セックス体験談|ライブのあと、広島の夜、彼氏のいる女と…#3

隔たりセックスコラム連載「ライブのあと、広島の夜、彼氏のいる女と…#3」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。

 

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※イメージ画像:Getty Imagesより

 改札を出ると生暖かい空気が肌を撫でた。

 電車の中は冷房が効きすぎていたから、体が冷えてしまっていたのだろう。空気の温度に敏感になっている。広島から東京に戻ってきたとしても、暑さは変わらない。

 肌に冷気をまとったような体は外の空気にはすぐ馴染まない。その体で東京の街を歩いていく。時刻はもう夕方になっていた。今では、昼に広島にいたことさえ不思議に思う。

 真知子さんとは夜に待ち合わせしているので、まだ少し時間があった。待ち合わせ場所の新宿駅に行き、漫画喫茶に入って時間を潰すことにする。

 備え付けのパソコンを開くと、学生の頃に付き合っていた彼女と漫画喫茶に入った時のことを思い出した。ふざけてAVを流したら、彼女に怒られたのだ。今はAVを見たところで、誰も怒ってくれる人はいない。

 昨日、広島のラブホテルで小夏さんがシャワーを浴びている間にAVを見たことと、学生時代のその思い出が重なる。何も変わっていない自分に笑いたくなった。

 だから、ここではAVを見るのをやめることにした。なんにせよ、朝に2回もヌいている。さすがにモノへの負担が大きくなってしまう。なので、漫画を何冊か読んで時間を過ごした。この後、真知子さんに会うと思うと内容はまったく入ってこなかった。

 ただページをめくるという作業をしながら、今日は真知子さんとセックスできるのだろうか、と考える。夜に女性に会うというただそれだけで、思考は簡単にセックスへと飛躍してしまう。それは、マッチングアプリで出会った女性のほとんどとセックスをしたという経験からくるものだろう。実際にこれから会うのが会社の同期や学生時代の女友達だったとしたら、セックスには誘えない。

 携帯を確認すると、22時を過ぎていた。よし、と立ち上がる。これから真知子さんに会いにいくぞ。あと2時間で終わってしまうが、やっと今日が始まるという感覚だった。そういえば、昨日のこの時間は小夏さんとラブホテルに向かっていたと思い出す。今の僕は、この時間にならないとやる気が出ないらしい。

 満喫を出て、真知子さんが泊まっているというホテルに向かった。真知子さんからは、仕事が終わったら一度ホテルに帰りたい、と言われていた。

 新宿駅から10分ほど歩いたところにある、東新宿駅の近くにそのホテルはあった。ここに真知子さんがいる。今日はここに泊まるのかもしれないと思うと、不思議な気分になる。その時は、真知子さんとセックスしているのだろうか。

 ホテルの入口の自動ドアが開いた。そこから淡い水色のロングスカートを身にまとった女性が出てきた。ボブヘアーの黒髪が揺れている。耳に揺れる星型のイヤリングがホテルの照明に反射し、本物の星のようにキラリと光る。

 

「隔たりくん?」

 

 その女性は真知子さんだった。

 

「はい。真知子さん」

 

 真知子さんが優しくはにかむ。プロフィール写真とかわりない、いや、むしろ画像よりも綺麗だった。名前の文字にあるように、知性的な印象を受ける。その優しい笑顔に、思わず顔がほころぶ。

 

「まさか東京で会うなんて思ってなかったです」

「ほんとだよね。昨日、広島の私が東京にいて、東京の隔たりくんが広島にいるの不思議だった」

「真知子さんが東京にいるって聞いたときは、自分の運の無さを嘆きましたよ」

「私もだよ。せっかく隔たりくんが広島に来てるのになんで~って思った」

 

 真知子さんが笑う。知的な雰囲気を持つ女性の笑顔は、狂気的に眩しい。

 

「でも、こうして会えてよかったです」

 

 

 ホテルの近くにあるオシャレな居酒屋でご飯を食べることになった。席についてビールを注文すると、「私も」と真知子さんも続く。

 

「ビール飲めるんですか?」

「少しだけね」

 

 アプリで連絡を取っているとき、少しだけお酒の話になったことがある。そのとき、真知子さんはあまりお酒を飲まないと言っていた。

 

「ビールふたつお待たせしました~!」

 

 店員さんからビールを受け取り、真知子さんに渡す。水色のワンピース姿の真知子さんにビールは似合わなかった。おしゃれな色をしたカクテルやワインの方が似合うだろうと思った。僕に合わせてくれているのだろうか。

