究極のフェチ!? 深すぎる「巨大娘」の世界

※画像:『巨大娘研究 サブカルチャー批評の終焉と再生』
鳥山仁・嵯峨斐峰・共著/三和出版

 無限と思えるほどに細分化し、人間の性癖の奥深さを感じさせるフェチの世界。その中の一つに「巨大娘」というジャンルがあることをご存知だろうか。

 巨大娘フェチとは、男性と女性のサイズ差に興奮する「サイズフェチ」と呼ばれる性癖の一種。相対的に男性よりも女性が圧倒的に大きいことがポイントであるが、巨大娘フェチの中でさらに大きく二つに分類される。巨大化した女性(ジャイアンテス)に興奮するタイプと、男性が縮小(シュリンカー)して普通サイズの女性に興奮するタイプだ。女性の巨大化や男性の縮小化を描いたマンガ、アニメ、特撮、映画などは意外なほど多く存在する。

 そういった作品を徹底的に網羅し、サブカルチャー批評の視点から分析した『巨大娘研究 サブカルチャー批評の終焉と再生』(鳥山仁・嵯峨斐峰・共著/三和出版)が発売された。著者の一人である鳥山仁氏を直撃し、知られざる巨大娘フェチの世界について話を聞いた。

──鳥山さんは『巨大娘』が特別なフェチだとは思っていなかったそうですね。

鳥山 子供のころからモデルのような「高身長・高頭身」が美人の基準だったんですが、思春期になって「自分より背の低い女性」を理想としている知人が多い事に衝撃を受けました。「大きければ大きいほどいいのに何言ってんの!?」って感じで。私は脚フェチなので、背が大きい方が脚が綺麗に見えるのに何で低身長の方がいいなんて言うんだろうって。共著者の嵯峨さんは縮小化フェチなんですけど、私とは逆に、ずっと自分の性癖で悩んでいたそうで、それを聞かされた時にも驚きました。

──巨大娘フェチの中でも、巨大化と縮小化では大きく違うと思いますが、互いに理解できないことはありますか。

鳥山 それはありますね。縮小化フェチの人たちの大きな特徴は、自分が小さくなって女性に気付かれないように近づきたいという欲望があることなんですよ。最初は、それが私には全く理解できませんでした。私は30メートルくらいの巨大な女がいて、それを遠くから見ていたいという願望があるので。しばらくして、縮小化して近づきたいという欲望が『のぞき見』の変形だと気付いて、やっと理解できるようになりました。

──のぞき見の変形というと…?

鳥山 小さくなって女性の素の生活をのぞきたいという欲望なんですよ。『透明人間』と共通した部分があると思います。だから、相手が自分に気付いていないことが重要な要素になります。

──同じ巨大娘フェチの中でも、かなり違いがあるんですね。

鳥山 多分なんですけど、巨大娘は究極のフェチの一つなんじゃないかと思います。私は脚フェチというフォルダの中に巨大娘があるという感じです。縮小化が好きな人たちの中には、女の子の内臓をのぞき見たいというフェチの集合として巨大娘がある場合がある。元々のフェチの違う人たちが集まって、共通項として巨大な女の子が好きという集合体になっているので、けっこう内部で好みが違ったりするんですよね。一番大きいのはスカトロ描写がOKかNGかってとこですね。それぞれのフェチがニッチなので、巨大娘という共通項で徒党を組んでみたというジャンルでもあると思います(笑)。何かしらのフェチの延長線上として扱っている場合が大半で、巨大娘フェチに特化してる人はあまりいないんじゃないかな。

──巨大娘じゃないと絶対に満足できない性癖って相当に因果ですよね。実在しないし(笑)

鳥山 触手フェチに近いかもしれないですね。乱交だったのが、段々と省かれて『チンコだけでよくね?』みたいになって触手というジャンルが生まれたのと一緒で。巨大娘も様々なフェチの上位にあると思うんですよ。

──巨大娘フェチの世界での歴史的な重要作品を挙げてください。

鳥山 『ルパン三世』の巨大峰不二子(※1)、『ウルトラマン』の巨大フジ隊員(※2)、『あばしり一家』の法印大子(※3)といったあたりですね。どれもサイズフェチの中で話題に上ることが多い作品です。

(※1)アニメ『ルパン三世』の第2シリーズ第59話「マダムXの不思議な世界」。銭形警部から逃げ切ったルパンが、人けのない場所で巨大な峰不二子に襲われるというシーンがある。

(※2)特撮番組『ウルトラマン』の第33話「禁じられた言葉」。メフィラス星人に操られた科学特捜隊のフジ隊員が、巨大化して街を破壊してしまうというシーンがあり、50代以降の巨大娘フェチはこの作品で自身の性癖を自覚した人が多い。

