松田優作や原田芳雄が愛した「新宿ゴールデン街」 ポータルサイトオープンで新たな文化発信地に

ゴールデン街・公式サイトを管理する「もかもか」こと亀井柚希さん(26)

 東京・新宿歌舞伎町にある酒場スポット「ゴールデン街」。名前は聞いたことがあるという人は多いだろうが、実際に足を運んだ人はどのくらいいるだろうか。新宿区役所のすぐそばに位置するゴールデン街は、迷路のように入り組んだエリアに200店以上の小規模なバー・居酒屋が密集しており、独特の空気を醸し出している。

 長い歴史があるゴールデン街を愛した有名人は多く、過去には作家の野坂昭如、色川武大、中上健次、映画監督の大島渚、深作欣二、俳優の原田芳雄、松田優作、菅原文太ら数々のスターがお気に入りの店で毎夜飲みふけっていた。現在もSMAPの中居正広や嵐の松本潤、俳優の岸谷五郎、映画監督の園子温、ハリウッド監督のティム・バートン、クエンティン・タランティーノらの目撃情報があり、有名人たちが訪れる穴場スポットとして知られている。

 ゴールデン街の醍醐味は、こういった有名人を特別扱いせず、一般人の客も気軽に隣り合わせた有名人と酒を酌み交わすことができることであった。現在は誰もが知るような有名人の来訪は少なくなっているが、いまだに俳優やミュージシャン、映画監督、作家、編集者らが数多く集っている。独特の景観が宇多田ヒカルのアルバム宣伝ポスターの背景に使われたり、一青窈が新曲発売記念に老舗バーでカラオケを熱唱したりと、業界的な注目度も高い。

 また、近年は若い店主が増加し、「コンセプト系」の店が多くなった。映画や音楽はもちろん、アニメやコスプレ、レトロゲーム、同性愛など、共通の趣味を持つ人達で盛り上がれるようになっている。

 このような一種独特の文化圏となっているゴールデン街だが、「一見だと入りにくい」「情報が少ない」などの理由で、初心者にとって敷居が高かったのも事実だ。

 そんなゴールデン街をネットと結びつけて分かりやすく紹介するため、公式ポータルサイト「ザ・ゴールデン街」が9月1日に正式オープンする。現在は仮オープンの段階だが、各店を「一見さん大歓迎」「女性が入りやすい」「オシャレ系」などジャンルで検索できるようになっており、お店の写真入りレポートなどもあって既に好評を得ているようだ。

■新宿・花園ゴールデン街公式ポータルサイト「ザ・ゴールデン街」

 このサイトを製作したのは、WEB企画やイベント運営などを手掛ける株式会社UNI。代表の「もかもか」こと亀井柚希さん(26)は、以前に当サイトでも紹介した都内最大級の女装系クラブイベント「ニューハーフ プロパガンダ」の主催者でもあり、多彩な文化活動を展開している。スカパー!の番組などでタレントとしても活躍するもかもかさんの素顔に迫るとともに、ゴールデン街ポータルサイトへの意気込みなどを聞いた。

──どのような経緯でポータルサイトの製作に至ったのでしょうか。

ちょうどポータルサイトのプログラムを組んでネタを探しているところに、ゴールデン街の組合の方から「サイトを作りたい」という依頼がありました。収益は全く度外視したプロジェクトになったのですが、私もゴールデン街の独特な文化に興味があったので、その文化に触れられるなら凄く価値があるなと思ってサイトの立ち上げを引き受けたんです。

──もともとゴールデン街とは縁が深かったんでしょうか。

たまに行くくらいだったんですけど、私は15歳の頃からずっと新宿にいて、歌舞伎町で働いていたこともありました。当時から文化的な部分でゴールデン街は特別な存在でしたから、ぜひかかわりたいなと思って。

──「ニューハーフ プロパガンダ」が開催されている風林会館の管理もされているそうですね。26歳の若さで仕切っているのは驚きです。

もともとWEBとイベントの仕事をしていたんですけど、その頃から風林会館さんには仲良くしてもらってて。そういった縁で任されることになりました。

──歌舞伎町のど真ん中ですから怖い人達も多いと思いますが、そういった人達ともうまくやっていけるものなのでしょうか。

うーん、怖い人はいないですよ。みんな、優しいです(笑)。

──これはあんまり深く聴かない方がいいですね…(汗)。かなり幅広く活躍されていますが、今は何を仕事の中心にしているのでしょうか。

企画とプロデュースですね。新しいプロジェクトをつくることがメインの仕事です。イベントも風林会館の管理も、自分で立ち上げて完成したら社員に引き継ぐスタイルにしています。新しいことが大好きで飽き性なんですよ(笑)。

──ゴールデン街のポータルサイトは仮オープンの段階でも好評のようですね。

お店を網羅することだけでもかなり達成していますからね。不定期ですけど、新しい情報をどんどん盛り込めるようにしたいですね。お店の割引やイベントとかを告知するスペースもあるので、今後はゴールデン街を訪れた人がスマートフォンを使ってリアルタイムで情報を活用できるようにできたらいいなと。

──もかもかさんにとって、ゴールデン街の魅力って何でしょう?

ゴールデン街は古いんですけど新しいんです。一時期は秋葉原が新しい文化の発信地でしたけど、それとはまた違った大人の文化がありますね。若い店主の方が増えてきて、新しい文化が生まれるんじゃないかって好奇心もあります。お客さんに有名人も多くて、私は作家の乙武洋匡さんとゴールデン街で知り合って仲良くしてもらうようになりました。

──若い人たちにこそ、この文化を知ってもらいたいですね。

そうですね、これだけいろんな才能が集まった街は他にないと思いますし。若い人たちが集まって新しい文化をつくり出してほしいという期待もあります。ゴールデン街の店主の方たちも若い人に来てほしいと願っているので、ぜひポータルサイトでリサーチしてから足を運んでほしいと思います。

(取材・文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops/写真=辰巳千恵)

■新宿・花園ゴールデン街公式ポータルサイト「ザ・ゴールデン街」
http://the-goldengai.com

■もかもか
昭和61年生まれ3月10日(満26歳)。若くして株式会社UNIを立ち上げ、歌舞伎町を中心に風林会館の管理運営、サブカルチャー界でも有名な日本最大の女装イベントを企画運営。また、自ら、デザイン・プログラミング・文化人としてメディア活動もしている。
ブログ:http://moca.uni-web.jp/

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