵抗があった。中学生だったから、それは当然だった。彼女はセックスしか望まなくなった僕に幻滅し、別れを切り出したのだった。

 童貞卒業のチャンスを逃し、高校時代は童貞の日々を過ごした。その日々が長くなれば長くなるほど、セックスへの憧れは大きくなっていった。親の目を盗み、家のパソコンで何度もAVを見た。そこに映っていたのは、裸で交わる男女の姿だった。男は乳房を舐め、女は男性器をしゃぶり、男性器が女性器の中を出たり入ったりしていた。乳房は揺れ、女は卑猥な喘ぎ声をあげていた。

 その男女の交わり合いを見れば見るほど、セックスに対する憧れは大きくなっていった。そこに映っている男が自分だったらと想像し、何度も自慰をした。セックスをしている自分を想像し、興奮した。早くセックスがしたい。その欲望が童貞の日々の中で、風船がゆっくりと膨らむようにどんどん大きくなっていった。

 高校を卒業し、大学生になって恋人ができた。挿入の手前までいったが、男性器が中に入らなかった。やっとセックスができると思ったのに、早く童貞を卒業したいのに、と僕は焦った。セックスを何度も求め、結果、中学生の時と同じように彼女を傷つけてしまった。

 欲望は破裂しそうなほど、パンパンに膨らんでいた。早くセックスがしたくて仕方がなくなっていた。だんだん、童貞な自分は価値のない人間なのではないか、と思うようになった。周りの同級生は次々に童貞を卒業していた。何であいつがセックスしていて、僕はセックスできないんだ。早くセックスがしたい。早くセックスがしたい。頭の中はそんな思考でいっぱいだった。

 膨れ上がった欲望はついに破裂し、僕は恋人ではない人で童貞を卒業した。恋人とできなかったという事実に全てがどうでもよくなり、やけくそにしたセックスだった。

 そんなセックスだったからか、憧れのセックスを初めて体験したというのに、僕が抱いた感想は「こんなものか」だった。

 セックスは自分が想像した以上のものではなかった。むしろ、想像通りでもなく、想像以下だった。なぜこんなものに憧れを抱いていたのだろうか。高校生の時にパソコンで見ていたAVと何が違うのだろうか。僕はセックスがわからなくなった。そして、それ以上にわからなかったのは、そんなセックスをしてもなお、また早くセックスしたいと思っている自分自身だった。

 彼女以外の人で童貞を卒業した僕は、もう「誰とやるか」なんてどうでもよくなっていた。とにかく、セックスがしたかった。違う人とすれば、僕の想像していたセックスができるのではないか。そして、スポーツが上手くなるには練習が必要なように、セックスにも経験が必要なのではないか。僕はそう考えるようになった。そしてできた目標が「経験人数5人」だった。

 これは実験だった。単純に僕がセックスが下手なのか、それとも体の相性の問題なのか。問題が下手なことであれば、回数を重ねて上手になればいい。問題が相性ならば、たくさんの人とセックスしてみればいい。これは僕が憧れていたセックスに出会うための挑戦であり、実験だった。

 そうして僕は目標を達成するためにネットを使った。使ったのは主にmixiとマッチングアプリだった。僕がしたことは本当に単純なことだった。ただひたすらに数多くの女性にメッセージを送り、デートに誘う。それだけだった。

 狂ったようにたくさんの女性にメッセージを送った。人はいっさい選ばなかった。初めは会うことすらできなかった。だんだんと会えるようになっても、ただお話をしただけで解散することばかりだった。セックスをするなんて、夢のまた夢だった。

 でも、会うことができた。食事をすることができた。カラオケに行けた。体に触れることができた。手を繋ぐことができた。キスをすることができた。胸を触ることができた。モノを触ってもらうことができた。そんな小さな成功体験が、僕を動かしていた。体験を積み重ねていくと少しだけコツみたいなものがわかるようになった。そしてついに、僕はネットで出会った女性とセックスをすることができたのだった。

 それは、とても興奮する体験だった。正直、セックスが気持ち良かったのかはまだよくわからなかった。だが、ネットで知り合った初対面の女性とセックスをしたという事実に、僕はものすごく興奮した。ネットで知り合い、リアルで会う。初対面の恥ずかしさと緊張を抱えたまま、当たり前のようにラブホテルに入る。そしてふたりだけの空間になった途端、唇を重ね、性器を弄り合い、ひとつになる。それは高校時代の僕が想像していなかったセックスの世界だった。

 そんなセックスの世界をもっと味わいたいと思った。僕はさらに狂ったようにメッセージを送り、何人もの女性と会った。気づけば、あっという間に目標だった「経験人数5人」を達成していた。それでも、欲望は止まらなかった。僕は新たに「毎月最低でも1人、新しい女性とセックスをする」という目標を立て、行動した。自信のついた僕はネットだけでなく、身近なところにも手を出すようになった。美容師さん、バイトの後輩、就活で知り合った女性。こうしてセックスの回数と経験人数はどんどん増えていった。

 様々な女性とセックスをした。可愛い人もいれば、お世辞にも可愛くない人ともした。自分よりも太っている人ともしたし、ガイコツみたいにガリガリな人ともした。彼氏がいる人ともしたし、自分の母親よりも年上の人ともした。積極的な人もいれば、消極的な人もいた。本当に様々な女性とセックスをした。

 人数と回数を重ね、僕は高校時代に思い描いていたようなセックスができるようになっていた。濃厚なキスをし、呼吸を荒くしながら互いの性器を貪り、そして濃密に交わり合う。そんな憧れていたセックスができるようになった。

 けれども、そんなセックスを重ねれば重ねるほど、性欲が増していくのと同じように、僕の中でとある不安が大きくなっていった。それは、「幸福だけに満ち溢れたセックス」が一度もなかったことだ。

 どれだけ濃密に交わっても、どれだけ気持ち良くなっても、どれだけキスを交わしても、どんなセックスにも必ず「悲しみ」「後悔」「自己嫌悪」「賢者モード」がセットになっていた。セックスをすればするほど、そういった「負」の感情を無視できなくなった。

 セックスが終わればすぐに帰りたくなった。帰ったら、その行動をものすごく後悔した。そしてそんな自分が嫌になった。それなのに、またセックスをしたいと狂ったようにメッセージを送っていた。そしてセックスをし、また自己嫌悪に陥る。同じことを何回も繰り返す自分が嫌だった。

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