(※3)漫画『あばしり一家』(永井豪・著/秋田書店)。あばしり一家のライバルとして、巨大な女の子・法印大子が登場する。最終回では成長期によってマジンガーZを超える大きさになり、誤ってあばしり一家の長男・五エ門を呑み込んでしまう。最後は虫下しによって大便と共に五エ門を排泄するという、巨大娘スカトロネタもカバーしている。

──ここ数年の間で特筆する作品はありますか。

鳥山 2003年のPUMA(※4)のコマーシャルですね。あのバカバカしさは最高でした。明らかに分かってる人が作ったとしか思えないです。海外では巨大娘の代表作として扱われています。

(※4)街にゴジラのような巨大な美女が現れ、ビルを破壊したり人を呑みこんだりと大暴れし、軍隊とまで戦うという内容のCM。イタリアのプロサッカー選手ジャンルイジ・ブッフォンが登場すると、急に巨大美女がデレるというオチ。巨大化、丸呑み、デレと、巨大娘ジャンルのポイントを盛り込んでいる。制作者はサイズフェチかも?

──巨大娘というのは、圧倒的に女性の方が優位という点を考えるとマゾヒズムの一つだと思えるのですが。

鳥山 基本的にそうですね。Mっ気がある人が大多数だと思います。「縮小化して女の子に張り付いて驚かせたいという欲望があるのだから俺はSだ」と主張してる人も中にはいるんですけど。

──「巨大娘研究」は資料的な価値の高い本だと思いますが、どのくらいの制作期間が掛かったのでしょうか。

鳥山仁 始めたのは2009年くらいからですね。対象にする作品だけでも膨大な数があるので、とても時間が掛かるんです。最初はカタログ的な本にしようとしていたんですが、アーカイブ的な役割としては絶対にウェブに勝てない。なので、読み物として面白い部分としてサブカルチャー批評にも力を入れてあります。

──今回の本は作品の画像を大量に引用していますが、クレームを恐れて画像引用をしない本が多い状況を考えると、かなり異質になっていますね。

鳥山 実は、私は引用される側のケースが多いんですよ。SM系のハウツー本をたくさん作っているんですが、無断引用が非常に多いです。しかし、転載するのであれば、書名を入れてくれればいいと考えています。一部を引用して紹介することで、その作品を見たいと感じる新しい読者が生まれるメリットは大きいと思いますから。

──逆に、やってはいけない引用とはどのようなものだと考えていますか。

鳥山 ある本に、私の本の内容が転載されていたことがあったんですが、ライターが盗作癖のある人らしくて、完全に同じにしちゃいけないって意識が働くのか元の文章に色々と付け加えるんですよ。しかも、その加筆した部分が間違っている(笑)。これに関してはクレームを入れましたね。

──「同一性の保持」を侵していますからね。

鳥山 一番驚いたのは、担当したSM本の写真が、アニメ『さよなら絶望先生』のOPで勝手に使われていたことですね。ちゃんとした縛りの絵だったので最初は感心していたんですが、「あれ、どっかで見たよなあ…」と思って(笑)。

──実際に画像の引用元からクレームはありましたか?

鳥山 今のところ、どこからもないです。けなすような内容ではないですし。

──最近、巨大化した女性をモチーフにした作品が生まれやすくなっているそうですね。

鳥山 ここ5、6年の動きじゃないですかね。やっぱり、マンガ『進撃の巨人』(諫山創・著/講談社)が当たったのが大きかったんですよ。あのヒットで巨大化というジャンルが、確実に加速した部分があるはずです。

──それ以前はどのような流れだったんでしょうか。

鳥山 基本的に、男性向け作品は男の子が小さくなるという内容の作品が多いです。その方がストーリー展開しやすいんですよ。女の子が大きくなって困ったという話は、そんなに長く続けられるわけじゃないので長編が成立しませんし。女性向けの場合は、逆に女の子が小さくなる話が多いです(※5)。縮小化して好きな異性に近づきたいという願望は、男女ともにあるのでしょうね。

(※5)小女子(こおなご)と呼ばれるジャンル。代表的な作品として『南くんの恋人』(内田春菊著/青林堂)がある。

──巨大娘ものが生まれやすい状況というのはあるのでしょうか。

鳥山 女の子が大勢出てきて戦う話を書きたがる作家は、必ずといっていいほど巨大娘を描くんですよ。だから、そういう作品が流行ると、巨大娘ネタがいっぱい出てくるんです。なぜかはハッキリ分かりませんが、日本だけの現象というわけではなく、そのパターンは海外の作家でも多いです。推測ですが、強い女の最終形は巨大娘なんじゃないかと。だから戦う女性を描いていると、最後は巨大娘に行きつくのかもしれません。男性が縮小するケースは別なので、分けて考えなきゃいけないんですけど。

men's Pick Up

エロカルチャー関連トピック