水商売歴30年のプロは見た! ナンバーワンホステスになる女の条件

※イメージ画像:キャバクラの内幕がよくわかる名作『嬢王3~Special Edition~DVD-BOX』東宝

 会員制高級クラブ、キャバクラ、華やかな女性たちが勤める水商売の世界には、頂点に君臨する女性が必ずいる。それがナンバーワンだ。水商売歴30年で会員制高級クラブの店長を勤め、さまざまなホステスを見続けてきた水商売のプロは、ナンバーワンにはある3つの共通点があると話す。

「まずひとつ目は、自分を磨くことに努力を惜しまないということです。経済新聞を必ず読み、エステに通う。そういうことは当たり前。あるナンバーワンはアマチュア大会で優勝できるくらいのゴルフの腕を持っていました。企業のゴルフ接待には必ず声が掛かり、企業トップや幹部クラスの人脈を次々と広げてゆきました。『釣りバカ日誌』のハマちゃんじゃありませんが、ホステスの必修科目のひとつでもあるゴルフという一芸が身を助けているのです」

 あるナンバーワンは、華道、茶道、踊り、着付け、コツコツと習い事を続け、何かを学び終えるたびに女性としてのオーラが増したと話す。

「美文字ブームではありませんが、彼女が身につけたペン習字で書いた来店のお礼状、一見客(※1)や枝客(※2)のリピート率は100%に近かったです。毎月、十何冊かの本を必ず読むと決めていたナンバーワンもいました。もちろん客との会話において実になってましたね」

※1 一見客:初めての来店客。
※2 枝客:幹客と呼ばれる指名客が連れてきた客

 賑やかで明るい女性、話題豊富で飽きさせない女性、しっとりと心を安らげてくれる女性…。ナンバーワンにはさまざまなタイプがいるが、必ず共通点がある。

「肝心なのは接客テクニックじゃないんです。店舗全体の雰囲気も関係しますが、テーブルの状況は刻々と変化する。客の精神状態も同様です。客席の状態を表す3つの言葉がある。『場面』『空気』『景色』だ。どんなタイプでもナンバーワンはそれらを読み取る力に長けているんです」

 それらを分かりやすく説明してもらおう。

「『場面』は客がどのような目的で来店したか、どのような舞台設定であるかということ。接待でもさまざまなケースがある。顔合わせなのか、親睦なのか、お祝いなのか、謝罪なのか、客の順列を読み取ることも重要だ。『空気』は状況だ。つまりシーンだ。大騒ぎしたい客も時にはひと休みしたい。その時々に流れる『空気』を読み取り、その流れに逆らうことなく対応してゆく接客力だ。『景色』はテーブルを補佐する女性たちのセレクトだ。つまり配役です。それぞれの『場面』と『空気』に合ったヘルプホステスのチョイス、ホステス配置を担当にするラウンドや付回しと呼ばれる黒服への指示もナンバーワンの務めです」

 もうひとつの共通点は鋭敏な五感。ナンバーワンは五感をフルに活用すると言うのだ。

「テーブル状況や客の精神状態を読み取るには五感をフル活用しなければなりません。さらに客の個人的な情報やデータの収集も大切な仕事です。会社内での立場はどうなのか、家庭は円満なのか、それらを会話だけではなく五感で感じとる能力に長けているんです。これこそが売り上げに直結します」

 自らの五感を研ぎ澄ますだけではない。ナンバーワンは客の五感をもフルに刺激する。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、そしてもっとも重要な5つ目の感覚は…、

「客の五感を刺激することも重要です。女性が男性を落とすテクニックでもあるんですが、男性は何らかのフェチを持ち、何らかの感覚を刺激されることに弱いんです。胸元をチラ見する男性は視覚、声に刺激される男性は聴覚、香水に弱い男性は嗅覚、ボディータッチの好きな男性は触覚。あとのひとつは味覚? それは違います。最後のひとつは錯覚です。彼女は俺に惚れているのではないか? と錯覚させることもありますし、客のつまらない話にも、身を乗り出してうなずく、目をキラキラさせて聞き入る。これも錯覚です。水商売でもっとも重要な五感は、客に錯覚させることなんです」

 ところでナンバーワンが退店し、独立して起業することがある。しかし彼は、ナンバーワンが店を出すと必ず失敗すると言う。それはなぜであろうか?

「ナンバーワンは必ずと言って良いくらいに太客を持っています。彼らに売り上げを支えられていると言っても過言ではありません。店を出して独立すると、知らず知らずのうちに彼らに甘え、知らず知らずのうちに粗末に扱ってしまいます。今までは4時間の営業でナンバーワンに4組の客が同時に来店していれば、単純計算で1組1時間はテーブルに付いている計算になります。しかし、ママになるとそうはいかない」

 ホステスではなく、ママとしての仕事、経営者としての仕事は増えるからでもある。

「従業員ホステスの客に挨拶をして接待もする。店を構えたことで、ついつい新規客にも目がゆく。店の経営をしてゆかねばならないので、困った時だけは彼らを調子よく頼る。最初のうちは頑張ってと応援していた太客も離れてゆくことになります」

 独立開業で成功するのはナンバーワンではないと彼は言い切る。

「むしろ中堅クラスで、客からも同僚からも慕われるようなホステスです。小口の客でも大勢の客を抱えているホステスが独立したほうが成功していますよ。むしろ、バリバリと活躍したナンバーワンよりも、私たちが何とかしてあげなければと、客や従業員たちが思い込むような頼りないママが成功しています。失礼な言い方ですが、成功している店や有名な店のママに、飛び抜けた美人が居ない理由でもあります。ナンバーワンはむしろ異業種へ進出したり、転職や転業したほうが成功しています」

 水商売の世界に縛られずに、華麗な転身ができるのも、優秀なナンバーワンの証であるのかもしれない。その世界がたとえ家庭の主婦であってもいいのだ。
(文=神峻)

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