「不細工が基本のアイドル」RIZE金子のつぶやきに見る音楽業界の窮状

※イメージ画像:『BASS MAGAZINE 2007年4月号』
リットーミュージック

 男性3人組ロックバンド・RIZEのKenKen(金子賢輔)がTwitter(ツイッター)上で、

「不細工が基本のアイドルに 当てぶりが売りのバンド おれたちが本気で目指してるものがバカにされてるよねーホント 不細工でも演奏出来るから人気でるのがバンドだろう。歌がうまくて更に可愛いのがアイドルだろ?もしそれが世代という1ワードで済むのならモーツアルトに謝れ。さ、ねます。」(原文ママ)

 と発言し、AKB系のアイドルやヴィジュアル系エアバンドとしてブレイクしたゴールデンボンバーへの痛烈な批判だとして話題を集めている。実際のところ、この金子の発言が誰に向けられているのかは定かではないが、ネット上で語られているように、批判の矛先はAKB系のアイドルとゴールデンボンバーということに間違いはないだろう。

 そんな金子の発言にネットユーザーたちは、「同感」「ていうかお前ダレ?」「売れない奴の遠吠えw」とさまざまな反応を示す。そんな中、目立つのは、RIZEというバンドのメンバー全員が有名アーティストの二世であるという点を指摘した、“七光りバンド”のくせにという意見や、金子の実兄でバンドの一員でもある金子ノブアキが映画やドラマに出演している点を挙げた「お前らもそんなたいそうなことを言えた義理じゃない」などといったコメントだ。

 確かに金子の発言の通り、近頃の、特にAKB系のアイドルには特段可愛いという子は少ない。しかしそれもそのはずで、そもそもAKB48は「会いに行けるアイドル」として売り出し、「クラスで1番可愛いわけじゃない子」というのをコンセプトにしている。そんな子たちを“アイドル”に仕立て上げ、キャバクラ嬢的とも揶揄される“握手”という触れ合いを演出し、見事に成功したのがAKBだったわけだ。つまりAKBというアイドルにとって、ファンとの距離感がもっとも大切なわけで、その距離感とは“遠すぎず近すぎず”というものだ。あまりにも可愛すぎては距離が遠くなってしまう。つまり、金子の指摘する「不細工が基本のアイドル」という発言はまったくの正論で、「はい。そうですけど何か?」としか答えられない意見だ。

「今回の金子の発言からは、音楽業界全体の嘆きのようなものが聞こえてきますよね。真面目にいい楽曲を作ってリリースしていても、結局売れるのは握手券つきのAKBだったり、未だに人気の衰えないジャニーズだったり、ノリのいいカラオケ向きの金爆だったりというのが現状ですから。確かにミスチルや桑田さんのように正統派で売れている人も多いですが、それは一握り中の一握りなわけで、音楽業界全体は非常に苦しいわけです。そんな中、握手券目当てで売れた音楽が“大ヒットキラーチューン”と扱われるのは、金子にとって納得がいかなかったのではないでしょうか」(業界関係者)

 骨太ロックバンドとして知られるRIZEにとって「売れる」とか「売れない」というのは二の次に違いない。そして、金子がツイートしているように、彼らにとって重要なのは、「本気で目指してるもの」を追求すること。つまり、アイドルがブスだろうが、エアーバンドが売れようが、彼らには何の関係もないはずだ。しかし金子は、まるで別物にもかかわらず、彼らによって自分たちの音楽が阻害されているかのような発言をした。だからネットユーザーたちは、金子に「?」を投げかけ、「そんなに売れたかったの?」と指摘したのだろう。

 まるで嫉妬のようにも聞こえる金子の発言。そこには確かに音楽業界全体の窮状がうかがえるが、いくら叫んでも何も解決しないのは本人がよくわかっていることだろう。後に金子は、「沢山の人を嫌な気持ちにさせてしまった事をココにお詫びします。言い方が失礼でしたね」とツイートし謝罪したが、金子には是非とも「本気の音楽」で非難した人を見返してもらいたい。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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