赤玉の恐怖・セフレ妊娠・やり尽くした…ヤリチンのマウンドを降りる時

※イメージ画像 photo by baryalai mohmand photography from flickr

 新しいことを始めるのに年齢は関係ないという。30歳・40歳を過ぎてから資格取得し、以前とはまったく異なる職種に就いている人もいるだろう。しかし、そういった成功例はごく一部で、ほとんどの人は年齢を理由に、新しいことを始めるのを躊躇しているのではないだろうか?

 ところで、新しいことを始める以上に大変なことがある。それは、「やめる」ということだ。例えば、いま現在の仕事にまったくやりがいを感じられなくても、それなりの給料を貰えていたりすると、なかなか転職活動に踏み切れないというもの。ほか、「この人こそ運命の赤い糸でつながった女性だ!」と思える人に出会えても、自身が既婚で妻や子を持つ身の上だと、離婚して慰謝料云々という騒ぎを起こすのも考え物である。言わば、「乗りかかった船」というやつだ。

 ヤリチン活動も然り。20代の頃から、「特定のカノジョは作らない」「結婚にも興味はない」というスタンスで、ひたすら合コンやナンパに明け暮れ、一夜限りのセックスやセフレとの気楽な関係に慣れ親しんでしまうと、今さら普通の恋愛に戻るのは難しい。

 それでも、何らかのきっかけでヤリチンのマウンドを降りた者たちがいる。彼らは、いったいどのような理由でヤリチン生活に終止符を打ったのだろうか?

 ここで、ヤリチンの定義について触れておこう。目安としてわかりやすいのが経験人数である。ヤリチンを自称する男性に話を聞くと、やはり3ケタはくだらないようだ。中には4ケタに達する者も存在する。狩りの場は、合コンだったり路上ナンパだったりクラブナンパだったり、人それぞれといったところ。職場や仲間うちなど、自身のコミュニティ内での活動がメインというヤリチンもいた。なお、彼らが口を揃えて言うのは、「ヤリチンだからと言って、どんな女性とでもセックスするわけではない」とのこと。サセオではなく、あくまでもヤリチンであるというのが彼らのプライドらしい。セックス自体のテクニックに関しては、「決してうまいわけではない」と、やや謙遜気味だった。確かに、毎回違う女性とのセックスでは、「新鮮さ」だけで場が持つので、セックスの上達は難しいのかもしれない。真剣にセックスの腕を磨くとしたら、一人の女性との長期的な関係性において、いかに飽きさせないセックスができるか励んだほうがいいような気がする。嗜好に関しても、ヤリチンだからといってアナルファックや複数プレイなど、特殊なセックスをしているわけではなく、内容はごくノーマルという人がほとんどだった。

 さて、ここからがヤリチン引退の理由について。まずは、「ペニスから、赤玉ならぬ謎の膿のようなものが出て、さすがにマズいと思って」という男性。赤玉とは、「セックスをしすぎるとペニスから赤玉が出て、それで打ち止めとなる」という、いわば都市伝説のようなもの。元になっているのは、昔のパチンコ店において、一定の玉数が出ると「これ以上は出させませんよ」という合図に赤玉を出していたらしいという、これまた都市伝説である。ペニスから謎の膿が出た男性は、「赤玉が出る日も近いかもしれない」と恐怖におののき、ヤリチンのマウンドを降りたという。

 相手女性の妊娠が理由という男性も存在する。20代前半の時にセフレ女性を妊娠させてしまい、さらにはその女性が彼への相談ナシで堕胎手術を受けてしまったことがきっかけだったと語る男性に話を聞くことができた。彼の場合は、その時すぐにヤリチンのマウンドを降りなかったのが特徴的。まだ20代前半という若さゆえか、もっとセックスしたいという衝動のほうが強かったのだろうか。だが、心の中には「同じ過ちは二度と犯さない」という思いを常に抱いていたとのこと。そして、同じ過ちを犯す時が訪れた。時は流れて、彼は20代後半になっていた。カノジョではなく、恋愛感情のないセフレ女性がまたもや妊娠してしまったとのことだが、今度は男らしく責任をとろうと、その女性と結婚したという。そんな結婚生活がうまくいくものかと疑問を抱いてしまうが、今では第二子も誕生し、すっかり良いパパになったという。

 ほかにも、たまたま手を出した女性が面倒なタイプで懲りた・セックスをやり尽くして飽きたなど、理由は実に様々だ。ヤリマン引退女性との明確な違いは、「好きな人ができたから」という理由を挙げた者が一人もいなかったことである。このあたりが、男と女の違いなのかもしれない。

 なお、禁酒や禁煙をしても再び手を出してしまう人がいるように、芸能人でも引退宣言しておきながら華やかな世界が忘れられず舞い戻ってくる人がいるように、ヤリチン引退後も数年間の潜伏期間を経てカムバックしたくなる時がくるかもしれない。そう思うと、多少の休息期間があっても悪くはないだろう。
(文=菊池 美佳子)

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