稀代のカリスマAV男優・沢木和也、ついに逝く…

2020年インタビュー時の沢木和也氏/写真=神楽坂文人

伝説の男・沢木和也、ついに死去…

 90年代前半に「ナンパ」という文化をAVに持ち込み、凛々しいルックスと巧みな話術で女性を悦ばせ、世の男性を興奮させたカリスマAV男優・沢木和也。昨年、がんを告白して闘病していた彼がついに亡くなった。享年54歳。早すぎる死にアダルト業界をはじめ各界から哀悼の声が上がっている。

 昨年、メンズサイゾーでは「ひとり息子に何か遺してやりたい」という沢木氏の切実なる想いを聞き、病魔と闘いながら現場に立つ男のもとへ向かった。その際のインタビューが以下となる。

がん闘病中のAV男優・沢木和也  男優人生33年――。ある世代の男性なら誰でも知っている男が病を告白した。ステージ4のがんだという。  男は90年代前半に「ナンパ」という日常の延長線上にある、男女の駆け引きを上手くAVに

 インタビュー時の沢木氏は闘病中とは思えないほど力強く、生命力にあふれていた。しかし――今年の春ころに改めて連絡をとってみると彼の返答は弱々しく、どこか達観しているような印象を受けた。

 一方、インタビューを担当したライターによると、亡くなる直前までかなり前向きだったという。春には沢木氏自らハンドルを握って車を走らせ、インタビューや取材などのメディア出演にも積極的だったそうだ。

 闘病中には弱気になるときもあれば気力・体力ともに充実することがあったのだろう。その壮絶な闘いには言葉がない。

 そしてついに…。

 沢木氏はインタビュー中に何度か「がんでよかった」と話していた。そのワケを聞くと「死ぬ前にいろいろ整理できるからさ」などと彼は屈託のない笑顔で言った。その笑顔の裏には「AV男優」という職業に心血を注いだ男のリアルな思いが込められている気がした。AV男優の現実というか、残酷さというか…。

 彼は今のAV界について「華やかすぎるよね」とも笑っていた。アイドル的な活躍をする女優たちに対して危惧するところがあるのか、「やっぱりAVってアングラじゃなきゃダメだよ」と言っていた。

 仕事柄、筆者は普段からAV女優と会うことも多いが、スター女優ほどプロ意識が高く、自分の仕事にプライドを持っているのがよくわかる。そして、沢木氏の言うように「AV女優」に幻想を抱くことなく、他人では計り知れない覚悟を決めている。

 その一方で「AV女優」というより「タレント」や「芸能人」という意識が強く、性的な内容の仕事に関して抵抗がほとんどないという女優も少なくない。そうした感覚を持つ女優は増えている気がする。

 覚悟をもってデビューする女優と個人的な興味からデビューする女優――。どちらが正しいということではなく、今のAV界にはさまざまな理由で活動する女優がいる。

 沢木氏は今のAV女優に対して、どんな想いを抱いていたのか。そのあたりのことをもう少し聞きたかった。きっと彼の言葉は今のAV女優、もしくはAV界に飛び込もうと思っている女性に響いたことだろう。稀代のナンパ師である沢木和也氏の言葉は女性の心を掴んで離さない。後押しも苦言も真摯な言葉でAV女優たちを勇気づけたはずだ。アダルト業界に携わるメディア人として、彼の言葉をもう少し残したかった。

 真の伝説となってしまったカリスマAV男優・沢木和也氏のご冥福をお祈り申し上げます。

沢木和也…
1980年代から活躍するAV男優。いわゆるナンパものの先駆けとして絶大な人気を博したレジェンド。2020年4月に食道がんと下咽頭がんに冒されていることを告白。以降、さまざまなメディアに登場し、「息子のため」とクラウドファンディングした自伝プロジェクトなどに力を注いだ。自叙伝『伝説のAV男優 沢木和也の『終活』癌で良かった』(彩図社)が発売中。

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