 控えめに乾杯して、ビールを体に流し込む。体がアルコールに触れて、今朝のことを思い出した。

 朝起きたら小夏さんがいなかった。やけくそに2回ヌいて、コンビニでビールを飲んだ。そんな朝を過ごしたのに、今は真知子さんとオシャレな場所でビールを飲んでいる。ビールの味は、そこまで変わらない。でも、「幸せ」「喜び」みたいなものは、今の方がより感じる。

 テーブルの下で、股間が少し疼いた。

 おつまみをつまみながら、互いの今日の出来事を話し合った。真知子さんは仕事のこと、僕はライブのことを話した。

 

「せっかく東京に来たから観光したいなって思ってたんだけど、仕事が早く終わらなくてできなそうなの」

「そうなんですね。それはつらいですね」

「うん。東京なのに、広島とやってること変わらないよ。隔たりくんは広島どうだった?」

「楽しかったですよ。ライブ最高でした」

「宿は広島駅でとったの?」

「そうですね。広島駅のホテルに泊まりました」

 

 その日に出会った女性とラブホテルに泊まった、なんて口が裂けても言えない。

 

「でも、ライブっていいよねえ。私も学生の頃よく行ったなあ」

「めちゃくちゃよかったですね。本当に最高でした」

 

 スタジアムを埋め尽くすたくさんのファン。歌声に合わせ、音楽に合わせ、みんなの心がひとつになったようなあの熱気と高揚。

 

「何万人もの人々が、たったひとつの音楽で一体化する感じがすごく好きなんですよね」

 

 名前も知らない、住んでる場所も仕事も違う、たくさんの人たち。

 

「こう、心がひとつになるというか」

 

 どこの誰かもわからない人たちと、同じ時間を共有すること。

 

「それがすごく快感なんですよね」

 

 その誰かと繋がったような感覚が、ものすごく幸せだということ。

 

「なんとなくわかるなあ。その感覚」

 

 真知子さんがビールを飲む。ジョッキにはまだ半分以上残っていた。

 

「でもさ、ライブ終わったあとって少し寂しくならない?」

「寂しい?」

「うん。楽しみが終わっちゃったーみたいな。明日から仕事かよーみたいな」

「ディズニーの帰り道みたいな感じですかね?」

「そうそう。夢が終わって現実に戻っちゃうあの感じ、寂しくない?」

 

 真知子さんの言うことは、僕にも体験があった。ライブのために日々を頑張れたが、逆にライブが終わってしまうと明日から何を目標に頑張ればいいかよくわからなくなることがあった。そう、いつもはそう思うはずなのに、僕は今、ライブが終わったあとのそんな寂しさを感じていない。

 ライブが終わっても、まだ夢の中にいるような気分だ。小夏さんとセックスできなくても、現実に戻ったという感覚はなかった。朝に2回もヌけたのは、賢者モードに襲われなかったからだ。つまり、僕はまだいつものようなライブ後の寂しさを感じていない。

 まだ、夢が続いているのかもしれない。

 目の前にいる真知子さんを見つめる

 

「あっ!」

 

 急に真知子さんが表情を崩した。目線は上の方を向いている。

 

「どうしたんですか?」

 

 その目線の方を向くと、そこには時計があった。もう時刻は0時半を過ぎていた。

 

「隔たりくん、終電大丈夫?」

 

 僕は慌てて携帯を開き、終電を調べるふりをした。そう、「ふり」をした。なぜなら、もう終電がないことはわかっているから。

 昨日も終電を逃したな、と冷静に思う。

 

「あ、もうないです…」

 

 しかし、言う時は焦った感じで、甘えた感じで。

 

「わーごめん。気づかなかった」

 

 お会計をし、店から出た。不安そうな視線を向けてくる真知子さんに、僕は言う。

 

「正直、まだ帰りたくないです。だって真知子さん広島の人だから、次いつ会えるかわからない」

 

 うん、と真知子さんは頷いた。それが相槌なのか、同意なのか、共感なのかはわからなかった。

 

「さっきディズニーの話したじゃないですか」

 

 ディズニーの帰り道は、夢から覚めて現実に戻るようで寂しい。

 

「まだ気持ちはディズニーの中にいたいです。夢の中にいたいです」

 

 その言葉を聞き、真知子さんは「じゃあ行こうか」とホテルの方に向かって歩き始めた。

 

「一人用の部屋だから狭いと思うけど許してね」

「大丈夫です」

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