ゴールデンウィークも終わって、すっかりリンのことを忘れてかけていたある日、LINEにメッセージが入っていた。
「お久しぶりです。なかなか時間が取れなかったけど、よかったら一度お会いしませんか? 就職のメドもついたので、バイト終わりの日の7時くらいだったら会えます」
仕事の予定を確認し、数日後に会う約束をする。バイト終わりだと新宿なら会いやすいというので、新宿駅近くで待ち合わせすることになった。
約束した時間ちょうどに待ち合わせ場所に行くと、リンらしき女性が立っていた。黒のスカートに白のカーディガンを着ていて、可愛らしい雰囲気の女の子だった。
「たけしさんですね、今日はよろしくお願いします」
「ちょうど夕食どきだから、少し食事でもする?」
「はい、そうですね」
近くのパブに入って、飲み物と食事を注文した。
「就職活動はもういいの?」
「はい。来年から銀座のギャラリーで働くのが決まったので、もう就活は終わりなんです」
「ギャラリー?」
「あたし美大で油絵の勉強をしてるから、そのツテでギャラリーに就職するんです」
「大学って美大だったんだ」
「そうなんです」
「じゃあ、バイトっていうのはギャラリーで働いてるの?」
「いえ、美大ってなかなか現役じゃ合格できないから、みんな予備校とかに通うんです。浪人生が入試の実技試験の練習をするのを手伝ったりとか」
「へぇ、そうなんだ」
「あと、デッサンのヌードモデルとか」
…!? 私は少し驚いた。リンは当たり前のように言う。
「たまにだけど。洋服着てポーズつけるより、ヌードの方がバイト代もいいから」
「じゃあ人前で脱ぐのも平気なんだ。デッサンするのは男性とかもいるんでしょ」
「もちろんいますよ。でも、デッサンのモデルは仕事だから脱ぐのは平気だけど、エッチするときに裸を見られるのは恥ずかしい」
「そういうもの?」
「モデルの場合は、同じポーズでずっと動いちゃいけないから、けっこう大変な肉体労働ですよ。あっちこっちが筋肉痛になっちゃうの」
「じゃあアダルトビデオみたいな展開になったりとかしないの」
「そんなの、ありませんよう」
リンが笑う。お店の中だったが、私は下半身が疼いてくるのを感じていた。
「でも、男の人があたしのオッパイとかあそこをじっと見ていて、オチンチンがだんだん勃ってくるのがわかっちゃうの。あたしもなんだか変な気分になっちゃうから、バイトが終わった後は必ずオナニーしちゃう」
実はね、とリンが顔を寄せてくる。
「さっきまでモデルのバイトしてたの。だから、なんだかしたくなっちゃってるんだ」
どうやらわざわざヌードモデルのバイトの後に、私と会う約束を入れたようだ。食事もそこそこに会計を済ませ、リンと一緒に歌舞伎町に向かった。