常識から逸脱した驚くべき事件…妻が夫の睾丸を握りつぶし殺害

『東京朝日新聞』明治42年9月3日

 
 そして、9月9日の判決では、裁判長は一審の無罪を取り消し、すみに懲役6年、証人6人には偽証罪を認め懲役6ヶ月から3ヶ月が、それぞれ言い渡された。

 判決言い渡しに際して、すみは頭を垂れて聞き入っていたが、やがて顔を上げると6人のほうをカッとにらみつけると、「覚えていろ!」と怒鳴って退廷した。しかも、怒鳴られた6人は、「病死だとウソをついてやったのに何だ!」と怒鳴り返す有様だった。

 事件を報じた新聞記事には、「大事件やら滑稽やら」などとリードがつけられている。確かに睾丸握り潰し事件というは面白おかしいイメージを伴うが、出棺直前に遺体から証拠を採取する警察や、事件立会いの医師の証言などを精査する検事など、事件の真実に迫ろうとする人々の熱意を感じさせる事件であった。
(文=橋本玉泉)

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