「必要なのは卑猥感! 美しくあってはならない」昭和のエロスを追及する孤高のAV監督・ヘンリー塚本インタビュー!

――役柄もありますが、起用する男優はレギュラーで年輩の方が多いですよね。

「たまに若い男優を使うんだけど、やっぱり深みが出ないんだよね。勃ちの面でも私の演出に耐えられる若い男優さんはいないね。カット割りをしていると、すぐに萎んじゃうんです。そうすると、どうしてもベテランになっていっちゃうんだよね」

――常に男は脱ぐ前から勃起しているのも特徴です。

「そこは私の作品に絶対必要な部分でね。ヤリたいと思ったら普通は勃ってるじゃないですか。萎んだ状態で『しゃぶってくれ』なんて言ってるのは性欲がないってことですよ。女を目の前にしたら、会話しているうちに勃っていかなきゃ駄目なんです。現実もそうですよ」

――あと登場する男たちはふんどし姿が多いですよね。

「日本の男は、ふんどし姿が一番さまになりますよ。それだけで昭和らしいし男らしいから絶対に欠かせない。あと女はズロース、着物の場合は(下着)なし!」

――下着はともかく、昭和を感じさせる衣装を揃えるのも大変ですよね。

「大変ですよ。毎年、世田谷のボロ市に買いに行きます。新品は駄目だね。古ぼけた時代を感じさせるものじゃないと」

――ロケーションについてもお伺いしたいんですが、素晴らしい風景の農村を舞台にしていることが多いですよね。

「私は生まれが東京の亀戸で、疎開したのが千葉県の房総なんです。『房総女にマラを見せるな!』(『女たちの昭和 好き者女たちの生きとし生ける日々…/女は卑しきもの、されど女体は愛おしき』収録)というタイトルもあるぐらい、私の作品には房総がいっぱい出てきますけど、疎開した時の風景が今でも、まんま残っている場所があるんです。そこに行っただけで当時のことが走馬灯のように蘇って、作品を撮りたい! ってなるんですよね。あとは若手社員にあちこちロケハンに行かせて、いろんな場所を探してもらっています。人気のない山奥に行くと、房総のように昭和を感じさせる素晴らしい景色が残っているんです。ただ農村で去年までは素晴らしい景色だったのに、今年行ったら後継ぎがいなくて雑草だらけになっていたなんてこともあります」

 

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――ここまで自然を取り入れるAVは他にないですよね。

「昭和を描くには景色が重要な要素になってきますからね。観ている人がノスタルジーの世界に入っていけるんです」

――大自然の中に人物を配置した俯瞰撮影も印象的です。

「僕は俯瞰が好きでね。通常とは違った視点から見ることができるので、違う世界に引きずり込むことができるんだよね。私はローアングルも多く使うんだけど、これも俯瞰と同じ。人が見ないアングルから撮ることで違う世界を垣間見ることができるんですね」

――現場でアングルは決めるんですか。

「脚本の段階で決まっていますね。俯瞰で撮るためには用意するものもありますからね」

――前後に人物を配置した縦の構図も多いです。

「それも好きなんだね。スタジオ撮影だと、他社でも同じスタジオを使っているじゃないですか。それをいかにFAの世界にするか考えると、他社とは異なるアングルで撮ることで違う場所に見える。前後に人物を配置することで、違うイメージを作ることができるんです」

 

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――短期間の撮影で、俯瞰やローアングル、縦の構図などを盛り込むのは大変ですよね。

「私の現場に来てもらうと分かるけど、うちの現場は大変ですよ。分刻みで頭の中にあるイメージをパッパと伝える。スタッフは大変だけど、24時間の中で90分の作品を撮らなきゃいけないとなると1分も無駄にできないんです。時間との闘いですよ。それを30年間繰り返してきて、そのテクニックもあるけど、最終的には情熱しかないと思うんだよね」

――視線劇と言っていいほど、監督の作品には視線も重要な役割を果たしていますよね。

「体を交えなくても目と目でセックスはできるんですよ。怒り、悲しみ、憎しみ、喜び、そして性欲もすべて目で表現できる。目の演技はドラマを描く上で必要不可欠ですね」

――セックスにしても、いかにもAVっぽくシステマティックな体位変換はせずに、時には正常位のみということもあります。

「正常位が一番やりやすいし、絵になるから多いんですけど、そればかりでは観る人も飽きてしまいます。どういう体位をすれば観る人が興奮して、その気になれるのか。この衣装の時はこう、この場面はこうとか、台本を書くときにきっちり体位も書くんですね。それを頭の中に描いて現場に持って行って、衣装と背景、昭和なのか現代なのか、レイプなのか近親相姦なのかなどを考えた上で、どの体位か決めるんですね。私の中で四十八手にはない体位もあって、どうしても説明できないのは『ヘンリー体位』と言うんですが(笑)」

――オリジナルの体位ですか(笑)。

「言葉にするのは難しいんですが、正常位で挿れた後に、女の子を横に倒してヤルんです。側位に似ているんだけども私自身が一番ヤリやすい体位なんですよね。愛液で汚れた毛むくじゃらの女性の性器に自分のが入っていく、それをまるで違ったアングルで楽しむことができる。それをローアングルで撮ると、入っているのがよく見えるんですよ。私がセックスを撮る上で大切にしているのは、挿入されている時の女の表情と、男女の生殖器が合体している二つをどういうアングルで描くか。二つを同時に見せるにはローアングルで、合体した生殖器の隙間から女性の表情や男性と接吻しているのが見えるように撮るんです」

――女性上位もローアングルで撮りますよね。

「私が床に這いつくばって下から撮るんですけど、決して美しくはない生々しさ、臭い漂うほど濡れている様を描きたいんだね。卑猥感というのかな、美しくあってはならないんですよ。セックスをキレイにしてしまうと、卑猥さと興奮度は半減してしまうんです。いつも匂い立つようなセックスを心がけていますが、それはローアングルで醸し出すことができるんです」

――一戦交えた男女が連続でセックスするシーンも多いです。

「一発でセックスを終えてしまうのはツマらない。元気の良い時は終わって数分後に、また勃ってくるじゃないですか。射精しないにしても一旦抜いて、また挿れるとかね。女性も挿れられる快感、抜かれる快感それぞれ違う訳だし、そこを撮りたいんだね」

――それほど前戯の描写は多くないですが、フェラやクンニは丁寧に描く印象です。

「女性にとって男性のそそり立ったペニスほど美味しいものはない。これを美味しく舐めるのが、まさしく性だと思うんですね。ぶっといサオが自分の中に入るんだから、舐めているうちに興奮してくる訳ですよ。逆に男にとっては好きになった女のアソコを舐めるのが最大の喜び。舐める、しゃぶるは、男女にとっては絶対に必要だし、それを生々しく描くことがポルノの真髄ですね」

――食事シーンも監督の作品に重要な要素です。

「昭和はひもじい時代もあった。食べることは生きること。生きることは性に繋がる訳でね。そういう意味で食べるシーンは欠かせないんですよ。食べることをしっかり描くことによって、生活感も滲み出てくるし、ドラマに奥行きも出てくるし、一生懸命生きていることが作品の中で表現できる。食べる、元気になる、そしたらセックスもできる。セックスと同じぐらい、いつも食べることにこだわっていますね」

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