五輪視聴率争い「ついていた局・ついていない局」

※イメージ画像:『ロンドン夏の美女―ロンドン五輪で輝く世界の女性アスリート』
ベースボール・マガジン社

 17日間の熱戦の幕を閉じたロンドン五輪。日本選手団は、金メダルの数こそ少ないが、史上最多となるメダルを獲得した。その原動力となったのが、これまであまり注目を浴びてこなかったマイナー競技の大躍進にあることは各メディアで報じられているとおりだ。そんな2012年のオリンピックは、言わばテレビ局泣かせ。筋書きのないドラマで、誰があれだけ前評判の低かった男子サッカーの3位決定戦進出を予想できただろうか。それも宿命の日韓戦とは。そんな展開に、NHKは急きょBSのみでの放送予定だった3位決定戦を総合でライブ中継。未明の放送にもかかわらず、前後半の平均で17.6%という視聴率をたたき出した。

 そこで、今記事ではロンドン五輪のテレビ放送を総括したい。神のみぞ結果の知るスポーツ中継で、「ついていた局」「ついていなかった局」は果たしてどこだったのか。まずは基本データとして、各局の主なオリンピック関連番組の放送状況を振り返ってみよう。

■放送局/放送時間/番組数/平均視聴率
NHK/262時間47分/305プログラム/9.2%
日本テレビ系/40時間8分/15プログラム/9.5%
テレビ朝日系/44時間4分/18プログラム/4.5%
TBS系/47時間42分/15プログラム/9.1%
テレビ東京系/31時間52分/11プログラム/3.4%
フジテレビ系/45時間38分/17プログラム/7.3%
(ビデオリサーチのデータを元に独自に算出)

 国際オリンピック委員会(IOC)から直接、世界各地に売られるオリンピックの放映権。国や地域ごとに一括して支払われるその放映権料は、規模や経済状況を元に個別に査定される。今回のロンドンオリンピックでは、日本は総額275億円という金額で国内の放送権を得たという。その内、6割超を負担したのがNHKで、残りの110億円あまりを日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビがそれぞれ25億円ずつ、10億円をテレビ東京が支払ったという。

 その金額の負担率が、そのまま上記した放送時間に反映されていることは言うまでもない。圧倒的な放送時間数と番組数。それに平均視聴率でも高い記録を残したNHKが1人勝ちなのは一目瞭然だ。そもそも、それだけ金を払っているのだから当たり前といったところだろうが、その豊富な資金力に加え、視聴率競争に肩入れしないプログラム編成が、マイナー競技の躍進という今オリンピックの特徴とうまく合致したといえる。

 一方、民放各局を見てみると、なぜかテレビ朝日が惨敗。民放5局中もっとも多い番組本数を揃えながら平均視聴率4.5%という結果は惨憺たるもの。放送時間数や支払った金額を考えれば、テレビ東京より、コストパフォーマンスは低いと言わざるを得ない。開会式前に行われた「なでしこJAPAN」の初戦中継では深夜帯にも関わらず11.8%を記録し、続く初日の柔道中継でも11.4%と好調だったが、しかしその後深夜に集中したテレビ朝日の五輪中継は、ことごとく日本人選手の活躍がなく低迷。サッカー男子がD組2位通過で、準決勝まで進出していれば高視聴率間違いなしも、日本男子はD組を1位で通過という結果。韓国対ブラジルを放送するハメになり、当然ながら平均視聴率は2.6%。逆に日本対メキシコを放送したTBSは17.8%だった。

 ついていなかったテレビ朝日に比べ、ついていたのは日本テレビ。五輪開始当初こそ、特筆すべき番組はなかったものの、サッカー男子が予選トーナメントを1位で突破した後のトーナメント初戦で日本対エジプトを放映できた。19時台からというゴールデンタイムで放送できたことも功を奏し、平均視聴率23.9%を獲得。さらにサッカー女子では準決勝の日本対フランスで17.1%。女子レスリングでの長い放送時間でも選手たちの活躍もあって2桁を維持するなど、高い平均視聴率を獲得した。

 また、「なでしこJAPAN」の対南アフリカ戦で平均視聴率20.4%を皮切りに、前述したとおり、男子サッカーでは対エジプトで17.8%を獲得したTBSは総じて運がよかった。たとえば、日曜朝という時間帯にもかかわらず、メダル獲得の一報の入った直後に録画放送したバドミントンの女子ダブルスと競泳男女のメドレーリレー決勝では平均視聴率16.3%を取るなど、オリンピックのハイライト番組のタイミングがよかったといえる。柔道男子で日本勢が決勝に進出するなどしていれば、平均で二桁の視聴率というのも考えられる。

 2週間あまりに渡った五輪の前半戦で、全局中もっとも少ない3プログラムしか編成しなかったフジテレビは、女子マラソンに照準を合わせる格好でスロースタート。同額を支払った日本テレビ、テレビ朝日、TBSに他の競技を譲り、五輪最大の目玉とも言える女子マラソンを得たわけだが、しかし結果は、日曜日のゴールデンタイムという絶好のチャンスにもかかわらず22.5%止まり。好条件が揃っただけに、あわよくば高橋尚子のシドニーの再来(40%以上)という目論みもあっただろうが、日本人選手の不振はどうにもならなかった。後に残ったのは「細切れCMの垂れ流し」という批判ばかり。それでも運よく女子バレーの日韓による3位決定戦で21.7%という数字を獲得し、どうにか視聴率の底上げに貢献した。

 世界的なオリンピックの放映権料高騰に、民放各社は「五輪中継」を赤字覚悟でしているのが現状だという。日本テレビの大久保好男社長は、五輪の始まる前の定例会見で、「これ以上高くなると、五輪の放送に参加できない局が出てきても不思議ではない」と語っている。次回のオリンピックはブラジルのリオデジャネイロ。大きく視聴率を左右する時差は、丸一日日付が変わる程度で、今大会ほどの悪条件ではない。しかし、なにはともあれ、日本人選手団の活躍が鍵を握るのは間違いない。4年後、どんなスターが誕生して、どこのテレビ局が運を掴むのか、楽しみだ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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