セックス体験談|女と男の駆け引き#3

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※イメージ画像:Getty Imagesより

 都さんは一人暮らしだ。ということは、最近誰かとセックスをしたということだろうか。

 ここの地区のゴミ出しの日程はわからない。ただ、ゴミ箱に入っているということは、少なくともこのコンドームは1週間以内に捨てられたものだと思われる。女性の一人暮らしの家にコンドーム。なぜだかわからないが、僕は自分の体がだんだん熱くなっていくのを感じた。

 僕はもう一度、恐る恐るゴミ箱の中を見た。そして漁っていた。それはほとんど反射的な行動だった。使用済みのコンドーム本体があるということなんて考えていなかった。もしかしたらもっとコンドームの袋があるかもしれない、と僕は好奇心に引っ張られていた。都さんの家の中に見つけたセックスの形跡を探し当てたかった。

 僕は真っ暗闇な部屋の中、ゴミ箱を漁った。すると、もうひとつコンドームの袋が見つかった。それも封が破られていて、本体はなかった。

 僕はそのコンドームの袋を見て想像を膨らます。都さんが最近この家でセックスをしたということを。

 都さんは「キスをすれば相性がわかる」と言っていた。相性というのはおそらく、体の相性だということは簡単に理解できた。キスをするだけで体の相性がわかる。その都さんの言葉の根拠をこのコンドームが物語っていた。都さんは自分の家のゴミ箱にコンドームの袋を簡単に捨てられるくらい、セックスの経験があるのだ。

 僕はコンドームの袋をそっとゴミ箱に戻した。電気もつけず暗闇の中、一人暮らしの女性の部屋のゴミ箱を漁っていたことを冷静に思い出し、自分を恥じた。先ほどまで鍵を開けたら空き巣が入ってくるかもしれないと心配していたが、これじゃあまるで僕が空き巣じゃないか、と笑いたくもなった。

 ソファに座って今後のことを考えてみる。このコンドームの袋を発見したことで、僕は少し自信を感じていた。怯える必要はない。このコンドームをうまく利用できれば、都さんとそういうことができるのかもしれないと、希望が湧いてくる。

 人は暗闇の中に居ると周りが見えず、どこに向かえばいいかわからなくなる。その暗闇の中で微かな光を発見したとしたら、その光を目指して前に進むだろう。方向が提示されるだけで人は安心する。たとえその光の先が、間違った道だとしても。

 僕は暗闇の中に一筋の光を見つけたような感覚だった。正確に言えば、光ではなくコンドームの袋だが。

 僕はこれから、何をすべきかを考えた。まず、この家を出るという選択肢はなくなった。だから、この家で都さんを待つ。都さんはいつ帰ってくるかはわからない。

 もし、都さんの友達が来たとしたら、その時はコンドームの袋を見せればいい。たまたま見つけてしまったと、都さんが最近そういうことをしていて、そして僕とキスをしてくれたから、てっきり僕もそういうことができると思ってしまったと。

 警察が来ても同じことを言おう。ラインを見せれば、都さんの同意があって家に来たことが証明できる。苦しい言い訳なのはわかっているが、言い訳があるだけでも心はだいぶ楽になる。

 絡まっていた蜘蛛の巣から抜け出せるような気がした。いや、もう抜け出しているのかもしれない。コンドームの袋は僕に勇気を与えた。都さんの手の中で転がされるのはここまでだ。ここからは対等な関係で都さんとやり取りしたい。

 僕は床に座り、じっと都さんを待った。暗闇に目が慣れてしまっているから、電気をつける必要はなかった。足が少しジンジンとする。ほんのわずかな時間ではあるが正座をしていたからかもしれない、と思う。そうだ、正座で待っていよう。そしたら、都さんが外に出たことに対して少し罪悪感を覚えるかもしれない。

 僕はすぐに正座できるように床に座りながら都さんのことを待った。時計を見ると、3時だった。まだ30分しか経ってないのか、と驚く。体感的には都さんが部屋を出て1時間以上が経っているように感じられた。

 暗闇の中の孤独というものはこんなにも時間の進みを遅らせるのか。確かに楽しい時間はあっという間に過ぎる。でも孤独な時は全く時間が進まない。そこは逆であって欲しかった、となぜか時間に対して怒りが湧いてくる。都さん、早く、帰って来て。

 その時、ガチャっと音がなった。反射的に僕は正座の格好になる。

 

都さんが、帰って来た。

 

 身体中に緊張感が一気に走る。友達を連れて来たのか、それとも警察か。どっちが来てもいいように、僕は頭の中で言い訳を復唱する。そしてゴミ箱の中にあるコンドームを思い出す。大丈夫だ。大丈夫だ。

 

「あれ、どうしたのよ。起きてたの?」

 

 都さんは部屋に入ると開口一番にそう言った。どうやら僕がソファで寝ていなかったことを不思議に思っている様子だった。

 

「え、あの…」

 

 ゴミ箱の中にコンドームの袋があったので、という言い訳を言う前に、都さんは部屋の電気をつけた。部屋一面が明るくなり、僕の視界を刺激してくる。眩しい。ゆっくり目を開くと、都さんは僕を見下すように立っていた。そこには、都さんしかいなかった。

 嬉しい、とシンプルに思った。都さんだ、嬉しい、と。

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